保健室と青木
「お前が手を振ったの見られてなかったな」
そう保健の先生が俺をいじる。
「なんでそんな恥ずかしいところ見てるんですか!」
恥ずかしいところを見られて顔が赤くなる。
「それになんだあ? コレは?」
そう言って先生は暗野さんを真似して前髪を少し上げた。
「勘弁してくださいよ」
煽られたことも恥ずかしいかったが、それよりも暗野さんを連想して赤くなる。
それを見て先生はいたずらに笑っている。
「確かお前が成田日向だろ。さっきの子は暗野だったかな」
自分の名前が覚えられていたことに驚いた。
「名前覚えられてるんですね」
「いや、二人が私の中で有名なだけさ」
そう言って先生はタバコ型のお菓子を食べ始めた。
そのお菓子を「いるか?」と聞かれたが断る。
「私は、アンタの担任の青木と仲がまあ良くてね。君の話は聞いてた」
何の話をしていたか気になる。
「なに、悪い話はしてないさ。もう一人はまあ、去年は良くここに来てたからね」
後半の言葉が引っ掛かった。
保健室に足を運ぶなどあまり良い理由が思い付かないからだ。
「君は顔に出るタイプだね」
指摘されて自分の顔に考えが出ていたことを知る。
ただ、それと一つ気になることができた。
「どうしてさっきの暗野さんが居るところで、彼女を知らないふりをしたんですか?」
「なかなか鋭いね」
そう言った後さっきのお菓子は食べ終えたのだろう、また一つ口にくわえた。
「あんまり保健室の常連なんて知られたくないかなって私の配慮さ」
俺は「確かに」と納得した。
「理由が知りたいなら、彼女に聞きなさい。でもしっかり覚悟して聞かないといけないよ」
それほどの内容なのだろう。
「ただ、私からアドバイスがあるのなら彼女と仲良くしてやってほしい、ぐらいかな」
「もちろんです。友達ですから!」
先生は「良いじゃん」と笑う。
そして時計を確認した。
「もうすぐで授業終わるけど、次の授業出れそう?」
「なんとか行けそうです」
少し休んだお陰で、痛みがずいぶんと減っていた。
これなら次の授業も問題無く出られるだろう。
「そう。なら良かった」
目をやると俺の書類を書いていた。
「はいコレ。保健室の証明書」
先生は俺に証明書を手渡してくれた。
それを貰い、俺は教室へ向かう。
「次は気を付けなさいよ」
「もちろんです! 痛い思いはこりごりですから」
正直かなり痛かった。
できることならこの痛みは二度と勘弁だ。
「そう? 私には美味しい思いだと思うけどな」
なんてことを言うんだ。
しかし全てを否定できなのが、悔しいところだ。
「ありがとうございました。えーと──」
「山田よ」
俺の気持ちを汲んで自己紹介してくれた。
「覚えやすいでしょ?」
確かに良くある名前なので覚えやすいと言えば覚えやすい。
そう言うと山田先生は笑っていた。
「お世話になりました。山田先生」
「おう、二度と来るなよ、少年」
そんなセリフを聞きながら俺は教室に歩き始めた。
◇◆◇◆◇◆
「へー、あの子に友達ね」
さっきの出来事を思い出しながらタバコのお菓子を食べる。
彼女は去年よくここに来ていた。
それも服で隠れて見えないところ怪我してることが多かった。
口を開けば「死にたい」と。それが彼女の口癖だった。
しかし、さっき彼女が出ていったときの彼女を考えるとまるで違う。
「あんな楽しそうな表情できたんだ」
彼女は変わった。去年から想像できない程にだ。
青木の良く言っていた日向という少年のお陰だろう。
「青木の奴、結構やるじゃん」
誰も居ない教室で一人私は呟いた。
◇◆◇◆◇◆
遅くながら着替え終えて、教室に入る。
みんなはもう着替え終わり休み時間をにぎやかに満喫していた。
「お、日向っちゃんもう平気か」
俺を見るなり和葵が話しかけてきた。
「なんとかな」
授業開始の時間が迫っていたので軽く返事をして席に座った。
すると暗野さんからも話しかけられた。
「大丈夫なの?」
「うん、もう大丈夫だよ」
「……良かった。……本当に良かった」
相当心配だったのだろう。彼女は安心していた。
少しして時間が迫り青木先生が教室に入ってきた。
入ってくるなり──
ドゴンッ、と教卓を蹴った。
にぎやかな空気が一瞬で静まりかえる。
「私が怒っている理由、分かるよな?」
先生の言葉を理解できなかった。
それは俺だけではなく、他の男子もそうらしい。
しかし、どうやら女子は違った。
「このクラスで金を盗んだ奴が居る」
先生ははっきりとそう言った。
◇◆◇◆◇◆
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