元気な挨拶と恥ずかし気持ち
後書きにタイトル変更の報告があります
陽に当てられるなか心地よく目が覚めた。
「……うん? 私は……?」
目を擦りながら寝る前の記憶を探る。
「……そうだ。……日向くんに……」
時間の確認ついでスマホを確認するとメールの通知が来ていた。
「……ちゃんとしてくれたんだ」
戸締まりのお願いとその鍵をポストに入れたという報告が来ていた。
寝ぼけた頭でどう返信するか悩んでいるうちに目も頭も冴えてくる。
「…………ん……まって……」
何かとんでもないものが頭によぎる。
「…………一旦……深呼吸しよう」
自分の疑念を確かめるために深呼吸をして記憶を辿る。
「……ッ〜〜〜!?」
そして思い出される昨日の記憶。
自分の行いを思い出して頭まで布団に包まる。
(お姫様抱っこに………………手を繋いで……頭まで)
「────ッ〜〜」
(と、とんでもないことをやってしまった……)
冷静になって過去の自分を客観視すると羞恥心が自分の心を包み込む。
「……わがまま過ぎたよね」
熱があるとは言え度の過ぎた事を沢山してしまった気がする。気がすると言うより確実に度が過ぎている。
「……ま、まあ日向くんと良い関係になれましたし」
恥ずかしい気持ちも大きいがそれよりも喜ぶべきことも多い。
心を落ち着かせるために自分に言い聞かせる。
「……流石にやり過ぎたかな」
どこか冷静な自分が自分の行いを咎めてくる。天使と悪魔に囲まれているように自分の思考が良い方向と悪い方向に反復する。
「……いやいや、一旦は全力で喜ぶべきでしょ」
そして一つの結論で一旦気持ちを抑える事に決めた。
「……そう、私は全力で喜ぶべき」
だって日向くんに看病してもらって、お姫様抱っこしてもらって、手を繋いで寝るまで頭を撫でてもらった。これを喜ばない方が日向くんに対して失礼でしょ。
さらには今の関係よりも前に進んだ。
「……ありがとうございます、神様、日向くん」
「…………幸せってこういうものなんだろうな」
体調はまだ少し悪い。
でも身体の奥底から力が湧いてくる。これが幸せの力と噛みしめる。
「……よし、頑張ろう!」
意気込んで自分のすべき事に目を向ける。
「……まずは日向くんと美冬ちゃんから貰ったメールに返信して……」
また時間を確認しても7時にすら届いてない。
「……流石に朝早いよね」
普段の私なら起きてるけど二人は寝てるかもしれないし、それに朝早くのメール受け取るのはなと尻込みする。
(私なら朝のメールも嬉しいけど)
「……学校にも休みの連絡しないとなあ」
看病してもらって体調が前より良くなったとはいえ病人は病人。まだ学校に行くのは早い。
しかしもう学校に行ったときのことを考えてしまう。
「……はぁ……日向くんにどんな顔して会えばいいのかな」
こんな事にをしてもらった後に会わす顔、少なくとも自分は持ち合わせいない。
「……ありのままの良いんだろうな……日向くんなら」
そう、日向くんなら受け入れてくれるだろう。
「……うん、早く体調を良くして日向くんたちに元気な顔を見せよう」
そう心に決める。
少し時間が経ってから学校に連絡を入れ、メールを返してから眠りに就いた。
◆◇◆◇◆◇
看病してもらってから数日が経った。そして今日から学校に行ける。
そう、私は学校を楽しみにしてるはず。はずなのに。
「……ふぅ」
玄関の扉の前でかれこれ数十分は尻込みしている。
「……日向くんに会おう! 日向くんに……会う!」
覚悟を口に出して心に言い聞かせる。
「……」
しかし扉に手がかかったまま動かない。
「……今日の玄関のドアは重いなあ」
そうこの扉は今日急に重くなったのだ。いや、体調不良で扉が重く感じているだけかもしれない。
そしてこれが日向くんに会うための神様からの試練なのかもしれない。
「……って何を考えてるの、そんな気持ちで日向くんの彼女になれないでしょ」
冷静な自分がツッコミを入れる。
「……まずは元気に挨拶!」
自分のすることを口に出して心理的なハードルを下げる。
「……そして今日の学校で日向くんを家に誘う!」
お礼のために日向くんを家に誘う。そして二人の時間を楽しむ、
「……ふー、よし」
重い扉にもう一度手を掛ける。そして思いっきり扉を押す。
外の眩しい光が私を照らす。
「……行ってきます!」
◆◇◆◇◆◇
玄関でたじろぐ時間はあったものの遅刻にならない程度で学校に着いた。
(この時間ならもう日向くんたちは登校してきてるはず……)
深呼吸をして覚悟を決めて教室の扉を開く。
扉を開けた音で教室の注目が私に集まる。久しぶりの登校というのもありさらに注目されている気がする。
(むぅ、日向くん……私を見て一瞬で目線外しましたね)
そんなことを気にしている暇はない。それに後で日向くんを見つめれば良い。
今日は時間が無いので急いで自分の席に、日向くんたちの近くに向かう。
「……おはようございます」
「おはよう。木陰ちゃん」
「もう体調は良くなったの?」
「……はい、無事元気になりました」
「良かった。木陰ちゃんが居なくて寂しかった〜〜」
「……ありがとうございます。……私も美冬ちゃんに会えて嬉しいです」
私を待ってもらえている、そんな体験がなかった私にはそれが嬉しく浸ってしまう。
「あ、先生来ちゃったね」
私がギリギリに登校したので青木先生が朝のHRために教室に入ってくる。それで後ろを向いて話していた美冬ちゃんの姿勢が前に向く。
しかし、私の心は浮足立ったままでいる。
でも今はそんな場合ではないと自分に言い聞かせて本来の目的に気持ちを戻す。
「……おはようございます。……成田くん」
そう、学校において私と日向くんの距離感はこれだ。
これから少しずつ私が学校でも日向くんと話せるように変わっていこう。
だから今回は最後まで日向くんに目を合わせて元気に挨拶をする。
日向くんと目が合う。合わす顔がどれが良いか分からない。でも少しずつ変わるそう決めた。その一歩だ。
「おはよう、暗野さん」
「体調良くなったんだね」
看病してもらった時のことを思い出して顔が赤くなる。それでも日向くんから目を離さない。変わるために。
「……はい、おかげ様で」
返事の後半は日向くんにしか聞こえないように意図的に音量を調節して返事する。誰にも私と日向くんの関係がバレないように。
「良かった」
「……はい、ありがとうございます」
そしてもう一つの目的だったものを日向くん告げる。
「……日向くん、先日のお礼がしたいので今日の放課後は会えますか?」
私と日向くんの二人にしか聞こえないように小声で。
初めて学校で呼ぶファーストネームに心臓の音が速くなる。顔もさっきより赤くなってるだろう。んな私を日向くんは目を離さず見ている。
でもこれぐらい積極的な事をしても良いと思う。だってもう日向くんの気持ちも分かっているから。
「うん、放課後に。木陰」
日向くんからのカウンターに私も目を見張る。でも他の人にバレないように表情をすぐに隠す。
「……はい、では放課後にいつもの場所で」
私たちはまた放課後に二人だけの約束をした。
◆◇◆◇◆◇
根暗なクラスメイトの胸を間違って揉んだら、いつの間にか胃袋を掴まれていました!
のタイトルが変更となります。
この作品が世に出て行くにあたり前のタイトルでは……ということがあり変更となりました。
旧タイトルで馴染んでくれている方々、いつもありがとうございます。
これからもこの根クラを楽しみ待っていただけると嬉しいです!