表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/112

恋人の振り大作戦!

 


「……このお店に居る間だけカップルの振りをしませんか?」


 そんな木陰の提案に戸惑ってしまう。

 多少お金を出しで解決すれば良いと思っていたからだ。


「……私のせいでお金の出費がかさむのは申し訳ないです」


 と彼女は言った。

 確かにここのお店を選んでしまったときから木陰は気にしていた。

 しかし、それでも恋人の振りをするのは木陰に迷惑と思う。


「いや気持ちは凄く嬉しいけど、木陰に悪いよ」


「……私が迷惑と思って無ければ良いんですか?」


 と彼女から急な質問が飛んできた

 ただ正直、木陰とカップルに間違われるのは悪い気はしていなかった。


「まあ、その、うん」


 しかし、気恥ずかしく歯切れの悪い返事をした。


「……それじゃあ、私は日向くんとなら全然平気なのでカップルの振りをしましょうか」


「えっ!?」


「……今回は私のせいなのでお気になさらず」


 どうやら木陰は演じる気満々らしい。

 俺の方は木陰に逃げ道という逃げ道が全部潰されていて、返せる返事は一つだった。


「じゃあ、そのお言葉に甘えて……よろしくお願いします」


 こうして二人の恋人の振り大作戦が始まった。



「……そ、そのじゃあ遠慮なく。……日向くんはい、あーん、してください」


 木陰がいつの間にかパンケーキを切り分けて、俺にいわゆる、あーんをしてくれていた。


「いや、その一人で食べられるよ……」


 クラスメイトの女子からそんなことをしてもらえるなんて、嬉しく思ったが気恥ずかしさが勝ち断った。


「……今は恋人(の設定)ですから遠慮せずにどうぞ。……それに断ると怪しまれますよ……?」


 そこまで言われてしまえば断れない。


「じゃあ、そのいただきます」


「……はい、あーん」


 優しく手まで添えられているパンケーキを食べる。

 クラスメイトの女子にあーんをしてもらうという、人生初の経験に心臓が高鳴る。


「……どうですか?」


 今は味どころではなかったがとりあえず答える。


「多分美味しいと思う」


 ちぐはぐな返事だが仕方ない。


「……それじゃあ、私もお願いします」


 と木陰がナイフとフォークを俺に手渡した。

 その金属から彼女の温もりを感じる。


 クリームの乗った分厚い、それでいてふわふわなパンケーキを切り分ける。

 切り分けたらこの先にあるのは一つだけだ。


「じゃあ、木陰、あーんして」


「……その、いただきます。……あーん」


 とわざわざ声に出してパンケーキを食べた。


「……ふわふわで美味しいです」


 俺とは違い少しまともな感想を言っていた。

 慣れない緊張から喉が乾く。

 飲み物を飲もうとしたら、先に木陰が飲んでいた。


「……日向くんも飲みますか……?」


 手渡された飲み物はレモネードだが、木陰の口の付けた物なので少し渋る。


「いや、俺は良いかな」


「……飲んでください。……私が飲んだからって避けられた感じがして嫌です」


 痛いところ突かれてしまった。

 そう言われては木陰の言うことを受け入れるしか選択肢がない。


(木陰が口を付けたストローだよな……)


 つまり間接キスになる訳だ。

 仕方ないので意を決して飲む。

 木陰の飲んでいたレモネードは甘酸っぱかった。


「……はい、あーん」


 木陰の方を見るとまたパンケーキを用意していた。

 断れずに受け入れる。


「……あ、日向くん、顔にクリーム付いてますよ」


「えっ、どこ?」


 自分にはどこに付いているか分からず木陰に尋ねる。


「……ここですよ」


 と木陰が手を伸ばして取ってくれた。


 そして取ったクリームを木陰が自分の口に運んだ。


 前回は彼女に取ってもらい、俺が食べたが今回は違った。

 そんな不思議な状況に目を奪われる。


「……甘いです」


 クリームを口にした木陰がそう小さく呟いた。

 そんな彼女が心なしか楽しそうに見えた。


「なんか楽しそうだね?」


 そんな彼女の姿が純粋に気になり聞いてしまった。


「……恋人(の設定)ですからね。……楽しそうにしないと…………それとも露骨に嫌そうにしましょうか?」


「それは勘弁」


 俺あまりにも嫌そうな返答で彼女は笑っていた。


「……なら楽しまないと損ですよ?」


「確かに」


 木陰の意見に賛成だ。

 彼女からナイフとフォークを借り、再び木陰へパンケーキを運ぶ。


「……さっきみたいに、あーん、て言ってくれないと食べません」


 追加で意地悪な注文をしてきた。

 しかし、そんな木陰が可愛くも思える。


「ほら、あーんして」


 手を添えて彼女の言うとおりにする。

 すると木陰は楽しげに「……あーん」と言い美味しそうに食べた。


「……じゃあ、私の番ですね」


 何故か代わりばんこで食べさせ合う。

 しかし、そんな状況が楽しくなり二人で止まることなく進めた。

 気づけば最後の一切れになっていた。

 最後の一切れを食べるのは木陰の方だった。


「ほら、あーん」


「……あーん」


 と木陰が最後の一切れを食べパンケーキを食べ終えた。

 しかし、彼女の顔を見ると口の端にまだクリームが付いていた。


「木陰、口の端にクリーム残ってる」


 場所を指差し教える。

 すると木陰は舌で舐めて取ろうとする。


「……取れましたか?」


 木陰が聞いてきたが、舌で押し出しただけでまだ顔に付いていた。

 それももう自分の舌では取り難い場所だ。


「いや、まだ付いてる」


「……じゃあ、日向くんが取ってください」


 木陰が顔を近づけてくる。

 仕方ないので取ってあげる。そして木陰に取れたクリームを差し出すと


「……その、日向くんが食べてください」


 と言われた。


 一度木陰の舌が触れたクリーム。さっきまで間接キスをしてたにも関わらず、どこか生々しく感じてしまった。

 それを俺の口に入れていいのか分からず、硬直してしまう。


「……えっと、恋人(の設定)ですよ?」


 そう言われ意を決して口に入れる。


 木陰の舌が触れたクリーム、それを食べるのはとても罪な甘い味がした。


 すると木陰が手を合わせていた。

 俺も彼女に遅れないように手を合わせる。


「「ごちそうさまでした」」


 なんとか偽装カップルがバレずに木陰とパンケーキを食べ終えられた。



 ◇◆◇◆◇◆



間接キスしたい木陰vs間接キスを避けたい日向



面白いと思った方、続きが気になると思った方は評価の方お願いします!



下の☆☆☆☆☆を★★★★★にしてもらえると、作者が踊り狂い更新頻度が上がります!!!



(っ'ヮ'c)ウォッヒョョョオアアァァァ!←こんな感じに



それとブックマークもお願いします!!!!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] もっといけ!
[一言] 木陰ちゃんが明るくなり、日向君と恋人になるのが待ち遠しいです。周りにも公認されて幸せな時間が過ごせると良いです。二人のこれからが楽しみです。
[良い点] ぐああああ 脳がトロけりゅうぅぅ!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ