信頼関係
二人でゆっくりとコロッケを食べ歩き家へ着いた。
「……ただいま」
「お邪魔します」
扉をくぐり二人で違うことを言って家へ入った。
「……荷物運んでくれてありがとうございます。日向くんはソファーにでも腰掛けていてください……」
キッチンへ荷物を置いてソファーに腰掛ける。
しばらく時間が経ったが、ただ待っているのは居心地が悪く木陰の様子を見に行くことにした。
「……どうかしましたか?」
俺がキッチン前のカウンターから覗いているのに気付いたらしい。
「うん、することが無かったから様子見かな」
「……ご飯ならもうすぐできますよ」
どうやら彼女は俺が待ちきれなくなって見に来たと思ったらしくそんなことを言った。
「あ、その急かしてた訳じゃないんだ。勘違いさせてごめん」
申し訳なく思い謝ったが彼女は意外な反応をした。
「……別に嫌な思いはしませんでしたよ。誰かに料理を急かされることなんて今までに無かったですし……もしそうなら私の人生で初めての出来事になったかもしれませんね」
と微笑んだ。
そして彼女は料理を続けた。
今日のご飯であるカレーの良い匂いがキッチン方からしてきた。
家のカレーとは異なる匂いに心が踊る。
そんな俺の嬉々とした表情を見て木陰が
「……味見しますか?」
と聞いてくれた。
そんな彼女の気遣いだが少し悩む。
「うーん迷うな、ここで食べるとこの後の楽しみが少し減るかなって」
「……確かにそうですね……日向くんには一番美味しいものを食べてもらいたいので味見はダメですね……」
結果彼女自身が味見をすることにしたらしい。
「……私と日向くんの料理の好みは近いと思いますから安心してください。ビックリするぐらい美味しい料理を作りますね」
彼女が小皿にカレーを移し味見をする。
横の髪が邪魔になったのか片手で髪を耳に掛ける。
エプロン姿でそんな仕草をする同級生に目を奪われた。
「……そんなにジロジロ見ないでください……恥ずかしくて味見ができないです」
「えっ!? あ、ごめん……なさい」
見とれていたのがバレてひどく動揺してしまう。
「……そういうのは料理が終わってからにしてくださいね」
木陰が俺の想定外の発言をして俺が動揺する。
そんな彼女の言葉をひとまず落ち着いて冷静に考える。
「料理が終わったらって本当に良いの?」
とイタズラで言ってみた。
それを聞いた彼女は顔を真っ赤に染めて慌てていた。
「……あの冗談です……無かったことにしてください……」
彼女は顔を隠すようにうつ向き、味見した料理の最後の調整をしていた。
少しずつ調味料を入れながら彼女は「……うん」と頷いた。最後の味の調整は終わったらしい。
「……料理出来上がりましたけど、日向くんは運ばなくて良いですよ。……そうしないとまた私の胸に飛び込みますから」
彼女の発言に過去の出来事を思い出して俺が思わず唸る。
「確かに」
必死に捻り出した言葉がこれだ。
「……それともまた私の胸に飛び込みたいなら別に良いですよ?」
「えっ!?」
そんな俺の反応を見て彼女が
「……さっきの仕返しです」
とイタズラに笑った。
そんな笑顔の彼女を見て完全に仕返しされたと思っていたら
「……やっぱりダメでしたか?」
と一転、怯えた表情になっていた。
「ん? 何が?」
何故彼女が怯えているのか分からない。
ひとまず彼女が怯えていた理由を聞こうと思った。
「……あの、日向くんが学校で男の友達の方とよく楽しそうに煽りあっていたので、私も同じことをしようと思ったんですが……」
「なるほど」と彼女の思考を少し理解する。
「……その、私は『いじめ』と『いじり』の境界線があまり分かってないので、日向くんを『いじめ』てないかなと…………」
それを聞いて思い出したのはあの出来事だ。
彼女が教卓の前で同じクラスの坂本にされたことを考えると、今怯えていることを少し理解できた。
「いじめじゃないと思うよ。俺は今の不快に思ってないし、木陰とは信頼関係があると思うからいじめにならないと思うよ」
「……その、私と日向くんに信頼関係があるんですか……?」
木陰は嫌味や皮肉というよりかは疑問の顔で俺に聞いてくる。
「俺はあると思ってるよ」
そんな俺の返答を聞いて彼女の怯えた表情は消え、顔は少しニヤけたような笑顔になった。
「……私もその、あると思うので信頼関係が……日向くんにならどれだけいじってもらっても良いです……」
うつ向きかろうじて聞こえる程の音量で彼女が言う。
「じゃあその時は遠慮せずにいじろうかな」
「……はい、楽しみしてます……その、ご飯にしましょうか……」
運ばれてきたカレーの匂いでさらにお腹が空いてきていた。
「そうしようか」
彼女が最後にサラダを運んできてくれてテーブルに料理が全て並んだ。
二人の声が同時になるようタイミングを取る。
「「いただきます」」
手を合わせて二人でご飯を食べ始めた。
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