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歩く速度

挿絵(By みてみん)

 

「……写真に残すの楽しみですね」


 持っていたカメラを返すと楽しそうに撫でているようで修学旅行を待ちきれない様子だ。


「……あ、修学旅行先は京都ですよね?」


「うん。京都だよ」


 うちの高校では上級生も同じ場所へ修学旅行へ行っているらしく、部活動やらで交流のある人たちからすでにいろいろな情報が出ていたりする。


「……良かったです。……それで京都ですけど一緒に回るじゃないですか?」


「……それなら日向が行きたい場所とかありますか?」


「行きたい場所か……」


 友だちから聞いた話によると向こうでは自由行動が多いらしく『どこに行きたいか』みたいな話題は定番である。そのためある程度はめぼしい場所を決めていたりする。


「やっぱり金閣寺は行ってみたいな。なんというかロマンがある」


「……なるほど、王道ですね。……私も見てみたいです」


「木陰は何か行きたいとか見たい場所はある?」


「……ありますけど、、、言いたくないです」


 何やら口ごもるようで目線を逸らす。


「でも一緒に回るんじゃないか?」


「……それはそうですけど」


 隠すのを諦めたようで「……分かりました」と、か細い声がした。


「…………その、私は縁結びの神社の方に」


 一度目でも聞き取れたが、言い直すようで前より力を込めようとしていた。


「……縁結びの神社に行きたいです!」


 縁結びの神社か、聞いておいてだが野郎ども話題では出ないところで失念していた。


「……聞いたのならそんな顔しないでください」


 顔に出ていたらしく木陰に指摘されてしまった。ただ質問した側にもそれなりの責任が伴うもので。


「行く……?」


「……はい」


 なんと言うか、テスト期間で空いたからか今日は距離感とか話題選びにお互い困る、というかミスっている。


「向こうで泊まるけど木陰はそういうのに慣れてる?」


 何か話題を変えなければと、頭を振り違う話題に持っていく。


「……良いところを付きますね……私、誰かと泊まるの初なんですよね」


 それが本当に良いところなのかは審議な部分ではあるが、それに友だちとは泊まらなくても学校行事がある


「小学校、中学校の時に修学旅行とか林間学校とか無かった?」


「……一つは風邪で、一つはサボりです」


「サボったんだ……」


 風邪ならしょうがないと思うが、学校行事をサボるあたり木陰はなかなかの猛者なのかもしれない。


「……はい」


「やんちゃだね」


「……若気の至りです」


「まだ16歳だけど」


「……なので泊まるのは初めてで不安ですね」


 どうやら木陰は話を戻すようで「……日向くんは?」と聞かれた。


「俺は修学旅行とか、友だちの家に泊まるとかもやったことあるよ」


「……人の家に泊まる……大人ですね」


 学校行事をサボった方とどっちが大人かと聞かれると、俺からしたら後者の方に思えるが。


「……あ、相手は男の子ですよね?」


 何やらとんでもない気付きをしたかのような声を出したと思ったら、焦りながら聞かれた。


「普通に男だよ」


「……そ、そうですよね。……安心です」


 と安堵した表情だったが「……はぁ修学旅行、泊まりですもんね」と出た声色には不安の気持ちが混じっていた。

 初めて誰かと泊まるのなら、不安になるのも仕方ないのだろう。


「誰と一緒の部屋にするかも、俺たちで決めれらるって聞いたけど」


 これも上級生から回ってきた情報だ。


「……本当ですか!?」


「高校生なら自分たちで、っていうのが校風だし」


 俺が伝聞の伝聞であるがこの高校なら事実なのだろうと思う理由がこれだった。


「……へぇ、そうなんですね……知りませんでした」


 学校で度々聞くが意識してないと聞き流すものなのだろうな。


「……とにかく、私は見知った美冬ちゃんと同じ部屋にすれば良いんですね」


 と堂々とした表情になっていた。


「……まぁただ、美冬ちゃんに女子力を見せつけられそうです」


「女子力は木陰の方が高いんじゃない?」


「……日向くん、男の子から見た女子力と女の子から見た女子力は違ううんですよ!」


 ハッキリ言い切る木陰に気圧される。そこまで言うなら事実としてあるのだろう。


「……でも、これで不安なものは無くなりましたよ」


 泊まる事に持っていた不安は解消できたらしく晴れやかに見える。


「……せっかくの修学旅行ですからね。……いろいろ見ましょう! ……美冬ちゃんたちの行きたい場所も全部行きましょう!」


「全部か。よし全部行こう」


「……楽しみですね、そしたらもう一日中観光ですからね」


「あ」


 盛り上がってきたところに水を差してしまうが、重要な事に気付いてしまった。


「……どうかしましたか?」


 そんな俺を浮かれた木陰が見つめながら聞く。


「木陰ってさ、体力に自身ある?」


「……えーと、盛って人並み以下ですね、、、」


 人並み以下か。そうなるとマズい事になるな。


「実は秋と前田さん二人で歩くと超足速いんだよ」


「……そうなんですか?」


「うん、かなり。俺でもそう思うから」


 事実、朝の登校の際に俺も驚かされた。一年近く登校していると慣れたが。


「……でも日向くんと美冬ちゃんと一緒に歩きましたけど『速くて追いつけない』とか思ったことありませんよ?」


「あのときは木陰に合わせてるからかな。普段はそれよりちょっと速い」


「……なるほど」


「ただ、それでも俺は二人より遅い」


「……それじゃあ私って歩くの……?」


「正直、かなり遅めかな」


 別にそれで特に何もなかったが、今回は違う。


「……日向くん、ずっと合わせてくれてたんですね」と木陰が呟くも話が逸れないようにと、お互い触れずに胸の内に留めた。


「……私が二人のペースに合わせられると思いますか?」


 木陰側の歩く速度で考えると、体感倍ぐらいかもしれない。


「木陰の体力次第かな……?」


「……自信無いですね、そもそも一日中歩き回るのも…………」


「……どうしましょう? ……もう連絡しちゃってますよ」



ゲームOPも公開されているので是非……!


https://youtu.be/u4ea5lB_NWA?si=3iWJqXiDsWgYv8kV


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