瀾(一二)
「中に人間は?」
「おっちゃん」が死神にそう聞いた。
「居ない……遠隔操作のようだ」
つまり……「国防戦機」の操縦者を……判り易い言い方をすれば「呪殺」する事で「国防戦機」を停止させるのは不可能だ。
「科学技術」の時代である「近代」と、「魔法」の時代である「中世」が、この1つの世界に重なって存在する状態。
それが私達の世代にとっての「あたりまえ」であると同時に……「おっちゃん」達の世代にとっては「自分達が若い頃とは、世界が全く違ったモノと化してしまった」状態だ。
大半の攻撃「魔法」は生物や霊体に特化している為、戦闘用のパワーローダーや車両には傷1つ付ける事さえ困難だ。
一方、どんな装甲やセキュリティ設備に守られていようと、「魔法」は「魔法」か……さもなくば「魔法に似て非なる、魔法を超えた『神』の力」でしか防げない。
言うなれば、「魔法」と「科学技術」は互いが互いを苦手としている。
しかし、年々状況は変っていく。
「魔法」による攻撃が対・生物または対・霊体に特化しているなら……「魔法使い」と戦いになるなら「生きた人間」を前線に出さなければ良い。
ここ数年、少しづつだが、戦闘用のパワーローダーや車両を持っている犯罪組織は、それらを遠隔操作式に改造する事が多くなっているらしい。
「……決着まで時間がかかりそうだな……。下手したら、負けるのは、銃弾や動力が先に切れた方になるか……」
「な……なんて言うか……地味な喧嘩だな……」
銃弾が飛び交い、周囲の建物にも損害が出まくってる最中なのに、呑気な感想を言ったのは、レンジャー隊の副隊長。
熊本の「龍虎興業」は、この抗争に4m級戦闘用パワーローダー「国防戦機」を投入して来た。
苹采姉さん言う所の「ガ○ダムとジオ○グとス○ーム・トルー○ーとス○ープ・○ッグの死体を繋ぎ合せて作られた、誰にも望まずに生まて来た、哀れなフランケンシュタインの怪物」だ。
と言っても、出て来る固有名詞の多くは、私にとっては意味不明なので「『昔のアニメのロボットに似せろ』と云う無茶な注文に下手に忠実であろうとした結果、その注文を出したヤツが望んでたのから懸け離れた、何だか良く判んない不恰好な外見になってしまった」以外は良く判らないが。
一方、私達「御当地ヒーロー」側は、武装ブルドーザーで迎え撃つ。
もちろん、単純な火力では「国防戦機」が有利。
しかし、実は「国防戦機」は……操縦者が素人でもそこそこの働きが出来るように、操縦者の動きを忠実にトレースするのではなく、AIにより補正を行なっている。
例えば射撃にはAIによる補正で、操縦者の動きを忠実に再現するより、命中率が上がる……が、そこに落とし穴が有る。
一〇年前……旧政府が富士山の噴火で壊滅して以降、「国防戦機」の制御AIはバージョンアップされていない。当然だ。「国防戦機」は旧政府が作った「もう1つの自衛隊」である「特務憲兵隊」の兵器なのだから、発注元が消えてなくなった以上、製造元が制御ソフトをメンテナンスする訳が無い。
一方で、一〇年も有れば、制御AIの「癖」など解析出来る。
武装ブルドーザーは、「国防戦機」の制御AIの「癖」「バグ」を突く事で、自分の側の被弾は最小限に、相手側の被弾は最大限にしている。……が火力そのものは、向うが上なので、どうしても「小さなダメージを積み上げていく」しか無い。
「ところで……お前……」
私に話しかけてきた人が居た。レンジャー隊のパワー型……早い話が桜さんだ……。
「身元は明かせません。ですので、私の正体だと思ってる人物の名前を大声で言ったりしないで下さい」
「お……おい……。待て……」
この人もややこしい立場になったようだ……。「御当地ヒーロー」の取り締まりが仕事なのに、育ての親の実の娘が「御当地ヒーロー」なのだから。
さて……ここから無事に帰れたら……家で、どう説明するか……。




