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席替え

 

「緑子と三バカは一旦席に着け」


「定着させようとしないでくださいよ!」


 俺が汚名返上を図るが──


「もう遅い!」と一蹴。

 俺たちは泣く泣く席へ戻った。


「よし、学級委員も決まったところで、次は席替えするぞ」


 クラスのテンションが上がった。


「知ってる奴も居ると思うが、私のクラスは生徒たちで席を決めてもらう」


 待ってました、と言わんばかりに盛り上がるクラスを横目にクラス委員長の緑子が手を挙げた。


「自分たちで席を決めるなんて、いたずらにバカを増やすだけだと思います」


 彼女はクラスも驚くような厳しい言葉を言い放った。


「なるほど、確かにその可能性はあるだろうな」


 彼女の意見を十分に受け止めたうえで、青木先生は続けた。


「学生の本分は勉強。そのとおりだろう。しかし、私はその前にもう一つ大切なものがあると思う」


 青木先生の話に盛り上がっていたクラスが静まりかえり、皆が聞く姿勢を取り始めた。


「それは学校を楽しむことだ」


 真剣な眼差しで彼女は続ける。


「何の楽しみも無く、ただ毎日を過ごすのは生きていると言えるのか?」


 投げ掛けられた問に皆が詰まる。


「楽しみの無いところに毎日、何時間も居たいだろうか?」


 皆が聞き入っていた。


「私はそうは思わない。だからこそ私はこのクラスの皆が、学校を心から楽しめるよう誰よりも工夫したいと思う。勉強はそれからだ」


「なるほど、納得いたしました」


 先生の話を聞き、緑子も先生の考えを受け止めたのだろう。


「もちろん、勉強がおろそかになる者も居るだろう。なら私が居残りして何度でも勉強を教える──」


「だから思う存分学校を楽しめ」


 先生の想いにクラスがしんみりとする。


「よし、席替えの時間だ。緑子と三バカは前に来い」


 呼び出され四人が教卓の前に立つ。


「じゃあ、後はよろしく。いやその前に一つ言い忘れていたな」


 そう言って再び教卓に立った。


「このクラスでいじめが起きたら私が守るのは加害者ではなく被害者だ」


 すると和葵が「あたりまえじゃ?」と言った。


「いや、そうでもない。学校は問題を世間に出させたくないからな。もみ消そうとすることもある」


「なるほど」と和葵は納得していた。


「でも安心してくれ。私はどれだけ晒されようが、世間のおもちゃになろうが、いじめられた被害者を絶対に守る。そして加害者にはしっかりと罪を償ってもらう。以上だ」


「はい先生」


 秋人が前に居るにも関わらず手を挙げて質問した。


「どうした、秋人?」


「例えばなんですけど、このクラスで女の胸を同意無く揉んでのうのうとしてる奴がいたらどうします?」



「殺す」



 即答だった。

 思わず俺は暗野さんを見つめる。

 暗野さんは首を横にブンブンと振り、「そんなことしない」とアピールしていた。

 皆に気付かれないように安堵する。


「よし、じゃあ席を決めてくれ」


 そう言って青木先生は教卓から離れた。



 ◇◆◇◆◇◆



「これってどうやって決めれば良いんでしょうか?」


 緑子が俺たちに聞いてきた。


「一年の頃はまずグループを決めてもらってから、パズルのピースみたいに当てはめていってたよ」


 去年青木先生に担当してもらっていた俺が答えた。


「お、それええな。聞こえてたやろ? グループ作ってけや」


 和葵がクラスに指示を出した。


「流石は俺のナンバーツー」と言って肩を組もうとしたきたので、手で弾いておいた。


「じゃあ俺らも決めますか」と秋人が言ったので一旦教卓の前から解散とした。


 数分して、だいたいのグループが決まってきていた。

 俺たちは何故かそのままの四人と秋人のパートナーの美冬が加わった五人グループになっていた。

 それにクラス替えからまだ今日で二日だったが、案外みんなグループができていた。

 しかし、その中で一人だけ馴染めない子が居た。



 暗野木陰だ。



 皆がグループができた中で、一人で居るのが逆に注目を集めていた。

 俺がこのグループに引き入れようと動こうとした時、美冬が先に動いた。


「あの~、暗野さんだよね? 良かったらウチのところに来ない? 三バカ居るけど……」


 三バカと言っていたが、俺を名指ししないためだろう。

 美冬からしてみれば、今の俺は暗野さんの胸を揉んだ加害者に見えているだろう。

 別に間違いではないが。

 それを踏まえて、三バカと言い彼女の様子を伺ったのだろう。


「……あの、本当に良いんでしょうか……?」


「もちろん! ウチのところにおいで!」



 ◇◆◇◆◇◆



 話し合い、グループとして座る場所が決まった。

 俺たちは緑子のお願いで、教壇前から六つの一番目立つ席になった。

 後は誰がどこの席に座り、誰と隣になるかだ。


「はい、私は秋人の後ろで!」


 意気揚々と美冬が宣言する。


「へえ、意外やな。秋人の隣座るんかと思ってたわ」


「後ろに座れば前見るだけで、顔が見えるからね!」


「なるほどやな」


「だから、暗野さん隣に座ろ~~」


 そう言って美冬はが木陰に抱きつこうとしたが、回避されてしまった。


「……あの、私で良ければお願いします…………」


「じゃあ、日向。俺と隣に座ろうぜ」と秋人。


「二年もかよ。よろしくな」


 一年の頃から秋人とはずっと隣だったため特に断る理由は無かった。

「いや、待てや。俺を置いてくなよ」と和葵が言った。


「だって小川の隣は一番前なるやん。変わろうや」


「え~、もう決まったし良いじゃんそれで」


 美冬が強引に終わらそうとしたが、和葵は引かなかった。

 どうしても折り合いがつかずに、膠着していた。


「じゃあ、グッパで決めようぜ」


 秋人がめんどくなったのだろう、適当に言い始めた。

 しかし、折衷案が無い以上、選択肢としては十分ありだ。


「え~、でも暗野さん要るし~~」


 美冬が気を使いそう言ったが──


「……私はそれで良いです…………」


「よし、決まりやな」


 その言葉で六人が手を出す。


「「「「「「グッパで」」」」」」


 ペアはすぐに決まる。

 席は前から


 和葵と緑子


 美冬と秋人


 日向と木陰、と決まった。


 神のいたずらか暗野さんととなりになった。

 すると、暗野さんが何か言いたげな仕草を取っていた。

 しかし彼女は動揺してたのかとんでもないことを言った。



「あ、あの……す……末永くよろしくお願いします……」



 予想外の挨拶に前の美冬が吹き出した。

 俺も暗野さんの突飛な発言に動揺してしまう。



「うん、末永くよろしく」



 焦りながら返した言葉に今度は秋人が吹き出した。


 こうして俺と暗野さんでとなり同士の席となった。



お待たせしました。



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