根暗とオシャレ
写真を撮ったあと二人で初めてのタピオカを満喫する。
「……もちもちで甘くて美味しかったです」
木陰は照れた笑みを浮かべながら初めてのタピオカを飲み終えていた。
「……それに根暗な私が今どきのキラキラした人たちになれた感じがして楽しいです」
と嬉しそうに言っていた。
俺も彼女に続いて飲み干す。
「美味しかったけど、これって食べ物か飲み物かどっちなんだろう?」
「……たしかに。……そう言われると分からないですね」
木陰は少し考えていたが「……美味しかったからどっちでもいいかも」と言い笑う。
そんな彼女を見て俺もどっちでも良いと思えた。
「それじゃあ服買いに行こうか?」
「……はい!」
休憩を終えて本来の目的の木陰の服を買いに行く。
「……どこのお店にしましょうか?」
街を二人で歩きながら木陰が呟く。
「うーん、俺には遠慮しなくて良いよ。レディース専門のお店とかでも全然付いて行くし」
木陰の服を見に来たのならそれぐらいは覚悟している。
だから彼女には服の選択肢を狭めて欲しくなかった。
「……そうなんですか。……あの、私には敷居が高いというか、そのとりあえず有名なユニ◯ロでお願いします」
彼女の意向で二人でユニ◯ロを目指すことにした。
その道中木陰が
「……あの褒めてもらってなんですけど、地味な私と歩くの恥ずかしくないですか?」
と聞いてきた。
「いや、別に気にならないよ」
それでも彼女はしきいに服を気にしていたが、すぐに目的の場所へ着いた。
「……栄えてるところってこんなに広いんですね。なんだか人が多くて怖いです」
無事着いたところで木陰が見回しながら言う。
彼女は言う通り少し怯えていた。
「確かにここは他に比べても大きいね」
「……あの私服とか人の多いところで買うの慣れてなくて、まず日向くんが服を選んでるところ見せてくれませんか?」
「んー、良いよ」
木陰に言われ俺の服を選びに行く。
彼女は一回大きな深呼吸をして後ろを付いて来ていた。
(挙動不審だ……)
端から見れば木陰はかなり浮いた動きをしていた。
それだけこういった場所とは縁が無かったのかもしれない。
「あのー、何をお探しでしょうか?」
後ろを歩いていた木陰に店員が話しかけてきた。
かなり挙動不審だったので怪しまれたのかもしれない。
「……えっ、あ、その…………ごめんなさい」
彼女はそう吃りながら伝えると慌てて店の外に出て行ってしまった。
「すみません、彼女こういうところ慣れてなくて、迷惑掛けました」
店員に伝えて俺も木陰を追って店の外に出る。
外に出て少し離れたところに彼女は立っていた。
「……ごめんなさい」
彼女は短くそれだけを言う。
表情は暗く沈んでいた。
「少し休もうか」
二人で近くのベンチに座る。
「…………怒らないんですか?」
「別に怒ることでもないでしょ」
俺が答えると二人の間に少し長い沈黙が起きた。
「……私、あんなに人の多いところでお洋服買うの初めてで、話すのも緊張して何して良いのか分からなくて……」
「気にしなくて良いよ。それに人の多いここに連れてきた俺の責任かな」
彼女の話しをよく聞かず連れてきた俺に非があるだろう。
「……それは違います! ……私の責任です……根暗で何もできない私の」
と彼女が強く否定した。
またも沈黙が起こる。
「……あの、もう一度チャンスを貰っても良いですか?」
「平気?」
「……はい、その、いつかはこういう人の多いお店に慣れたいですし、お洋服も買わないといけないですから」
気丈に振る舞っているがどこか怯えてるようにも見える。
「何回でも付き合うよ」
できるだけ木陰の気持ちの負担を減らそうと思い言った。
そんな程度で彼女の負担が減るかは分からないが、少しでも気休めになってくれればと思う。
「……ありがとうございます。なら今日だけは存分に甘えさせてもらいますね」
そう言って彼女がベンチから立ち上がった。
「……さっきとは違うお店で良いですか?」
「うん、大丈夫だよ」
二人で違うお店を探しながら街を歩く。
少しずつだが木陰の表情も落ち着いてきていた。
「……今度は日向くんを置いて出ていかないようにします」
「無理しなくて良いよ」
「……いえ、多少無理します。お洋服も買いたいですし、人にも慣れたい。……それに根暗な自分を変えたいです」
「どうして?」
「……その、明るくて、オシャレなお洋服を着て、人と普通に話せる、そんな自分とは反対の人たちに憧れがあるんです。……そうしたら自分に自信が持てそうで、だから変わりたいです」
彼女は決意した顔で言った。
「……だから手伝って欲しいです」
「力不足かもしれないけど任せて」
「……頼りにしてます」
二人で会話しながら歩いていると聞いたことのあるお店を見つけた。
「あのお店とかどう?」
指を差して木陰に伝えると、彼女は明らかに拒否反応を示した。
「……さ、さすがに無理があります」
俺が指差したのは、女子高生の間でも流行っているというレディース専門のオシャレなお店だった。
店の中からも今どき若者が出てきていた。
「行ければ変わるのにかなりの近道だよ」
「……うっ、それでも厳しいです」
一度は否定したものの彼女はその場で考え始める。
木陰にとってもまだ迷いがあったらしい。
そして自分の足でお店に入ろうとしたが引き返してしまった。
「……どうしても無理でした。……私には根暗な性格を一生変えられないんですね」
と自分を否定し悲しそうに言った。
「いや、行こう。ちょっと身体触るよ」
「……え? はい、触って良いです……」
彼女の許可が下りたのを確認して、背中を物理的に押して店に入る。
「……いや私その、まだ心の準備が──」
木陰が言いきる前に俺が女性の店員に話しかける。
「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」
「彼女に似合いそうな服って一緒に選んでもらえますか?」
木陰抜きで話しを進める。
「はい、大丈夫ですよ」
「……日向くんちょっと待ってください! ……根暗な私じゃ無理です」
「良いじゃん今は根暗でもさ。まずオシャレな服を先に着れば今より自信出るんじゃない?」
「……それはそうかもしれないですけど」
「そしたらきっと今より前向きな性格になれると思うよ」
それでもぶつぶつと言っている木陰に被せるように女性店員が会話に参加してきた。
「彼氏さんの言うとおりですよ! オシャレな服着れば自分に自信が出ますよ!!」
「……か、彼氏」
と木陰が反応しても店員は気にすることなく続けた。
「そうです! オシャレな服を着て彼氏さんを喜ばせましょう!」
女性店員の参加により混乱した状態になり、木陰が堪忍して投げ出すように言った。
「……も、もう日向くんに私を全て任せますから、と、とにかく明るくオシャレにしてください!」
こうして俺と何故かやる気満々な店員とで、木陰が明るくなるための服選びが始まった。
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日向が無理やり背中を押しました
次回、木陰の大変身回です
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