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リーゼロッテ#7

 入った部屋は少し薄暗い。


 カーテンの隙間から夕日がちらりと差し込んではいるが、部屋全体を照らす光量は賄えていない。


 リーゼロッテは部屋に入るなり、手に持っていた鞄をベットに放り投げると、自身も勢いよくベットへ向かってダイブした。


 バフッ


 リーゼロッテの身体を受け止めたベットは所謂キングサイズのベットで、その上天蓋まで備えている。


 マットも枕も極上の素材で仕立てたものだから、程よい反発と柔らかさを兼ね備え、シーツに関してはサラサラと肌触り良さ抜群だ。


 そんな極上のベットにうつ伏せで倒れたリーゼロッテはしばらく微動だにしなかったが、ようやく長い溜息と共に寝返りを打ち、仰向けへと姿勢を変える。


「疲れた。…すっげぇ疲れた…」


 ポツリと呟くが、せっかくの鈴の音のような美声が粗野な発言のせいで台無しだ。


 しかしリーゼロッテはそんなことを構うことなく、一人文句の言葉を羅列する。


「美少女を演じるのって、めっちゃ辛いわ。その前に俺は男だし。男の俺が女を演じる時点で無理あるのに、容姿端麗頭脳明晰なお嬢様を演じるって、無理ゲーだろ。どーすんだよ、これから。ってか生理辛すぎるわ!」


 リーゼロッテは言いながら枕をドアに向かって思い切り放り投げた。


 物に当たるのは良くないと幼い頃から教え込まれているが、我慢出来ないときは我慢出来ないのだ。


 それに今さっきの彼女の発言からしてみても、自分を偽りながら何かを演じるのは相当なストレスなのだから、八つ当たりくらいは大目にみても良いのかも知れないが。


「あー、それに来週テストだよテスト。マジでやべぇよ。字は読めるんだけど、書くのがキツいんだよなー」


 枕を投げてもリーゼロッテのボヤきは収まらない。

 ボヤきながら、足をバタつかせ、その度に彼女の程良く肉付きのいい太腿が顕になった。


 その瞬間に純白のショーツが見え隠れしたり。


 この光景は、健全な男だったら誰もがガッツポーズをして大いに喜ぶ出来事となるだろうが、幸か不幸かこの部屋にはリーゼロッテのみだ。

 

 従って彼女は誰に気にすることなく、スカートをはだけさせ、その美しい肢体を露わにさせ続けるのだった。


 そんな風に少しの間、駄々っ子のようにベッドで暴れていたリーゼロッテだったが、不意に鳴り響いた扉を叩く音によって動きを止める。


 そして、我に帰った彼女は慌てて、その場に立ち上がると、乱れた髪や服装を整えて、自室を訪れた者の応対をした。


 「は、はい。」


 そういって彼女が扉を開けると、そこにはメイドのテレサが立っていた。


「お嬢様、お休みのところ失礼いたします。湯浴みの用意が整いましたので、どうぞ。」


「あ、あぁ。湯浴みね、ありがとうテレサ。早速頂くわ。」


「本日も勉学に励みになられ、さぞかしお疲れのことでしょう。浴槽には疲労回復に効くと言われる薬草をふんだんにいれておりますのでごゆっくりなさってくださいませ。」


 テレサはそう言うと、リーゼロッテを浴室まで案内するように身を翻して廊下をゆっくり進み出した。

 リーゼロッテもテレサの誘いによって、ゆっくりと歩き始めた。


 

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