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償い

「あ、あの、ごめんなさい」


 すぐさま立ち上がり真っ先にに出た言葉だった。


「……」


 彼女はただ俺の顔を見つめていた。

 怒るでもなく、泣くでもなくただ無表情で。

 顔の大部分は前髪に覆われ、雰囲気も暗くどこか地味目の女の子だ。

 ただ一つの部位を除いて。


 そんな二人の沈黙をとチャイムが切り裂いた。

 チャイムを聞いて、何も言わずに去って行く名前も分からない彼女。


「ああ、待って」


 そんなお願いも虚しく彼女は自分の席へと歩いて行った。



 ◇◆◇◆◇◆



 担任の教師が教室へと入って来た。


「はい、私が一年間君たちを担当する青木だ。よろしくね」


 そう青木先生は挨拶した。

 青木先生は若く、クールな女性の先生だ。

 ただ、今の俺はそれどころではなかった。


 なにせ、俺は女の子の胸を揉んだのだ。それもガッシリと揉んだ後にスカートまで覗いた。

 不幸中の幸いと言えるのか教室の一番後ろで起きた出来事なので、この事を知っているのは俺と秋人、美冬そして被害者の彼女だけだ。


 もちろん、これから先に彼女が人に言いふらすことはあるだろう。

 それに俺は彼女の胸を揉んでしまったのだ。

 そんなことは彼女の受けた傷に比べれば、言いふらされるぐらい軽いものだろう。

 と、自問自答し受け入れる。


(ああ、俺の薔薇色の学校生活も終わりだな)


 問題を起こした今となっては過去が恋しいものだ。

 これからは、胸を揉んでパンツを見た変態として生きて行くしかないのだ。


「はい、という訳で提出物を集めまーす。みんなしっかりやって来ただろうな?」


 そんな事を考えている間に話しは進んでいた。

 クラスからはブーイングが起きているが、青木先生は気にせず課題を集め始めた。


「はい、後は配る物配って、今日は終わりだな」


 二年生が始まってばかりなのでどうやら今日はすぐに終わるらしい。

 とはいえ、まだ始まってばかりなのに大問題を起こしたのも事実だが。


「はーい、今日はお疲れ様」


 そんなこんなで先生がプリントを配り終え今日の授業が終わった。


「明日もサボらず来いよ」


 クラスからは、先生を舐めているのか「へーい」などの返事が聞こえた。


「あ、あと、成田と暗野(くらの)は残ってくれ」


「はい」と返事したものの、もう先生の耳に入り問題になっているのかと危惧する。

 鼓動は速くなり、冷たい汗が出ていた。


「じゃあ、二人で提出物誰が出してるかチェックしといて」


 そう言って青木先生は俺にチェックシートを渡して足早に去って行った。

 俺は問題が先延ばしされたことに少し安心する。

 他のみんなも学校が早く終わり、遊びたいのかみんなもう教室から出ていっていた。


(面倒なもの押し付けられたな。まあ、因果応報か。それと暗野さんって誰だろう)


 そんなことを思い教室を見回す。



 そこに残って居たのは俺が胸を揉んだ彼女だった。



 ◇◆◇◆◇◆



「あ、あの。さっきはごめんなさい」


 誠心誠意謝る。


「……」


 彼女の方は相変わらず無言だった。

 仕方ないだろう、胸を鷲掴みにされたんだ。

 そもそも今この場に、加害者の俺と被害者の彼女が残っている方が、彼女にとって精神的苦痛になりかねない。


「えっと、俺がこのチェックシート付けとくから、暗野さんは先に帰って良いよ」


 今の俺が彼女にできる最大限の罪滅ぼしだ。

 ただ、彼女は何の反応も示さない。


「暗野さん、俺がやっとくから帰っていいよ」


 反応が無いのならもう一度伝える。

 それでも彼女は反応を見せなかった。

 ただ、黙り俯いているだけだ。


(どうしよう……)


 何もできず、戸惑っていたら暗野さんの方がついに動いた。

 チェックシートを一枚取り、提出物のチェックを付け始めたのだ。

 彼女はただ無言で作業をし始めた。

 何もしないままでは居心地が更に悪くなるので、俺もチェックシートを手に取った。


 二人の間に会話はなくただただ重苦しい雰囲気が漂う。

 しかし、どうすることもできずに心を押し殺し、手を動かすロボットになろうと勤める。

 どうしても心を押し殺すことができず邪念が心をよぎる。


 それはさっき触った胸の感触だ。

 それも目の前に当人が座って居るのだ。どれだけ忘れようとしても思い出してしまう。


(柔らかかったなあ……)


 成田日向の人生で女経験が乏しいこともコレをさらに加速させていた。


(バカ野郎! 俺はなんてことを考えているんだ!)


 どれだけ言い訳しても、目の前に居るのは被害者であり、俺は彼女を傷つけた加害者だ。

 罪悪感に押し潰されそうになりながらも、なんとか提出物のチェックを付けていく。


 長い間黙々と作業していたかいあって、提出物のチェックを全て付け終えた。

 気まずい雰囲気だがとりあえず、今ある課題を持ち職員室に提出しに二人で向かう。


「俺がこっち持つよ」


 何故だか分からないが、彼女はプリントの課題ではなくノートの課題を持とうとしていた。

 腐っても俺は男だ。女の子に重たい荷物を持たすなどあってはならない。

 俺が重たい方を持ち二人で職員室に向かった。



 ◇◆◇◆◇◆



「失礼します。青木先生、課題のチェックを終えたので持って来ました」


 職員室に入り青木先生を呼ぶ。

 案の定と言うべきか、暗野さんは自分から動かず職員室の前で待っているだけだったので俺が先生を呼ぶことにした。


「お、もう終わったのか。偉いぞ二人とも」


 先生は俺たちのチェックシートを確認し、提出物を受け取った。


「悪いね。二人とも居残りさせちゃって。二人は真面目だからつい頼んじゃった」


(真面目と言うよりかは言われたことを、ただこなしているだけなんだけどなあ……)


 暗野さんは少し頷いただけだった。

 用事も終わったので二人で職員室を出た。

 カバンを取りに教室へ戻った。

 この間も二人に会話は無く、有ったのは重苦しい雰囲気だけだ。


「やっぱり、気にしてるよね。本当にごめんなさい」


 最後の勇気を振り絞り誠心誠意謝罪する。


「……」


 当然無言。


「言葉だけじゃ許してもらえないと思う。だからせめて何か償いをさせて欲しい」


 罪悪感で押し潰されそうになり出た言葉だった。

 こんなことを言ったとして何か変わる訳もないと思っていた。思っていたのだが、その予想は外れたのだ。

 暗野さんは初めて俺に口を開いた。



「……()()()()()()()()()」と



 ◇◆◇◆◇◆


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