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XIII 兄
「腹減ったな…」
鍾乳石にかこまれた洞窟でぐーすか眠るドラ娘と二人きりだ。
このまわりに食材はない。
いくら最強の攻撃魔力を持っていても。
空腹までは満たされない。
魔力を食事で補うのだ。食事を魔法で出して食べても無意味。
それにあいつらが後ろにいないと、妙に落ち着かない気分だ。
学園長にだけは迷惑かけたくなかったが、小さな積み重ねがいつの間にか大きなまずいことになっていた。
まあ後悔はしていない。
腹ごしらえをして、奴等をボコボコにのしてやる。
「…!!」
ドラ娘が目をパチパチとしばたたかせた。
「起きたか」
「ガオオオ」
ドラ娘が鳴く。なんともリアルドラゴン。
「らうらう!」
「オレのことか?」
「がお!ぱあぱ!」
「パパはやめろ」
「にいたん」
「もうそれでいい」
【没シーン】
「オレのことはお兄ちゃんと呼べ」
実は妹がいたらいいと、昔から思っていた。
オレを賛美し、後ろについてきて、頼るような。
オレにいるのは兄を尊敬しない、かわいくねえ弟だし。




