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金曜日とお誘い

 

 朝、私は目覚ましのアラームで目が覚めた。

 時刻は6時を指している。

 ゆっくりと身体を起こして学校へ行く準備を始める。


 もろもろを済まし私はお弁当を作り始める。昨日の作り置きがあるので朝でも余裕があった。


 その時間を使い私は額に入った母の写真に向かって話しかける。


「……おはようお母さん、今日も学校行ってくるね」


 もう何年もこんなことしていなかったが、最近になってまた始めた。

 その理由は私に大きな変化が起こったからだ。


「……不思議ですよね。前まではお母さんと同じところに早く行きたいって言ってたのに、今は毎日が凄く楽しい……」


 そんなことを言えるようになった変化とは、私にできた初めての友達の影響だ。

 その時以来、私は少しずつだが前向きになってきている。


「……でもね、……今日金曜日なんだよ……。これじゃあ日向くんと会えなくなっちゃう……お母さんならどうするの?」


 母の写真に聞いても何も返って来なかった。


 最後に日向くんとご飯を食べたのは二日前、それからは学校で少しは話すものの、あれ以来あまり進展という進展は無かった。


「……今日は勇気を出してご飯に誘ってみようかな?」


 そんな決意を母の写真の前で言ってみる。

 ほんの少しだが背中を押された気がした。


「……それじゃあお母さん、時間だから……。……行ってきます!」


 私はそう母に告げて家を出た。



 ◇◆◇◆◇◆



「日向悪い」


 辛そうな表情をしながら秋人が走って待ち合わせ場所に来た。


「ヤバいぞ、早く行こうぜ」


 始業の時間までかなり迫って来ていた。

 遅刻は避けたいので辛そうな秋人をさらに走らせる。


「マジヤバいって、俺今さっきまで走ってたのに」


「仕方ないだろ、遅刻するぞ」


「てか、なんでお前先に学校行かなかったんだよ」


 鋭い質問だ。俺も秋人が来る少し前に来た。

 普通の待ち合わせなら遅刻もいいところだ。


「俺も待ち合わせに遅れたからだ、早く行こうぜ」


 それを聞いて秋人は「なるほど」と笑みを浮かべてさっきよりも速く走り始める。


「俺だけが悪くないらしいな」


 そう言って速度を上げた秋人に遅れまいと付いて行く。

 その甲斐あってなんとか始業前に教室にたどり着いた。


「おい、二バカ遅いぞ」


 険しい表情で言ったのは俺たちの担任の青木先生だ。

 どうやらもう先生は教室に居たらしい。


「「すみません」」


 そう二人で返して席に着く。

 するととなりの木陰が挨拶をしてくれた。



「……おはよう、()()()()



「うん、おはよう()()()()



 名字ではなく名前で呼び合うのは二人のときだけの秘密の約束だ。

 そんなことを思い出していると始業のチャイムが鳴った。


「よーし、お前ら出席取るぞ」


 青木先生が名前を呼んで出席確認をする。

 一通りの確認を終えたところで、緑子から質問が飛んだ。


「坂本さんは今日も休みですが、彼女はどうなるのですか?」


 彼女はあれ以来学校に来ていない。そんな質問が飛ぶのは仕方ないことなのかもしれない。

 それを聞き青木先生が険しい顔をする。


「アイツはまあ色々と大変でな」


 それもそうだろう。

 誰も教室に居ない体育のタイミングでお金を盗み、それどころか罪を擦り付けようとしたのだ。

 仮に盗みの件が和解したとしても、クラスに馴染むのは難しいだろう。


「今はなんとも言えないな」


 悲しげな表情をしながら先生は言った。

 自分のクラスからたった数日とはいえ、こんな生徒が出たならそうなるだろう。


「よし、この話は終わりだ」


 すぐに先生は切り替えた。

 表情もさっきまでの悲しい顔とは違って、普段の表情になっていた。


「お前ら今日が金曜日だからって浮かれて授業をないがしろにするなよ」


 それを聞いた生徒たちは少し不満そうな顔をしていた。


「じゃあ、しっかりと授業を受けろよ」


 そう生徒に告げて先生は教室を出ていった。




 ◇◆◇◆◇◆




「だぁ~、あと一時間」


 授業終わりのチャイムを聞いて秋人が伸びをしながら言った。

 時刻は昼も過ぎ、六時間目を迎えようとしていた。


「次終わればやっと休みか」


 俺が斜め前の席の秋人に返す。

 新学年始まって初めての休日になる。

 やはり週末というのは予定が無くてもそれだけで心が踊る。


「次何だっけ?」


 次の授業が分からず秋人に尋ねる。


「知らね」


 どうやらコイツも分かっていないらしい。

 すると木陰が教えてくれた。


「……次は現代文で青木先生です」


「現代文か、ありがとう」


 そう木陰に返事をする。

 彼女は小さく「うん」と頷いた。

 そんな会話を盗み聞きしてたのか


「うわーめんどくせえ」


 と秋人が言った。


「私の授業がめんどくさいとは良い度胸だな」


 後ろから聞こえた先生の声に秋人は震えていた。


「あれ居たんですか……」


「もちろん」


 それを聞いて秋人が今さら姿勢を正す。

 そんな秋人を見て「もう遅いわ」と言葉とチョップを残し教卓へ向かった。


「よーし、お前ら金曜日最後の授業だからって気を抜くなよ」


 青木先生がそう言って授業を始めた。



 少し時間が経ったところで、木陰が俺の裾を引っ張った。

 目をやるとペンでノートを指していた。

 何かノートに書いているらしい。



『今日、私の家でご飯食べませんか?』



 ご飯のお誘いだった。思わぬ誘いに心が浮き足立つ。

 木陰の美味しい手料理を前に断る理由は無かった。



『ぜひ! よろしくお願いします!』



 と書いて木陰の見える位置にノートを置いた。


「よーし、じゃあここを日向読め」


「えっ!?」


 授業を聞いていないタイミングで当てられて変な声が出た。

 とりあえず立ち上がりはしたが何をするのか分からない。

 あたふたしていると


「お前授業聞いてなかったな」と。


 見事に当てられ「ははは」と愛想笑いしか返せなかった。


「となりの暗野、教えてやれ」


 木陰の近くに教科書を持っていく。

 彼女の方はあれでも授業をしっかり聞いていたらしく、読まないといけない範囲をすぐに教えてくれた。


 ひとまず教科書を読み上げて席に着く。

 暗野さんがまた俺の裾を引っ張った。



『さっきは私のせいだよね。ごめんなさい』



 とノートに書かれていた。


 彼女はこういうのを気にし過ぎてしまう性格な分、なんて返すかかなり悩む。

 それに責任を感じているなら気休めの言葉は逆効果かもしれないからだ。

 必死に頭を巡らせて出た答えをノートに書く。



『半分はそうかもしれないね。だから晩御飯はさらに美味しさマシマシにしてもらわないと!』



 と書いた。

 彼女は少し微笑み



『なら仕方ないですね。しっかりと責任を取って、ビックリするぐらい美味しい料理を食べさせてあげます!』



 と書かれていた。


 また二人で秘密の約束をした。



 ◇◆◇◆◇◆



お久しぶりです。また更新始めます。


面白いと思った方、続きが気になると思った方は



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(っ'ヮ'c)ウォッヒョョョオアアァァァ!←こんな感じに



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