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成田と暗野

 


「おや、今日はどんな用かな」


 保健室のドアを開けると保健の先生が出迎えてくれた。

 口には何故か煙草のお菓子を咥えている変わった先生だ。


「うーん、服から見るに体育で怪我をしたかな。立ってないでそこに座って」


 俺と暗野さんは言われた通りに座る。


「女の子の方は付き添いかな?」


 ここに入って来るときに肩を貸りていたのを見てたからか、すんなりと俺の方が怪我人と分かってた。

 暗野さんは頷いている。


「さて、少年どこを怪我した? それにしても凄い汗だね。平気かい?」


 俺を見つめて聞かれた。

 答えずらい質問に言葉が詰まる。


「……それ私の汗です……」


 保健の先生は暗野さんを見つめて、今の状況を理解したらしい。


「なるほど、これは失礼。どうやら少年は血は出てないし、お腹でも痛いのかな?」


 痛みがお腹にまで上がって来ているので、間違いではないが原因は全く違ってくるだろう。


「えーと、男の急所をぶつけたって感じですかね……」


 言葉が終わりにつれて小さくなっていた。


「……私が誤ってサッカーボールをぶつけました」


 先生は「なるほど」と言いメモを取っていた。

 すると突然──


「じゃあ、脱いで」


 何を言われたかができない。


「見ないと分からないでしょ。早く脱いで」


 もう一度催促されてようやく理解した。

 となりの暗野さんは顔はうつ向き、耳は赤く染まっている。


「脱げる訳ないでしょ!」


「そうか、それは残念」


 少し残念そうな顔をしたが、すぐに表情を戻していた。


「だからベッドで休ませてもらえたら助かります」


「なるほどね。二人は付き合ってるの?」


 突拍子のない質問に驚いたが二人で首を横に振る。


「へー、仲は良いの?」


 これもまた変な質問だ。

 暗野さんは何も言わなかったので俺が答える。


「仲良いと思います」


 それを聞いて暗野さんが俺を見つめて来た。

 それに彼女は驚いている様子だった。


「分かった。ベッド使った良いわよ」


 先生はそれを伝えるとどこかへ行こうとしていた。


「ヤニが切れたから吸いに行くのよ。あ、そうだ。これちゃんと使いなさいよ」


 そう言って引き出しから何かを取り出して俺に投げた。

 俺と暗野さんでソレが何か確認する。



 それは────避妊具だった。



「なんて物渡してるですか!?」


 俺は思わず大声を出し、暗野さんは顔を真っ赤にしてうつ向いていた。


「何って、コン◯ームだが? なんだ息子の動作確認する訳じゃないのか」


 どうやら先生との間に大きな勘違いが起きていたらしい。


「そんな訳ないでしょ!」


「そう。まあいいわ。でも私ヤニ切れたからどのみち、ちょっとの時間戻って来ないから好きなことしてて良いよ」


 それを伝えると、先生はどこかへ行ってしまった。

 この学校は本当にこれで大丈夫なのか。



 ◇◆◇◆◇◆



 残された二人は避妊具のせいもあり、気まずい状況となっていた。

 しかしその沈黙を暗野さんの方から破ってきた。




「成田くんは本当に私と仲が良いと思ってるの?」




 突然のことで俺は耳を疑った。




「俺は本当に仲が良いと思ってるよ」




 これが俺の回答だった。


「……嬉しい。……でも私から見たら、あの男の子人たちと居る方が楽しそうに見える」


 俺が「どうして?」と聞いた。


「私と話してるとき成田くんは笑わないのに、他の人のときにはいっぱい笑ってる……」


 これが暗野さんから見た視点だった。

 確かに俺は暗野さんの前では顔がニヤニヤしないよう抑えていた。


「……私は成田くんを楽しませられない、笑わせられない。それなのに迷惑ばかりかける」


 そう言っている彼女の目には涙が浮かんでいた。


「……それなのに仲が良いって言えるの? ……本当に友達って言えるの?」


 彼女はさらに続ける。


「……私は成田くんの弱みに付けこんで友達になった。……でも初めて私の胸を触ったあの時、私から触られに行ったようなものなのに……」


 彼女から大粒の涙が何個も落ちていた。


「……それなのに今まで黙って友達を続けさせてた」


 この大量の涙はきっと罪悪感がずっとあった証拠だろう。


「……嘘も付いた、迷惑もかける。……それでも私は友達なの?」


 彼女は本心を話してくれた。

 だから俺も本当に思っていることを言う。




「それでも俺は友達だと思うよ」




 俺の返答に彼女は目を見開いていた。


「それに迷惑だけじゃないよ」


 そう言って俺は何個か例を出す。


「数学の教科書見せてもらったし、俺が食わず嫌いしてるピーマンだって暗野さんが料理してくれたら食べられるようになるかもしれない。これからだってきっと助けてもらうと思う」


 そもそも彼女の前提が間違ってると思う。


「それに迷惑だなんだなんて気にしなくても良いのに。そんなに返したいなら今は無理でもずっと先に返してくれれば良いのに」


「……でも、私は成田くんを楽しませれられない!」


 ──違う。


「違うよ。俺は暗野さんと居るの楽しんでるよ」


「……嘘だ」


「嘘じゃないよ。暗野さんの前だとニヤけるのが恥ずかしくて隠してたんだ」


「どうしてそんなこと言えるの」と言って暗野さんはうつ向いていた。

 彼女にとっては笑わないと楽しんでいないという認識だったのだろう。


「俺は暗野さんと居るときも楽しかったと本当に思ってるよ」



「……でも、私は『ゴミ付き』なの……」



「ゴミ付き……?」


 何かの名前だろうか。


「……成田くんだって知ってるでしょ。……私の顔のこと」


「顔……?」


 俺にはさっき暗野さんが言った『ゴミ付き』がどうのこうのとかは分からなかった。


「……知らなかったんですね」


 どうやら彼女はこのことを俺に言いたくなかったらしい。

 そう思えるほど言葉が出てこず沈黙していた。


「……私の顔にはゴミが付いているんです」


 頑張って言葉をひねり出していたがとても辛そうに言う。


「……私はコレが大嫌いなんです。誰にも見られたくないぐらいに……」


 そう言って彼女は前髪を上げた。

 彼女の顔、その頬にあるのはそばかすだ。


「……私はコレのせいでいじめられた。……みんなはコレを見て『ゴミ付き』って言うの……」


 ようやく『ゴミ付き』という言葉を理解できた。


「……成田くんだって、……顔にゴミの付いた人がとなりに居て欲しくないでしょ……?」


 彼女にとってそばかすはコンプレックスの塊だった。


「……だから違う顔に生まれたかった。……違う性別に生まれたかった。……そしたら成田くんともっと楽しく笑い合えたのにな……」


 彼女は泣きながらどうしようもなさそうに笑っていた。

 だからこそ恥ずかしがらず、ちゃんと伝えないといけないと思う。



「俺は──俺は暗野さんのその顔、凄く素敵で良いと思うよ」



 彼女は驚いていた。


「……どうして? お世辞ならいらない……」


「お世辞じゃないよ。本当にそう思ってるよ」


 俺は本当に素敵だと思っている。


「……どこが! ……どこが良いのよ……こんな……ゴミの付いた顔の!」


 彼女は感情的に言った。


「俺が暗野さんの素顔を初めて見たとき、星空みたいで素敵だと思ったんだ」



 俺は彼女の目を見て嘘偽りなく答える。

 彼女は涙を流し自分の頬を触っていた。


「だからさ、友達で居ようよ。迷惑だとか、顔がどうとか、性別がだとか、そんなの気にせず今度は二人で笑い合おうよ」


 それを伝えても彼女は迷っているらしい。


「……本当に良いの……?」


 彼女は迷っていた。

 だから彼女の今の本音が知りたかった。


「暗野さんはどうしたいの?」


 彼女は涙を流しながら必死に俺に伝える。


「……できるのなら……もし本当に可能なら、もう一度こんな私と友達になってほしい」


 そう言って彼女は手を伸ばしてきた。

 俺はその手を握り返し──


「もちろん。何度でも友達になるよ」



 ◇◆◇◆◇◆


面白いと思った方、続きが気になると思った方は



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