89 赤と青の翼、炎の女神に水女神~ヤクーザの乱入!
「ひでー目にあった」
普通なら大会中止だぞ。
次のチームを発表されんとするとき――――――
―――――バン!
勢いよく扉が開かれる。
「エレメンタルクリスタルが賞品だってきいて、私も参加にきたわ!!」
―――布をバサリととりさる。
長い黒髪をオリヒメのように結った飛び入り参加者。
「誰だ?」
顔はなんとなく覚えていたが、名前はさっぱりだ。
「シャーレアちゃんだよラウルくん」
「だったら私達も参加するわ!!」
赤毛の女が観戦席から立ち上がった。
「―――マージルクス星のファメラ王女!?」
「飛び入り参加のファメラ&アレクレスvsクリア&シャーレアはじまるぜえええ!」
突然の飛び入り参戦に、会場はわきあがった。
反対にオレは真顔でいる。ちゃっちゃと終わらせてヴィサナスリバーシ見せろ。
「かように獲物がほしいか」
「べつに賞品に興味はないわ、戦いには勝つってだけよ!!」
「私はゴッドに嫌われてますからね……わざと負かすとか平気でやりますからねアイツ」
「ゴッドの力なんてなくてもきっと大丈夫だわ!!」
「黄金林檎の木!!」
―――ファメラがまっさきに攻撃をしかける。王女でもやはり脳筋熱血か、先に攻撃をしかけるのは負けフラグだというのに。
ファメラの技であたりは金ぴか黄金世界になる。
マージルクスなら炎属性使えよ。
「ただ金ぴかになっただけじゃないですか……」
クリアは鼻で笑っている。
「……それはどうかしら――――」
ファメラがニヤリと笑う。
金ぴかの林檎がバラバラと落下、会場は林檎まみれになる。
「これを売ったらボロ儲け間違いなしだ持って帰ろう」
イレーサーが真顔で林檎を集めている。
ただ林檎落とす物理かよ。マージルクスお得意のファイヤーはどうした。
「まったくなにをやってるんだ!」
赤毛の男、名前を失念した。が背中から翼を二つ広げてバサバサと風をおこす。
「きゃ!!」
「あぶね!!」
邪魔な林檎が飛び、観客のほうへ林檎が落下した。
あのやろう大会が終わったらジュミラルンスティックで一発ぶんなぐってやろう。
「ブー!」
「負けろ!!」
観客から大会初のブーイング。
つーかあれ、これってなんの戦いだ?
かろうじて最初はダンスしていたというのに、今回にいたっては初めからダンスしてねーぞ!
「ファメラ、魔法が使えないなら話にならんな」
「おかしいわねーいつもなら魔法使えるはずなのに、たぶんこの星のせいかしら?」
「はー間に合ってよかった……」
観客席に息をきらせながら、魔法使いの男がやってきた。
「とにかくなにかやれ、炎魔法をやってみろ」
「狂喜女神の舞!」
ファメラは双剣をかまえ、まるで女神カールィのように単独で踊り始めた。
ついでにアレクレスも羽をぱたつかせ、あざとい誰特アピールをする。つーかこれラテーンじゃねーか。ワルーツやれワルーツ。
ファメラはあたりを火祭りにした。
シャーレア達は火に囲まれる。
「やったわ!!」
ファメラはさらに歓喜の舞を続ける。
「雨の精霊、川の精霊、池の精霊、沼の泉の精霊、海の精霊さん、私に少しずつ力を貸して―――!」
シャーレアが叫ぶ。青いオーラが体をつつむ。
「水の女神どうかこの火をけしとめて!」
そういうと、雨がふって炎が沈静化した。
「くっ……ただの小娘とあなどっていた」
アレクレスは再び羽を広げる。
つーかあの羽、林檎に気をとられてスルーしてたがあいつ鳥人だったのか。
「貴様からは我と同じ力を気どる―――幾度姿を偽り、時をめぐるのだ同胞よ」
「―――――ご心配なく。これが最後ですから―――」
「ふむ、あれが探し求めたピリオドか」
「ええその証拠に、本来の姿をここでお見せしましょうか」
クリアは不敵に笑う。
――――バサリ”六枚の翼を広げた。
「ああ、それと――――同胞などと軽々しく呼ぶな小僧」
クリアは高圧的な顔でリンクの宙を舞う。
抜け落ちた翼が会場にちらばり、幻想的だ。
「きれいだね……」
「ああ、もう大会どころじゃないがな」
アレクレスも負けじと空を飛び上がった。
―――――空中で睨みあう赤の鳥類と青の天使。
アレクレスの手には大剣、クリアの手には長槍。
結局物理か―――!
「ふははは!!」
―――クリアは高笑いすると、手を上にかざす。
そして無数の光槍がそこら、あたり一体を無差別に焼き討った。
うまく観客を避けるという良心的な技であった。
「ふーヤドリギィの盾がなかったら即死だったわ!」
シャーレアが木のバリケィドをぶっ倒れている二人のいるところへぶんなげ、かけふとんのようになる。
ドザエモーン!
「勝者クリア&シャーレア!」
――さて、一通り片付いたな。
あといくつ寝ると、リバーシ見れるか―――
なんてことを考えていると
バン!
またしても扉が勢いよく開かれた。
「オラオラー!!」
「キャアアアアアアア」
ガラの悪いチンピラを通り越して、ヤクーザがピストゥルを発砲をはじめた。
「いったいなにごと!?」
反対側の扉が開かれ、ぞろぞろと乗り込んできた。
宇宙用ヘルメット、銃、ビムーサベール。
あの格好、ジュプスにある宇宙連邦軍人達だ。
宇宙連邦軍人、たしか隣のクラスのアスリルとかいう学園のカーストランクドベ最下位の底辺だったな。
おれが最下位から論外位にうつったことであいつも下がったわけだが。
たしか最近宇宙連邦軍の元帥から求婚されたというマジありえないやつだ。
しかも父親は陸軍大将、母親は空軍大尉、兄貴は海軍大佐というエリート村娘だ。
なんだよその設定盛りすぎだろ。
あいつ最弱とかいってるけど絶対覚醒して強くなるタイプだろ。
オレには全属性魔法しかないというのに、なぜ神はオレを弄ぶ!!
「この大会における優勝賞品とやらは、一般人の手に渡してはならぬモノだ。よって我々は回収にまいった」
宇宙軍人はヤクーザには目もくれずに会場内をくまなく探し始めた。
大会はめちゃくちゃになった。