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テスト後

 

「よーし、これで中間テストは全部返ってきたな」


 午後の授業も終えてHRで青木先生が確認をしながら話しを進める。高校2年最初のテストが終わり、クラスの雰囲気もうわついている。それにはもう一つの理由があった。


「お前たち次は修学旅行だからって浮かれるなよ」


 そう、テストが終わり次に俺たちを待っているのは修学旅行だ。


「明日修学旅行の組分け決めるから」


 修学旅行前の一大行事でもある班決めに、クラス中は近くの席とざわざわと会話を始めていた。

 そんな騒がしい中で隣の席から話しかけられる。


「ん?」


 隣の席に座って居るのは木陰だ。他の生徒に聞こえない程の小さな声で俺に伝えてくる。


「……久しぶりに一緒に帰りませんか?」


 お互いにとある事から前よりも進んだ関係になったはずだったが、テスト期間が挟まり木陰の家に行けていなかった。

 なので、久しぶりということである。テストも終わったので存分に行けるという訳だ。


「うん」


「……ありがとうございます」


「こら、班決めは明日だぞ」


 木陰と会話を終えたタイミングで先生が生徒に一喝を入れる。騒がしいかったが一言でみんなが会話を辞めHRに戻った。


「日向ー、一緒に帰ろうぜ」


 その後無事にHRを終えて教室を出ようとすると呼び止められた。声の主は秋人だ。


「今日は予定あるから帰ってて」


 先約があるので適当にはぐらかして秋人を撒こうとする。


「予定って何だよ」


 それだけで食い下がる相手では無く追及が始まった。


「えー、アレだよ、テストのところで分からない場所があったから先生に聞こうかなって」


 良い理由も思いつかず、とっさにテストの事を理由に出す。自分でもかなり無理な気がしているなか背中に冷たい汗が流れる。


「そんな偉い人間だったか。分かった、先帰るか。また明日」


 どうやら、今回は上手く行ったみたいだ。秋人は美冬と一緒に俺に別れの挨拶して教室を出ていく。


「あぁ、また明日」


 二人に返事を返し見送ったところで後ろから話しかけられる。


「……ふふ私優先ですか?」


 どこか嬉しそうな声と口調の様子だ。


「木陰の方を先に約束してたからだろ」


「……じゃあ後から誘ったら私は振られてました?」


「ノーコメントで」


 友達の優先順位の話を問いかけられたのが、バツが悪く答えられないと濁す。


「……冗談ですよ」


 いつの間にかそんな冗談を言えるようになったらしい。


「……ありがとうございます」


 俺が木陰を優先したことに対しての感謝なのだろう、そしてそれを伝えて木陰の方は会話を切り上げるのかカバンを背負い直した。


「……ではバレないように学校を出ていつもの場所に集合しましょう」


 これ以上話していると他の人の目に付くということだろう。木陰が踵を返して歩き始める。


「……日向くん、また後で」


 そんな言葉が微かに聞こえ、返す間も無く廊下を歩いて行った。


 ◇◆◇◆◇◆


「あ、来てくれましたね」


 先に待ち合わせ場所に付いていた木陰が俺を先に見つけ話しかてきた。


「……それでは一緒に帰りましょうか」


 俺の隣に肩を並べて歩き始める。少し期間が空いただけなのにやっとという気持ちになる。


「……その……久しぶりですね」


 どうやら木陰の方も同じような事を思っていたらしい。

 テスト期間の間はお互いに勉強を邪魔しないようにと、話し合った訳ではないが何となく空けていた。


「テスト期間とかで時間合わなかったからな」


「……日向くんから誘ってくれても良かったんですよ?」


 心臓が速くなるような事を言ってくる。隠しごとは無しなので何を考えていたか伝える。


「勉強の邪魔になるかなって」


「……ですよね……私もどうしていいのか」


 木陰の方も同じ理由だったらしい。


「……でもこれで気兼ねなく誘えますよ」


 テストが終わり、しばらくはお互いな自由の身だ。木陰から誘ってもらっているのが殆どでこちらからは誘えていない。

 こちらから誘っても問題ないという確証はあるので今度何か誘おう。


「……なので、日向くんからも誘って下さいね」


 見透かされているように、木陰が俺の目を見つめて言う。


「そうだな。何か考えとくよ」


「……はい、遠慮せず誘って下さいね」


「そうだな。遠慮はいらないからな」


「……ふふっ……何故でしょう? ……私は覚えてないですけどね!」


 あくまでも何故、遠慮をしなくてよくなったは触れない。ただその事実があれば問題ないだろう。


「……さて、今日何か食べたいものとかあります?」


 そんな話題を飛ばすように今日のご飯の話になる。


「うーん、思いつかないな」


 何か言おうと考えてはみたものの、特別料理に詳しい訳でもない自分にはパッと食べたいものが出せなかった。


「……じゃあ、私と今から買い物に付き合ってもらえません?」


 木陰と一緒に見回って献立を決めるという事だろう。それなら詳しくないにしても案は出せるかもしれない


「……帰り道にちょうどスーパーありますし」


「いいね、一緒に見よう。それで木陰も案を出してくれると助かるよ」


「……はい!」


 ◇◆◇◆◇◆


 帰り道の商店の並んだ道にあるスーパーに二人で立ち寄る。木陰が買い物カゴを持って前を歩いているのを後ろからついて行っていた。


「……あ、日向くん。……パプリカありますよ?」


 商品棚に山のように並べられていたカラフルな宿敵を指差している。その様子はどこか楽しそうたま。


「カラフルなだけのピーマンだろ」


「……ピーマンほど苦くはないですけどね」


 パプリカも食わず嫌いしている俺にとっては驚きの情報だ。


「いや、俺にはピーマンの顔つきに見える。騙されないからな」


「……なんですかそれ」


 異様に警戒する俺が面白いのか話の最中に吹き出してしまったようだ。


 それから店内を歩いていると木陰が鮮魚コーナーで足を止めた。


「……今日の料理ですが……旬の魚料理にしようと思うんですが魚大丈夫ですか?」


 作ってもらった料理の中に魚は無かった気がするので被らないように選んでくれたのだろう。それでいて苦手では無いかの確認までしてくれていた。


「魚は平気だよ」


「……じゃあ魚料理にしますね」


 パックに入った魚たちを手に取り考え込んでいる様子だったが、一つのものを手に持ったまま固まった。


「……そうですね……献立ですけど……カレイの煮付けをメインにしても良いです?」


「煮付けか美味しそうだ。それで頼むよ」


「久しぶりに作りますけど頑張ります」


 実際、前に自信があまりないと言っていたコロッケも木陰の手作りは肉屋に負けないどころか、俺の木陰補正を入れることで勝っていたと言えるレベルだった。

 なので木陰が作るものなら何でも美味しいのだろうと思ってしまっている。


「……楽しみにしててください!」


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