可愛い服はお好きですか?
今度は日向くんとゆっくり店内を回る。
着ている服は店員さんに絶対買うからと、試着した服をそのまま着ていた。
そっちの方が自分が前向きになれそうだったので、今回だけはお店に迷惑を掛けてしまうことをどうか許してほしい。
「……こ、これとかどうですか?」
私が花柄のド派手な服を日向くんに見せて反応を伺う。
「それは派手過ぎないかな」
とあまり良い顔をしてくれなかった。
なんとか日向くんに私のセンスを褒めてもらいたいので積極的に洋服を選んでいく。
しかし、あまり自分でピンと来るものはなかった。
それでも必死に洋服を見て回ると一つが私の目についた。
「……これはどうですか?」
再び日向くんに尋ねる。
「いや、それ結構暗い服でしょ」
そう言われて確認してみると私は真っ黒な服を手にしていた。
私の感性で良さそうな物を選ぶと、昔から着なれているこんな感じの服を選んでしまうらしい。
今の服装こそ変わりはしたが私の根本は変わっていなかった。
「……そんなつもりは無かったんです。その、ピンと来たのがこれで……私はまだ変われて無いんですかね……?」
自分が選んでしまった黒い服がまたも私を暗いところに導いていた。
「別に無理に変わらなくても。少しでも自分に自信が持てれば別に暗い性格でも良いと思うよ?」
こんな私の性格でも肯定してくれる。
それなら変わらなくても良いとさえ思ってしまう私はもう盲目になっているのかもしれない。
照れた顔を帽子で隠す。
「……そう……ですね。……自信持って……みます」
返した返事も照れが混じっていた。
「よし、じゃあこれも試着よろしく」
そんな口元が緩んだ私に日向くんは選んだ服を渡していく。
いつの間にかかなりの量を選んでいた。
「……こんなにですか?」
「うん、いろいろ良さそうなのあったから」
手渡された服はどれも明るい色でそれも私の要望通り、身体のラインが出ず肌の露出も無い物だった。
上はカーディガンにセーターや、下は明るいプリーツスカートと長めでゆらゆらとしたスカートだった。
「……これって私が着るんですか?」
「俺が着るわけないだろ」
少し迷って確認すると予想外の冗談で返された。
もしそんな冗談が本当だったらと考えて笑ってしまう。
そんな日向くんの一言で迷いは消えた。
「……じゃあ楽しみに待っててください」
日向くんが楽しみに待っててくれたら、と思いそんな言葉を言ってみた。
「楽しみするからしっかり着ろよ」
とフィッティングルームを指差して言う。
嘘でも日向くんが楽しみにしててくれると言ってくれ、私は足取り軽く試着室に向かった。
普段ならこんな色の服を着ないどころか、今までに着たことの無いゆるかわな服を日向くんが選んでくれている。
迷いは無く渡された服たちに着替えたが、鏡の自分を見て違う迷いが生まれた。
(……こんな可愛らしい服着てるの恥ずかし過ぎて日向くんに見せられないよ)
ゆるかわな服を着ている私の姿は、自分の目から見ても正直服のおかげでかなり可愛く見えた。
しかし、さっき着ていたワンピースならともかく、こんな女性の可愛さの塊を詰めた服を着ている私を見せるのは恥ずかしくて死にそうだ。
いや、確実に死ぬ。それどころか日向くんに褒められでもすればそのままあの世へ直行するかもしれない。
(……でも褒められたい)
そんな気持ちの攻めぎ合いの最中、日向くんが私の服を楽しみしてくれていることを思い出した。
(……なら褒められて幸せのなか死のう)
そう決意し待ってくれている日向くんの元へ向かう。
待っていた日向くんはさっきの女性店員さんと仲良く会話していた。
そんな姿に私は不思議と嫉妬してしまう。店員さんから日向くんを取り返したいという気持ちで姿を見せる抵抗感もかなり減っていた。
「…………どうですか?」
私の服装は上はオーバーサイズで萌え袖の白いカーディガンに、下はクリーム色のゆったりとしたロングスカートだ。
ちなみに顔を隠すためにさっきの帽子を被っている。
日向くんが選んでくれた可愛らしい服をこれでもかと着てみた。
そんなゆるかわコーデにどんな反応を見せてくれるのか楽しみで仕方がない。
「凄く可愛いと思うよ」
最高の褒め言葉だ。
それに日向くんが私に見とれているようにも見えてさらに満足を得る。
(ああ、最高だ)
天にも昇る気持ちを噛みしめる。
かろうじてだが死ぬことはなかった。
「……あ、あの、この後この服を着て歩いて良いですか?」
すっかり気を良くした私は店員さんと日向くんの二人に確認を取る。
「構いませんよ」
と店員が快く承諾。
日向くんも「良いよ」と快諾してくれた。
「他の服は着たの?」
日向くんから渡された服はこれだけではなかった。
「……はい、試着しました。全部良さそうでしたよ」
「本当?」
と彼は心配そうな感じで聞いてきた。
「……はい、見たかったら今度見せてあげます!」
今度、つまりそれはまた休日に日向くんと会うということになる。
それにこれ以上他の服を試着して褒められると本当に天に昇ってしまう。
「楽しみにしとくよ」
最高だ。これで日向くんとまた会う約束ができた。
それに私服を楽しみにしてもらえているのも幸せを高めてくれる。
「……その、私は会計に行きますね」
嬉しさのあまり照れてしまった自分を帽子で隠して服を取りに戻った足でレジに向かう。
試着した服は全て購入することにした。
レジが終わると日向くんが待っていてくれて、荷物を持ってくれた。
「……ありがとうございます」
そして私を変えてくれたお店から出る。
出口のところに姿鏡があり、最後に私は自分の私服を改めて確認した。
すると私の服選びを手伝ってくれた店員さんが私の耳元でまた囁いた。
「凄くお似合いです。それに仲の良いカップルに見えますよ」
カップル最高の響きだ。
そんな言葉に酔いしれていると
「デート楽しんでくださいね」
と店員さんは見送ってくれた。最後まで最高の人だった。
そうだ私は実質デートの最中だ。
しかし、私の服を選んでもらったことで今日の目的がほとんど終わってしまっている。
つまりせっかくこの服を着てももうすぐ夢のようなデートが終わってしまう。
それは絶対に嫌だ。
なんとかしてこのデートを続けたい。
「……あ、あの服を持ってもらってるのに、そ、そのわがままを言っても良いですか?」
日向くんは快く頷いてくれる。
「……わ、私あんまりこういうところに来ないから、その重たい荷物のせいとかで迷惑なのもわかってます──」
後ろめたさから言葉もぐちゃぐちゃだ。
「……それでもこの辺りを一緒に歩いてくれませんか?」
デートの再更新のお願い、迷惑なのも分かっていたがまだ私は日向くんと一緒に居たかった。
「良いよ。どこに行こうか」
彼はわがままを言った私をそれでも甘やかしてくれた。
この後も一緒に居れて私はもう顔が緩んで仕方ない。そんな顔を見られないよう帽子で隠す。
新しい服で身を包んだ私でデートの二回戦が始まった。
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