Ⅱ 硫酸パレード
「オラアアアア」
懲りない馬鹿にムカついた。
液が自分にかからないよう注意しつつ、バケツを二人の野郎に投げつける。
液体を魔法で二つの球体に変化させ、空中に浮かす。
確実に奴等の顔面に当たりそうで当たらない距離までギリギリに近くように操る。
「そんで脅しのつもりか?」
二人は眼前の液越しに、余裕をかましている。
「やーいテスト最下位!」
「これ、硫酸だけどな」
「嘘つけ!!水なんだろ
ぜんぜん怖くねーぞ!」
男がゆっくりとペンを近づける。
ペンが跡形もなく溶けた。
「うわあああああああ」
「ごめんなさいいいい」このオレに恐れをなして二人は逃げた。
「また助けていただいて…ありがとうございました」
女生徒は目に涙を溜めながらオレに感謝する。
「あんな低級野郎、魔法で叩き潰せるだろ」
「アンタと一緒にしないの!」
いてえ…ラヴィーナにデコを指で弾かれた。
「わたし、魔力ないんです」
「テラネスから来たなら普通はそうよね」
そういやテラネスからの留学生には魔法が使えないんだったな。
「魔法の使えない留学生には守ってくれる生徒がつくはずなんだけど…」
あ。そういや最近、学園長にそんなことを言われたような。
「……不思議だな」
気のせいだろう。オレは中庭に走る。
「まさか…!」
ラヴィーナは女生徒をつかんで全速力で追いかけてきた。
オレが捕まるまでラヴィーナは追いかけてくる。
魔力を使い果たさせるのは可哀想だ、降伏してやるか。
「留学生、お前を守る生徒とかいうのは…多分オレだな」
「…はい、一週間前に学園長さんと一緒にあなたを見かけました。けど
忙しそうだったのでお断りしたんです」
一週間前、オレは何をしていたのか、記憶を辿る。
そういや絡んでくる雑魚を、全治一週間まで叩き潰した。ような気がする。
「面倒そうだが、最強のオレが守ってやるよ」
「いいんですか!?」 最強のオレに守られると聞いて、嬉しそうにしている。
「お前の名は?」
「富澤幸です」
「あたしラヴィーナ、よろしくねユキちゃん」
「はい。あの
お二人はいつも一緒にいるんですか?」
予想外の質問に、オレはラヴィーナと顔を見合わせた。
「まっさかーラウルとはただの幼馴染よ、ね!!」
「は?オレのことが好きでついてくるんだろ?」
「ちがーう!」
「照れるなよ」
「…仲いいなあ」