ザッピング
きょうもネットの世界には新しい小説が溢れている。
テレビのチャンネルを変えるように、
少しずつ読んでは、興がのらなければ次の小説へと流れていく。
---ピッ---
<ゲーム世界チャンネル>
「右からワカメ魔人3体!あと30秒くらいで接敵します!」
よりにもよってワカメ魔人とはツイてない。
仲間を呼ぶ、斬ると分身する、斬らなくても時間経過で増殖する。面倒で厄介な敵だ。
無限に戦闘させられる徒労感から、ついたあだ名が増えるワカメちゃん。
その上、ドロップ品も渋い。
---ピッ---
<俺TUEE系チャンネル>
体力も魔力も各種スキルもカンストで転生した俺は、やる気だけがゼロ。
面倒なことはしたくなくて、ただ平穏に暮らしたいだけなのに、
俺様が強すぎたり魅力的すぎるせいで、いつもトラブルに巻き込まれて困ってるんだ。
ちなみに、周りの女の子たちは、みんな俺のことが好きでたまらない。
そして、口癖は「やれやれ」だ。
どんな理不尽やご都合主義も「俺さんだから……」って糞寒いセリフで許容されちまう。
あぁ、普通がいいのになー。強くてモテちゃって困っちゃうなー。
---ピッ---
<異世界の扉チャンネル>
授業中、落とした消しゴムを拾うために机の下へ潜った。
床から視線をあげたら、見慣れた教室はなく鬱蒼とした森。
四つん這いのまま頭上を見上げると、あるはずの机もない。
拾い上げたときはリノリウムだった床も気が付けば地面になっている。
「なんだ……これ」
---ピッ---
<選ばれし一般人チャンネル>
私の名前は〇〇。ごく普通の〇〇生!
ひょんなことから、ハイスペック超人たちの群れに飛び込むことになったの!
これから私、どうなっちゃうの~?
「〇〇は、普通なところが魅力的だよ」
「君には君だけの魅力がある」
「そのままのキミが好きなんだ」
「変わらなくていいよ。むしろ、変わらないで欲しい」
「無理をする必要はないんだ」
ハイスペック超人たちに、
薄い理由で何やかんやチヤホヤされる夢のような生活がはじまった!
私自身のことも、周りはハイスペック超人たちと同格に扱ってくれるようになったし、
こんな楽しい日々が続くといいなー
---ピッ---
さて……次は、どんなお話を読もうかな。