106 マーゼライズ・6大戦
マージルクスに着いた。星へのゲートは球体の下の裏と上の表がある。オレは表を避け裏のある下のゲートに向かった。
「がうが」
ドラ子はなぜ表からいかなかったかとオレに問う。
「それはな―――」
大昔にマージルクスと敵対していたマキュスはドラゴンを祖先としており、その名残からか軍の奴等は竜を狩ろうとするらしい。
血の気の多い奴等なので表だと色々と危険だからだ。ともあれオレはともかくドラ子は連れていけない。
マージルクスの裏の方は地味だが平穏で、糸工場がある。
―――――なにも問題は起きないはずだ。
「大変だああああああ」
なにやら変な液体が、工場から地面に流れてた。
「カセエ=ソーダだあああああ」
どうやらマァゼライズ加工の際に使用する苛性ソーダがこぼれて大変な事態になってしまったようだ。
「だめだコイツ、早くなんとかしないと―――」
苛性ソーダ生成装置を凍らせる。町まで凍らせると雪国になってしまうので出現させた巨大布に溢れたものを吸いとらせる。
怪我人は出現させたア口工を塗りたくりチイユ星へ送った。
「いやーありがとうございます」
「当然のことをしたまでだ気にするな」
「お礼になにかさせてください」
「ならありがたく礼を受けるが金はいらねえよ……そうだな、工場見学してえな」
―――――工場見学ゥ!オレが一日工場長。
マージルクスの製糸工場はヌーノと提携している。紡いだ糸を布にする感じらしい。飽きた。
とりあえずドラ子に光沢のある綿で作られた頭巾とマントをかけて表側へ行く。
「あ、ラウル!」
「ラヴィーナ、なんでお前がここに!?」
「近々、六軍大戦が近いから私も一家で参戦することになったのよ」
六軍<シクリス>大戦、大昔に陸軍、海軍、空軍、十字軍、宇宙軍、魔法軍が戦ったとされる忌まわしき戦<いくさ>だ。
多くの死者を出したがあれのおかげで星々が和解し、今の世界になったらしい。
「ちょっと待てよ……また戦いが起きるだと!?」
「まあ、そんなすぐに起きるわけじゃないわ。準備期間もあるし」
「ってことは戦いが起きるのか!」
「そうね……理由はわからないけど」
「誰だよ戦いを引き起こした奴は!」
《君だよ》
◆
『ねえ、導師様……どうして戦いが起きてしまったの?』
『戦いは起きるものじゃない。神が起こすものだ』
『どうして神様は私たちを戦わせるの?』
『神は人間<ドール>で遊びたいんだ』
―――
―――なんだ……今のは……。
「お前は一体」《そろそろ思い出してもいい頃じゃないか?》
「ラウルどうしたの?」
「ドラ?」
「……?」
《数千年前の記憶を――》
こいつはなにを思い出せと言うんだ。オレにはそんな記憶、あるはずがないんだ。
さっき見たあれはなんなんだ。魔なる者が魅せる幻に違いない。
「なんでもない。たぶん超能力者にでもなったんじゃないか」
「もーなにふざけてんのよ!じゃ、私いくわね」
「ああ……」
軍の戦いが起きた場合、ラヴィーナ達マージルクスやマージン星の陸軍を味方をするわけにはいかない。
ネプテュスおよびアクアルド率いる海軍、ウィラネス率いる空軍。ジュプスおよびテラネスの率いる宇宙軍、ポイゼェン率いる十字軍。そしてヴィサナスは魔法軍だ。
オレはもし戦いが起きたら、ヴィサナス星の味方につくと決めていた。それは今も変わらない。
大戦が始まる前に、学園長を救わなければならない。これまで以上に気を引き締めないとな―――
「いくぞドラ子!」
「どらどら!」
一応テラネスへ行ってツラミルリィを同行させよう。あいつはあれでも一応有能だからな。
◆
「ツラミルリィ、いるか?」
「ぼぼぼっちゃま!?」
ツラミルリィは同様しつつスナック菓子を背にした。
「……六大戦が起きるらしい」
「なんですと……!?」
ツラミルリィが目を見開いて驚いている。
てっきり既に知っていて取り澄ました顔で説明するかと思った。
オレの方が情報を入手するのが一足早かったようだな。
「とにかく学園長が大変でな。エレメンタルクリスタルを集める必要がある」
「学園長さんですか?いったいなにがあったと言うんです」
ツラミルリィにかいつまんで説明する。すぐに理解したようで、一冊の本をとりだした。
「なんだそれは」
「エレメンタルクリスタルとやらについて書かれた世界の心理を知るための本その1です。ちなみにあと5冊あります」
「ふーん」
「ぼっちゃまエレメンタルクリスタルは何個集めました?」
「手持ちは二個だ。あとは宇宙軍の持っていったやつくらいだな……」
「エレメンタルクリスタルはそれぞれ司る女神の化身、男神の化身がいて、つまりラウルぼっちゃまは女神側を、あと別の誰かがもう一方の男神側を集めること。全てが集まるとそれは虹と黒と透明になり第3の存在が願いを叶えにあらわれる。だそうです」
「オレの対の存在……誰なんだ?」
「おそらくは女性かと思われます。ぼっちゃまと似通い等しい力を持った方……私には思いあたりませんが」
血縁者ならレライ、強そうなやつなら月歌やマキナだ。
「オレと似た力と言われても、オレの固有能力がわからないぞ」
なんでも詰め込んだチャンポン麺のごとく、色々と混じりすぎたオレの始めに持っていた本来の力――――
「そういえば、ぼっちゃまはなぜ全属性魔法が使えるのですか?」
「親由来だろ?」
じいさんが魔法使いで、その息子である父から隔世遺伝のごとく継承だったはずだ。
「いえ、そういう意味ではなくなぜ全属性を使えるのでしょう?」
「は?」
使えるもんは使えるからにきまって―――――
「普通は苦手な属性があってもおかしくありませんし、ぼっちゃまのお祖父様も苦手な属性ありましたし……」
「お前、オレの爺さん知ってるのか? どんな奴だった?」
「え?知っているも何も有名な方ですよ」
「誰だよ」
「サンドルマです」
「は?」
「偉大な魔導師サンドルマ=サンドラマです」
「――――なんだと!?」