79 よ蜂の巣
「雷鳴我門月歌――――――!」
「あ、ありがとうございます」
解放された幸があいつに軽く頭を下げると、すぐさまオレの背に隠れた。
「雷やミステリーごっこで私の登場を仄めかすとはなかなかやりますね」
なんのことかさっぱりわからん。
「推理はともかく雷って?」
「わからないのならいいです」
「はあ」
「―――――まあこんなところに死体が!!」
「いやまだ生きて…」
月歌はガスガスとトドメをさし、殺子を気絶させた。
ドィルルルルウウン!
「なにいまのジェスラックに怒られそうな効果音!」
「まあたいへん事件です!《強制ミステリーサークル発動!》」
「くっなんだこれは……」
―――――――――――
「この冥<めい土送り火消し>探偵の雷鳴我門月歌がいれば、このような事件はブレックファースト=朝食<あさげ>前です」
「わあ頼もしい」
「ラウル警部、事件の内容を詳しくお願いします」
「被害者は二十代にはとても見えないフケた女性。職業は暗殺者――――(ってなんだこの茶番は。犯人お前だろうが!!)」
「私はなんども事件を解決<ひきおこし>てきましたが」
(おいルビがおかしいぞ)
「……フフ、今回の事件はけっこう難しいですね」
(いや超簡単、幼稚園児でもわかるレヴェルだ)
「……いったい犯人は誰なんですか!?」
(なんでお前まで乗る!?)
月歌は探偵がよくやるあのポーズ。顎の下に手をやるアレをやりながら、歩き、意味なくそこらを往復している。
「被害者は暗殺者、大半は同業者の反抗である可能性が高いです」
(お前じゃん……)
「まず私は暗殺者ではない、そして探偵であり彼女とはまったく面識がありません。なので容疑者からは一応外れると思います」
(むしろがんじがらめですが?)
「ラウル警部はさっき屋敷に駆けつけたばかり……じゃあ犯人は私!?」
(ちげーだろ。というかここ屋敷だったのか?)
「でーんでー~ぢゃぢゃ、だららったた~。いいえ、貴女は犯人ではありません」
(効果音口でやるのかよ)
「犯人は――――」
探偵月歌は瞬時に姿を消す。
「なんだ……逃げたのか?」
「まさか……」
とおもいきやまた現れた。
「ぎゃああああはなせええ!!」
「はっ!」
「ぶべりゃ!」
月歌は壁に亜衣博士を叩きつけた。
「犯人は貴女です!」
ビシッ、指を差す。
「ふざけんな~転移装置発動!」
亜衣博士はまた消えた。
「なんだったんだあれ」
「これにて事件は解決、一件落着。アディオスです」
「いや待てよ犯人はお前だ!」
「まあまあ、誰が犯人でもいいと思うよ?」
幸が気絶している殺子に手錠をかけた。
腕が再生しているのと、その他ツッコミどころは多いがもうなにも言うまい。
「まあなにはともあれ、真ん中を抜ければもうゴールしてもいいんだよな?」
―――――――――
―――ところどころ壊<かい>した屋上、ボロきれのように倒れる人間。
「ようイカレ女、ボロ雑巾化してんじゃない」
「抜かしやがれボケが、誰のせいでこうなったと思ってんだブッ殺すぞ」
「はあ?」
「アンタがヘマしてムショ入りしたから、殺子を向かわせてアンタをシャバに出したんだから!」
「そうなんだ」
「殺子から聞いてなかった?」
「私が人の話を聞くと思うか?それよりなんだそのザマ、ダッセー」
「――――聖女<シスタァ>の私が大魔王<アンラーマァマン>を召喚<リカード>しようとしたら運悪く大女神<エレクチェ>を降臨<マイラレー>できる魔女<ウィッティス>が現れて一騎討ちかと思いきや契約無効<キャンセラー>」
「はーなにいってんのかさっぱりわかんね。だから馬鹿の話は聞きたくねーんだわ~」
「は?殺っぞ」
「あ"?なにメンチきってんだぁ?腐っても科学者舐めんなよゴルァ」
「腐ったらだめだろ」
「この天才マッドサイエンティストたる私は、まだまだこんなものでは終わらないんだあああ!!」
《覚えておけよ小僧――――――》
―――――――――――
「ブーン……新しいハニカムランドの拠点どこにしようかな~」
―――――――――――
「ふう……」
「おかえりラウル~」
「学園長!と他二人」
「ぼっちゃま……そういうプレイですか!?」
「がうがう!」
―――
「助…け…て…」
「(なんだっけあれ忘れた取り合えず)了解」「(わかんないわ)ヤー」「がー」
「プリンズ星が裏切った!シホウ星に救援を要請する!」
「なにこれ?」
「あれの二期の最終回を真似たが、やはり無理があったな」
「あれってなに?」
「まあいいシホウ星に向かうぞ!!」
「あれ、でもシホウ星って前回地図に乗ってな―――――あれ?」
「どうしたの幸」
「この前はなかったシホウ星がマニュ星の隣にあります!」
「不思議だなあ」
「こまけぇこたぁいいんだよ」
「よーし。出発!」
《オレ達の戦いはこれからだ!》
「え?終わり!?」
「いや、ただやってみたかっただけだ」
「もー紛らわしいことやめてよね~!」
【ボツネタ】
「まあまあ、落ち着いてくださいな」
「誰だテ……なにかしら」
「見かけねえ顔ですわね、私達に何か用がありまして?」
「わたくし、ただの通りすがりの悪役令嬢<レディキラー>です」
「悪役令嬢……あの名を語れば吝かではない教祖力<カリスマ>により、信者<カモ>の集客<バキューム>力が超絶凄<キラーレベル>と言われる……」
(やっぱ全然わかんねーわ)