Go for it!
不殺の信念は貫き通す。できうる限り、ではあるが。
それでも敵の戦意を完全に挫く、あるいは到底適わぬ、と思わせねばならない。さらにはこの紐育で活動ができぬようほかの地域に移る気にさせる必要があった。
想像していたより敵の規模は小さかった。新撰組もまた小規模集団。つねに大きな組織を相手に一歩もひけを取らなかった戦闘集団だ。同じような規模ならお手のものだ。完全に縄張り範囲外の状況であってしても闘志を湧かせるのだからあいかわらずだ。
伊庭と田村をのぞく全員が参加することになった。スー族の戦士たち、銃者のフランクそして狙撃手のスタンリーも。
伊庭ですら参加したがったが、義手技工士のウイリーが最速で製作してくれている義手がもう間もなくできあがる。この翌日にはウイリーの居宅に移り、義手の装着、その後に訓練を行うことになっていた。ベルビュー病院にいるキャスの実兄テディの診察も必要だ。
伊庭の信奉者であり弟分である田村が付き添うこととなった。
「八郎、おまえは自身の掌のことだけ考えてりゃいい。このつぎにはしっかり協力してもらうからよ」
土方がいった。多くはいらない。それだけで伊庭は救われた気がした。
このつぎというのはもしかすると日の本からやってきている公卿の岩倉ら使節団との遣り合いかもしれぬのだ。それならいまはしっかり掌のことに集中しつぎに備えればいい。弟分の田村には人質奪還作戦に参加するよう再三促した。だが、田村は頑なに伊庭に付いているといってきこうとしなかった。ありがたくて不覚にも双眸に涙が滲んだ。
異国の地で独り異国人に囲まれ慣れぬ生活や行動をすることはさしもの「隻腕の剣士」でも不安ばかりで参ってしまいそうだ。信頼できる弟分が隣にいてくれればどんなことでも頑張れる。
「幸運を、八郎」「ご武運を、副長」
土方は伊庭と抱擁を交わし、互いの健闘を祈った。
翌日、伊庭と田村は街に出立した。




