グループメール
「よし、お前ら席は無事に決まったようだな」
話し合いが終わり皆が新しい席に付いた。
俺のとなりはまさかの暗野さんだ。
青木先生が時計を確認して、何か考え事をしているみたいだ。
「時間が中途半端だな。この続きは六時間目にするから、お前らはうるさくならない程度に話してて良いぞ」
青木先生はそう言って、教室の窓際にもたれ掛かった。
クラスの皆も迷惑にならない程度に会話を始めた。
「ちょっと、暗野さんさっきの挨拶は何なのよ」
美冬が振り返り暗野さんに訊ねた。
「…………」
暗野さんは恥ずかしいのかうつ向いている。
となりの席の俺からは彼女が耳を真っ赤にしているのが分かった。
「日向と、えーっと暗野さんだっけ? って仲良いの?」
秋人も話が聞こえてたらしく暗野さんに質問した。
「……」
彼女はうつ向きながら、前の二人から椅子を引いて距離を取った。
「日向は仲良いと思う?」
美冬が暗野さんへの質問を止めて俺に聞いてきた。
仲が良いと言っても悪いと言ってもどちらも角が立ってしまうだろう。
「うーん、秘密」
どっちとも言えないのでとりあえず誤魔化す。
それが面白くなかったのか、二人はさらに質問責めにしてきたがどれも誤魔化した。
そんな会話を和葵が終わらせた。
「今からクラスのL◯NEグループ作るから皆入ってきてくれや。あった方が便利やろ、時間割とか提出物の期限とかで」
そう言ってスマホを取り出した。
が、それを緑子が止める。
「なんで止めんねん」
「一応、今は授業中ですので」
確かに、といった理由だ。
「別にうるさくしないならスマホ使って良いぞ」
話を聞いていた青木先生から許可が下りた。
「じゃあ、クラスのグループ作るで。俺の友達登録してる奴から招待してくから、招待されたら他の奴にも回してくれ」
すると、みんなのスマホから通知音が鳴り始めた。
俺のスマホからも鳴っている。
しばらくして、クラスの大方を招待できた。
「よーし、これで39人か。このクラス何人やっけ?」
和葵が緑子に訊ねた。
呆れた様子で彼の質問を返す。
「40人ね。あと一人よ」
どうやら彼女はしっかりと把握していたらしい。
「あと一人誰や? 今日休み居ないやろ?」
クラスの皆があと一人を探し始める。
俺はそのあと一人を知っていた。
そう、となりの席の暗野木陰だ。
おもむろに美冬が手を挙げた。
「あれ、前田にも回ってるやろ」
「うん、回って来た」
「じゃあ、どうしてん?」
「多分、暗野さんかなって」
どうやら彼女も気づいていたらしい。
「マジ? じゃあ誰か暗野に回してくれや」
和葵が皆に促す。
しかし──
「私連絡先持ってない」
「私も」
「あんな奴の持ってる奴居るの?」
「私、あんなのと連絡先交換したくないわ」
と、皆が話しだした。
ひどい言葉もあり暗野さんはうつ向いていた。
すると、美冬が「連絡先交換しない?」と話しかけた。
「あの……私そういうの苦手で…………それによく知らない人と連絡先を交換するの怖いし……」
彼女は冷たい汗をかきながら、ものすごく怯えて答えた。
彼女にとって気にかけてくれた美冬にも、連絡先を知られるのは嫌らしい。
彼女にとってそれほどまでにメールはハードルが高いのだろう。
それに美冬の後に連絡先を交換しようとした人は居なかった。
「うーん、でもみんなグループに入ってるし……」
美冬もどうすることもできずに困っていた。
俺が暗野さんにしか聞こえないほどの小声で「一対一での連絡先が嫌なの?」と質問する。
暗野さんがコクコクっと俺にしか分からないように頷く。
(どうして俺とのメールは平気なのだろう?)
とりあえずそんなものは後に考えることにした。
そして仕方ない、と言い聞かせた。
暗野さんをグループに招待する。
成田日向が暗野木陰をグループに招待しました。
俺たちの他38人にこの通知が届いてしまった。
もっと早くにグループに入って、できればバレないように招待したかった。
「「「!?」」」
クラスの反応は案の定、俺が彼女の連絡先を持っていたことに驚いているらしい。
青木先生は誰かのスマホを覗き見したのたろう、俺にグッジョブと親指を立てていた。
「なんで日向が連絡先持ってんねん」
みんなが思ったことをそのまま和葵が聞いた。
それにみんなも頷き賛同している。
「んー、昨日提出物のチェックシートしてるときに聞いた」
それっぽい理由を咄嗟に出した。
「へー、じゃあなんで前田はさっき断られたん?」
ズバズバと鋭いことを聞いてくる。
あまりの鋭さに俺は言葉に詰まる。
すると、暗野さんが──
「あの……私……あまり話したことの無い人と話すのが苦手で……昨日は成田くんとチェックシートのこととか話したから…………それでたまたま連絡先交換したの…………」
彼女は詰まりながらも必死に答えていた。
あくまでも「たまたま」らしい。
「なるほどな」とクラスの皆も一応は納得したらしい。
「じゃあ、暗野さんと仲良くなったら交換してくれる?」
と、美冬が聞く。
しかし暗野さん何故かあまり良い返答をしなかった。
だが、ひとまずの山場は乗り切ったらしい。
ふーっ、と安堵の息を吐く。
すると──
暗野木陰さんから新着メッセージがあります。
と俺のスマホが鳴った。
メールを開くと、
「私のせいで迷惑かけてごめんなさい」
と書かれていた。
「かかってないよ。こっちこそ迷惑かけたと思う」とメールで返す。
再び俺のスマホが鳴る。
暗野木陰さんから新着メッセージがあります。
とまたメールが来た。
開くと──
「助けてくれてありがとう!」
と書かれていた。
感謝されるとは思っていなかったので、驚いて暗野さんへ直接目をやると──
彼女はあの時見せてくれた笑顔を俺にだけまた見せてくれた。
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