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日常は珈琲の香りがする。  作者: 池田ケイ
1/2

Part1 喫茶ベリーザ

寒い日の帰り道の珈琲ってほんと美味しいですよね。

バイト帰りの寒い日の夜。吐く息が白くなってくる季節。いつも通りの帰り道。変わった事なんてひとつもない。でもその繰り返す日々が嫌いじゃない。


珈琲の匂いがする。こんな所に喫茶店なんてあったのか。お金がない訳でもない。

「カランカラン」

「いらっしゃいませ。」

古い店構えの割に店員さんが若い。少し驚いた。

「ブラックコーヒーを1つ」

「かしこまりました。お会計は350円になります。」


初めて来たがかなり落ち着く。店内に広がる珈琲の匂い。豆を煎る音。レトロな店内の雰囲気。俺の肌にあっている。

「お待たせ致しました。ブラックコーヒーです。」


「割と酸味が効いているのな。」

「はい。キリマンジャロを使ってますので。焙煎度合いによって味が変わるんですよ。今回は浅煎りなので酸味の効いたサッパリした味になってると思います。深煎りするとキリマンジャロ本来の甘い香りがしてキャラメルのような風味になるんです。」

「へえ。奥が深いですね。」


「カランカラン」

「ありがとうございました!」


今度は深煎り頼もう。

「あれ、佐野くん、…だよね?」

「ん?…って江中!?こんな時間に何やってんだ?」

「散歩だよ。ここに引っ越してから間もないからさ。佐野くんはバイト帰り?」

「そうだよ。さっきまで喫茶店いたけど。」

「喫茶店ってベリーザの事?」

「そうそう喫茶ベリーザってとこ。あれ、なんで知ってんだ?」

「私も引っ越した初日に行ったんだ。あそこのコロンビア美味しいんだよね。」

「へえそうなんだ。……江中って珈琲飲めんだな。」

「佐野くん私のこと馬鹿にしてるね。私もう成人してるんだよ!」

「それぐらい知ってるさ。そもそも同い年だろ俺ら。」


江中は高校の時の同級生だ。あいつも俺と同じく京都に引っ越してきたようだ。


「そういえばお前今なんの職に就いてんだ?」

「私は教師やってるよ。」

「き、教師!?……まあそうか。お前頭良かったもんな。」

「そういう佐野くんはどうなの?大学はデザイン系のとこ行ってたみたいだけど。」

「書店でバイトしてる。デザインとは接点無いけどな。」

「そんなことないよ!日常生活の中はデザインで溢れかえっているのじゃぞ。」

「教授みたいなこと言うなよ。」

「あはは、ごめんごめん。あ、帰ってきちゃった!」

「は?お前ここに住んでんの!?」

「そうだよ…。どしたの?」

「……いや、なんでもない。」



「ありがとね。送ってくれて。…じゃあバイト頑張って!」

「おう。じゃあな。」

そう言って彼女は帰っていった。




「いや…どんだけ近いんだよ家。」

まさか江中が住んでるアパートの隣に自分が住んでいたとは。あいつもちゃんと地に足つけて就職してるもんな…。それに比べて俺は…。


「なんとかして仕上げよう。今週のうちに。」

そう呟いて俺は自室に戻った。



◎1週間後 喫茶ベリーザにて

「あぁぁー!ネタが思いつかん!」

「どうしたんですか、急に大声だして」

「漫画の次の展開が思いつかんのだ。」

「へえ!漫画描いてるんですね!僕にも読ませてくださいよ!」

「ああ、いいぞ。」

1週間たった今ベリーザの若店員とかなり仲良くなった。まあここ1週間毎日通ってたからってのが理由だろうけど。


「うーん。なんかパンチが効いてない気がしますね。」

「そうなんだよ。あともう一押しがないっつーか。」

「カランカラン」

「いらっしゃいま……って美雪ちゃん!久しぶりだね!」

「…久しぶり。」

そう言うと彼女は2階に上がって行った。


「…さっきのって誰なんだ?」

「えっとね、この店のオーナーのお兄さんの孫です。藤野美雪って名前ですよ。」

「へえ。複雑だな。」

「あんまり美雪ちゃんここ来ないからレアだよ。」

「まあ、もう2階行ったけどな。…あ、珈琲もう一杯貰えるか?」

「種類はどうするんです?」

「……コロンビアで。」

「かしこまりました。お代は430円になります」


「はあ、今週中は厳しいかなあ。」

そろそろバイトの時間だ。



◎バイト先 書店にて

古めの風貌という事もあってかうちの書店にはあまり人が来ない。ぶっちゃけ暇だ。でも今日はそんなことも無く。

「ガラガラガラ」

「いらっしゃいませ……あれ、なんか見たことあるな。」

「………」

「…はっ!藤野さん?」

「へ!?あ、なん、なんですか?」

「あっ、ごめん急に呼んじゃって。」

「………あ!この間のお客さん?ですよ…ね?」

「そっそうだよ。…藤野さんって本好きなんだ。この店知ってるって事はかなりの…。」

「……佐野さんも本好きなんですか?」

「え?なんで俺の名前を?」

「あ、その……名札を…みて。急にごめんなさい…。」

「いや全然いいよ。気にしなくて。俺も本好きだよ。」

「じゃあ…お、おすすめの小説教えてくれませんか?」

「おう。いいぞ。そういうことなら……ゴソゴソ」

ダンボール箱に入っている本を取り出す。


「<未来少年日記>なんてどうかな?最近流行りの山田先生が書いてる。他にも<枯れ草の記憶>とか……。」

「あ…山田先生の作品良いですよね!私デビュー作の<後悔は大切な参考書>しか読んでませんが……。」

「あ!あれね、主人公が3食カロリーメイトばっかり食っててね。あの奇抜な設定が良いんだよな。」

「わ、わかります!でも時々くるシリアスな展開がまた良くて…、さっきの2冊…買います。佐野さんありがとうございました。」

「全然いいって。それとはい。これはおまけ。」

おまけと言って差し出したのは本1冊無料券。この店独自のものだ。本来なら5冊以上買わないと貰えないんだけど今回は特別って事で。


「え?いいんですか?」

「いいよ。俺が喋ってて楽しかったし。」

「……じゃあまたベリーザ来てください!本の話しましょう!」

「おう!」



◎自室にて

バイトの帰り道にある自販機でブラックコーヒーを買った。

「今日も描くぞぉぉー!」


この日買ったブラックコーヒーは何故か少し甘いように感じた。






池田ケイです。一人一人の心情を丁寧に描いていけたらなと思い作っています。良ければコメント等よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ちょっと時系列がごっちゃになってて 分かりにくい、かな?
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