出会い
根クラHP
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本作が第二回キネティックノベル大賞にて『大賞』をいただきました!
株式会社エンターグラム様よりゲーム化決定!
2025年4/24日に発売予定です!
桜が芽吹き始めた新学期。
俺、成田日向は高校二年生としての初めて登校していた。
「おーい、日向こっちこっち」
そう呼び掛けるのは高校一年生の頃の同級生であり、親友とも呼べる斉藤秋人だ。
ちなみに秋人はメガネを掛けているが、相当なイケメンと噂されている。
「先に着いてたのか。悪いな待たせて」
「別にそんなに待ってないぞ。さっさと学校行こうぜ」
お互いに家が近く、徒歩で学校に通えるということもあり一年の頃から待ち合わせして登校していた。
「なあ、秋。俺たちまた同じクラスになれんのかな?」
秋とは斉藤秋人のニックネームだ。
ただ、本人は女っぽくあまり気に入っていないらしいが、何故か俺だけはその呼び方を許されている。
「そらもう、一緒になるだろ」
自信に満ちながら秋人は答えた。
「なんで言い切れるんだ?」
「お前と初詣行ったときのおみくじに書いてたから」
「んな、適当な」
そんなたわいもない会話をしながら学校を目指して歩いていく。
「なあ、俺たちもう高校二年になるんだぜ? そらもう運命の出会いの一つや二つあってもいいよな?」
秋人の方が呟く。
確かに俺たちは高校二年になる。
「俺もお前の意見に賛成だが、お前に言われるは腹が立つ」
「ええ、なんでだよ」
こう言ってるが、秋人はモテる。
それも本人は鈍感だからあまり気づいていない。これが尚更俺の嫉妬を掻き立てた。
「おーい! あんたたちやっぱり仲良いわよね」
そんな声が聞こえたと同時に秋人の背中をスクールバッグが痛打した。
「痛たっ」
振り返るとそこには可憐な美人が居た。
秋人の幼なじみで、一年の頃同じクラスだった黒髪ポニーテールが特徴の前田美冬だ。
「なんだ美冬。お前も今登校なのか?」
秋人が尋ねた。
「そうよ」
「前田おはよう。相変わらず夫婦の仲は良いみたいだな」
俺がそう言うと前田美冬は少し照れた顔を見せた。
早い話、美冬は秋人に惚れているのだ。
「日向もおはよう……」
照れながら答える美冬に秋人が割って入った。
「夫婦じゃねえよ! 誰がこんな暴力女と付き合うか!」
必死な顔色で訴える秋人をみるのはこれで何回目だろうか。
「ひどい……」
と、美冬はいつも通り悲劇のヒロインを演じている。
「おら夫婦。遅刻しないように速く行こうぜ」
「おう」
「はーい」
返事を聞き、今度は三人で学校を目指し歩き始めた。
◇◆◇◆◇◆
「うお、マジで三人一緒のクラスじゃん」
秋人が貼り出されたクラス分けの紙を見て言う。
「マジ? 俺これからおみくじ信じるわ」
「何よ、おみくじって」
初詣は俺と秋人だけで参拝しに行ったので美冬には分からないだろう。
「でも、また三人で一緒のクラスになれて良かったわね」
「そうだな」
「んーまあ確かに。後はクラスにマドンナが居れば完璧なんだがな」
今ここに美冬という存在が居るにも関わらず、そんなことを言える秋人にある意味尊敬を抱く。
それと同時に腹部にスクールバッグが強襲した。
「ヒグゥ」と謎の声が聞こえた。
「そーいや、お前おみくじどんなんだっけ?」
腹部を抑え、プルプルと震えながら立つ秋人が聞いてきた。
「んー、思い出せねえ。なんだっけな」
必死に記憶を探るが思い出せない。
「ああ、たしか財布に入れてるハズ」
そう言って俺は財布を取り出した。
俺のおみくじにさぞ関心があるのか、秋人と美冬も覗き込むように俺の手元を確認している。
カード入れに隠すよう入れてあったおみくじを確認する。
「うわー、ドンマイ」
「あちゃー、気を付けなさいね」
そんな二人の言葉が心に突き刺さる。
俺の今年の運勢は大凶らしい。
◇◆◇◆◇◆
2年B組それが俺たちの新しい教室だ。
そんな教室に大きな笑い声が響いている。
俺たち三人は適当に席に座り駄弁っていた。
「お前日向、これから一年中足元気を付けろよー?」
わざわざウザい顔で秋人は俺を煽ってくる。
おみくじを開いて以来、ずっとこんな調子で来ている。
「言われなくても気を付けるわ! 逆にお前は背中でも注意した方が良いんじゃないか?」
新年の俺がコイツにおみくじを見せていない訳を遅くながら理解する。
それに厳重に仕舞われたおみくじにも納得がいっていた。
「俺が? 背中をなんで?」
「そら、刃物でザクッと逝かれないようにだな」
「なんで刃物の話が出てくんだよ」
どうやら本当に秋人は分かってないらしい。鈍感過ぎるのも大概にしてほしいものだ。
「確かに日向の言う通りね」
美冬の方は分かっているらしく、俺の意見に賛同していた。
「なんかよく分かんねえけど気を付けるわ」
肝心なところが分かっていない時点で、気を付けれるのか甚だ疑問だが。
「そうだ、日向お前このクラスに可愛い奴居るか?」
そう言って秋人はクラスを見回す。
案の定と言うか、さっそく秋人の背中が危険に晒されようとしている。
少しは背後から感じる美冬の冷気を感じて欲しいものだ。
「んー、まだよく分からん」
「そうだよなあ」
「ハイハイ! 私、結構自信あるよ!」
割って入って来たのは美冬だ。
美冬と言う名前の割に活発的の彼女は、自分から可愛い奴に立候補してきた。
確かに前田美冬は学年の中でもかなり上位に位置するぐらいの可愛さだ。
「これは男の話だ。ボーイズトークだ。美冬は入って来るなよ」
冷たく突き放す秋人。
美冬の可愛さも鈍感過ぎる秋人の前じゃ意味を成さないみたいだ。
「秋、お前ここに前田が居るんだから、そんな話は後でいいだろ」
俺は椅子の前足を浮かしながら話す。
「それもそうだな」
すると秋人が俺の浮かせた椅子に気づく。
「お前、少しは足元気を付けた方が良いんじゃないか?」
ニヤニヤと笑いながら言う秋人に、「お前も少しは背中気を付けた方が良いんじゃないか?」と返すのはなんとか控えておいた。
「バカ野郎、お前椅子浮かし歴15年の匠の技舐めんな。こんなの大凶だろうが朝飯前だ」
意地を張って返す。
ニヤケ顔で煽る秋人への対抗心だ。
そんな対抗心からか、いつも以上に椅子の前足を上げてしまう。
それが大きな過ちだった。
案の定俺はバランスを崩してしまう。
とっさに藁にもすがる思いで手を振り回す。
そんな振り回した手に何か当たった。
椅子から転げ落ちないために、その手に当たった何かを必死に握りしめる。
ムニュッと、とても柔らかく触ったことのない感触が手のひら全体を覆った。
それでも勢い止まらず、椅子から落ちていく刹那、俺の目に何を触ったのか飛び込んでくる。
それは──女の子の胸だった。
ガタンッと強く床に身体を打ち付けた。
それと同時にさっき胸を触った女の子のパンツまで目に入ってしまった。
(白色……)
そんなことを思った刹那、自分の過ちを全て理解する。
頭を抱える親友の秋人。
おみくじの大凶はどうやら間違っていなかったらしい。
どうやら俺は史上最低の新学期をスタートさせてしまった。
そして、これが俺のこれからの人生を大きく変える暗野木陰との出会いだった。
◇◆◇◆◇◆
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