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謎のお昼ご飯

 


「えっ!? 毒殺!!??」


 予想外の出来事に思わず口走ってしまった。

 それを聞いて暗野さんは図星だったのか、はたまた予想外だったのか俺を見つめてきた。

 何が起きているのか分からないまま、お互いに見つめ合ったが彼女の方がすぐさま目を逸らした。


 そんな彼女はいつの間にか制服の上にエプロンを身に付けていた。

 本来なら同級生のエプロン姿を見るなんて、男として物凄く喜ばしいことだが、今は俺を殺すための仕事服に見えてしまう。

 少しの時間見つめ合ったが何も進展することはなく、彼女はまた包丁を動かし始めた。


(なんで俺の昼ごはんを作っているんだ? やっぱり毒殺……?)


 彼女が俺にご飯を作る理由がそれ以外思い付かないのだ。

 ただ、俺の行ったことを考えれば毒だろうが、なんだろうが甘んじて受け入れる他ない。

 しばらくして料理の音が聞こえなくなり、お昼ごはんが完成したことを理解する。


(ついに出来上がってしまった……)


 悲壮感が心を支配した。

 そもそも母親以外の異性から手料理を振る舞ってもらうことなど一度も無かったので、喜ぶべきことなのだが素直に喜べない。

 暗野さんが次々と料理を運んでくる。


「あ、俺も手伝うよ」


 彼女にだけ料理を運ばせるのは、良くないと思い声をかけた。

 が、返事は返ってこず立ち尽くす。

 すると彼女が料理を全て運び終えた。


 献立は

 エビフライ

 肉じゃが

 ほうれん草のおひたし

 冷奴

 舞茸の味噌汁

 そして白米だ。


(どれも美味しそうだ……)


 出された料理から香る匂いに食欲をそそられる。

 それだけでなく盛り付けも上手で、ただでさえ美味しそうな料理が何倍にも美味しそうに見えた。

 さらにお箸を手渡され、万全の状態ときた。

 思わず飛び付きたくなるが、毒を盛られている可能性が脳裏をよぎる。


「……あ、あの。毒なんか入ってないので…………」


 彼女は俯きながらかろうじて聞こえる声で告げた。

 今の発言が例え嘘だとしても、こんなに美味しそうな料理を目の前にして我慢できなかった。

 一目散にメインのエビフライに飛び付く。


「美味しい」


 意識して言った訳ではなく、口から勝手にこぼれ出た。

 一口食べるともう止まらなかった。

 暗野さんの手料理はどれも美味しく、夢中で食べ続けてしまった。

 ふと、冷静になり彼女の様子を伺う。

 彼女もごはんを自分で用意していたのだが、それに手を付けてなくただ俯いていた。


「えーと、暗野さんは食べないの?」


 自分だけガツガツと食べ続けいたので、居心地が悪くなり聞いてみた。

 しかし彼女は相変わらず何も答えない。


(うーん、やっぱり何も答えないか)


 さっきから何も話しを返してくれなくて半ばお手上げ状態だ。

 どうしようも無いのでご飯を再び食べ進める。

 そんな時に目の端で暗野さんの変化に気付いた。


 顔は俯いてて何も気づかなかったが、髪の隙間から見えた彼女の耳が真っ赤に染まっていたのだ。


(耳真っ赤だけど、何かあったのかな?)


 そんな小さな変化に気付いたが、だからと言って何か変わる訳もなくご飯を食べ進める。

 すると、暗野さんが口を開いた。


「……が、とう」


 何を言われたのか聞き取れなかった。

 暗野さんを見るともじもじとして俯いたままだ。


「あのもう一回言ってもらって良いかな? ちょっと聞き取れなくて」


 彼女は驚いたのか身体を一度跳ねてから顔を上げた。


「あ、あの……ありがとう」


 暗野さんは俺と目を合わせて伝えてくれた。


「え? 俺何かしました?」


 暗野さんにしたことと言えば間違って胸を揉んだことが一番だろう。

 それなのに今、感謝されたことを理解できなかった。

 むしろお礼が言いたいのはのはこちらの方じゃないのかと思う。


「……あの、私誰かとご飯を一緒に食べることなんて……無かったから…………それに美味しいって言われるの初めてで……」


 自分の前で目まぐるしく変わる状態に着いていけない。

 ひとまず一つずつほどいて行くことにしよう。


「えーと……家族と一緒に食べないの?」


 何を聞いて良いのか分からないしろ、かなり踏み行ったことを聞いてしまったと思う。


「あ、そのごめんなさい。あんまり家のことなんて聞かれたくないよね」


「……別にそれは良いの」


 そう答えて暗野さんは沈黙してしまった。

 やっぱりマズイことを聞いてしまったと反省する。


「あの、お母さんは小さい時に亡くなって、お父さんはプログラマーだから……会社に住んでるみたいで家に居なくて…………」


 暗野さんは自分のことを語ってくれた。


「それで、お金にだけは困らないようにってお父さんが必死に働いてくれて……」


 少しだけ俺がここで料理を振る舞ってもらった理由が分かった。


「……ごめんなさい! 私こそご飯が不味くなるような話しちゃって……」


 そう言って彼女は頭を下げた。


「いや、そんな全然大丈夫です」


 そんな言葉をかけても彼女は俯いたままだった。

 なんて言葉をかけて良いのか困惑してしまう。

 ふと、名案が浮かんだ。


「あの! ご飯おかわりして良いかな?」


 すると、彼女は顔を上げて嬉しそうに返事をしてくれた。


「……はい! 喜んで……!」



面白いと思った方、続きが気になると思った方は



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