74 下手な弾丸、一発当てる
玉座の間――――――
「ホーホホホホ」
何やら高笑いしながらワインを飲み、ステェキを食うボンテェージ女。まさかこいつがラスボスじゃありませんように。
ついでにオレはほーっほっほっほ。派だ。
「あんらぁ? アタクシの根城になんのようかしらあ?」
見えている―――――だと?
「なーんて! 一度やってみたかったのよねぇ~ん」
きゃぴきゃぴすんな。
さてただのまぬけを観察する暇はない。
次のエリアにいくか―――――
パリーン。、移動しようとしていたオレの足元に、どこからか飛んできたワイングラスが落下した。
「ほーっほっほっほっ!」
ボンテェージ女が勢いよく椅子に足をかけ、テーブルの上に立つ。
杖を持ったボンテェージ女がそこからオレを見下ろしている。
「まぬけを装い、油断させ隙をつくとは、プリンズ星を侵略しただけはあるな」
「部下が優秀なのよぉ~」
ということはカリスマはあるが、たいした力はないってことか。
透明魔法はこいつに効果がないようだ。
「さあ、バトル開始といこうかしら~」
「先に言っておいてやるが、オレは全属性魔法使いだ」
この女はどうせ闇魔法を使うタイプだろう。攻撃がきたら光魔法で相殺してやるか。
「私が先にいくわねぇ~」
ボンテェージ女は杖を左に持ちかえると開いた右手をオレに向ける。
来る―――――――!
放出されるであろう魔力の部位をタイミング良く狙おう。
「えーい!」
だが、肩を軽く叩かれるのみで魔法は出ていないため、相殺もなにもないようだ。
筋書きとは違うが、オレが直接魔法を使って軽くひねるか。
「じゃますん……な?」
なんということだ。魔法が使えない。
「あ、この部屋、対魔法装置つけられてるの忘れてたわ~」
「なんだと?」
つけた。ではなくられている。つまりこいつが仕掛けたわけではなく、悪人を閉じ込めるプリンズ星の仕様らしい。
「私じつは魔法より肉弾戦のほうが得意なの~」
知恵の女神ミディア・アルテールの恩恵により
魔法はそこそこ知力が無いと使えないだろうからな。
「おんやまぁ~どうしたのかしらぁ~もしかして自信ないのぉん?」
「は、馬鹿言うな。さすがに女に負けるほど脆くはねえよ」
「さっきさ、私あんたの左肩さわったよね」
「は?」
突然、雰囲気が変わった。
「その腕は“折れてる”でしょ?」
無邪気、というような微笑がうかぶ。
骨折の痛みなどない。だが、左腕が動かない。
「冥府の土産に教えてあげる。私の名前は“アレアレイ”サタナス星のプリンセスよ」
はて、サタナス星といえば、ドルゼイに奪われ、名も変わった星ではなかったか。
「お遊びはオシマイにして、地下監獄に戻ってもらうわよ~」
当たりを見渡し、武器になるバァルのようなものを探す。
ワインのボトルが落下し、丁度よくギザギザになっていた。
オレはテツアレイの右後ろへ向かって、丁度ポケットに入っていた洗濯したときに出し忘れたティッシュのようにくしゃくしゃになったコエマドゲルポの紙幣を投げる。
やつはそれに気をとられている。
奴が意地汚くそれをネコババしている間に、ボトルの持つ部分が丁度よくなったものを拾った。
だがこんなものではロングタイプのロッドのようなもの持ったあいつに対抗できそうにない。
「あばばば……」
アレアレイの様子がおかしい。
「私はもう、死んでしまう……」
「あ?」
「いにしえより一族に伝わる暦を見たの……サタナス星人の平均寿命の半分で私は死ぬってね」
「ああ、つまりもうすぐ死ぬから大事件をおこして名前を知らしめたかったのか」
「そうよ、だから。私と一緒に死んでもらうわ!!」
アレアレイはピストゥルを取り出し、オレの額に突きつけた。