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ソルジャーズ・スカイスクレーパー  作者: オウサキ・セファー
第三章 プレゼンス・サード -航路の行方-
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第14話 ソルジャー

A-1地区三丁目三番地。

あたりはすっかり日が沈み、涼しい海風が吹いてくる。


ここは真木田組の組事務所。

その事務所である真木田ガードナーズのオフィス前の広々とした駐車場には

敵を迎撃すべく大勢の真木田組構成員が待ち構えていた。


アロハシャツや半袖ワイシャツに袖を通し、金髪や茶髪、黒髪と統一性のない髪色に

ハンマーや鉄パイプ、バット、ドスといった統一性のない武器を手にしたヤクザたち。


中には強面なヤクザらしくサングラスをした者もいる。


ちょうどそこに二人走って現れたユヒナとハインはそんな彼らが

待ち構える駐車場に踏み込む。足を止め、武器を構える彼らと対峙する。


「ここが真木田組の事務所みたいね、ハイン」


「ええ。予想はしてたけど、早速派手な出迎えね」



「オウ、小娘ども!!!二人揃ってガキ取り返しに来たんか?」


真ん中の黒いアロハシャツのヤクザが挨拶代わりに啖呵を切る。


「そうよ、境輔はどこにいるの?今すぐ返して!!」


ユヒナはヤクザの言葉に怯まず強気で言い返す。


「ガキならカシラの部屋だ。カシラからお前達も捕えるよう命令が出てる。

 ここに入った以上、ただじゃ返さねえぞゴラァ!!!」



「ハイン、行こう!!」



横にいるハインの方を向いてそう言った後、

特に見た目は武装せず、ピンク色の花柄のワンピース姿のユヒナは

どこからともなく、剣を取り出して左手で構えた。

ヤクザの怒鳴り声には耳を貸さずに。


その剣は侍が持つ刀でも西洋の剣でもない。

刃に実体がなく、SF映画に出てきそうな眩い黄色い光となっている。


更に剣の柄の部分は回転式のリボルバー式拳銃の形をしている。なんとも特殊な形状だ。


「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


ユヒナは左手で剣を握り、目の前のハンマーや鉄パイプを持った

ヤクザ達に勇敢に立ち向かっていく。


まず最初の一撃は派手な広範囲の横切り。

光の刃は右から左へと斬りかかる直前に長く伸び、

一度に大勢のヤクザを巻き込んで傷を負わせる。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


先ほど啖呵を切ったリーダーと思われるヤクザ達だけでなく

その後ろを守っていたヤクザも実体のない刃によって力強く斬られた。


早くも大勢のヤクザの体制が乱れる。

ユヒナの持つ剣の異質さに早くも悲鳴をあげるヤクザも。


「なんだよあの女ぁ!?」「SF映画かよ!?」「ちくしょー、この女ナニモンだ!!」


何とか攻撃範囲から外れたヤクザ達が後退りながらざわつく。


「・・・ははっ、バカみたい。こんな事で驚いてるの?」


ハインが面白そうに彼らを笑いながらユヒナの隣へと歩み寄る。


「失せろこのガキがぁぁぁぁぁっ!!!」


逆上した黄色いリーゼントのヤクザの一人が硬い重りが

先端に取り付けられたハンマーでハインに殴りかかる。


頭に当たれば間違いなく出血は避けられない重傷を負うハンマー。

酷ければ、脳に損傷が出て死に至る事もある危険な武器だ。


しかし、ハインはヤクザがそれを大きく振り下ろす瞬間に、


「ぐあああああああああああああああああああああああっ!!!!」


ハインの右手から放たれた黒い尖ったエネルギー弾。

銃弾のように放たれたそれはそのヤクザの腹に直撃し、

断末魔をあげて豪快に吹っ飛ばされる。

吹っ飛ばされた先にいたヤクザも一緒に巻き込んで。


「・・・カルシウムが足りないわよ。坊や」


手から放たれたエネルギー弾に吹っ飛ばされるという

未曾有の光景に周りのヤクザ達の動きも一瞬止まった。


「コイツら・・・・・"ソルジャー"かよ・・・・・」


青いアロハシャツを着たヤクザの一人が唖然となって呟く。


「ねえ、カシラの部屋ってどこ!?

 教えてくれて通してくれるならこれ以上は攻撃しないわ!」


ユヒナがヤクザ達に強い口調で問う。


「ふっ、カシラの部屋ならこのビルの4階だよ」


赤いアロハシャツで黒髪の少し偉そうなヤクザの一人が

左手の親指をあげて言った。指した先にユヒナは注目した。


指された先であるヤクザ達の奥にそびえ立つ真木田組の組事務所。

4階には長方形の縦長に区切られた窓が広がっている。あそこに境輔がいるのだろう。

だが、この高さでは明かりがついているのは分かるが中の様子が見れない。


「だがな・・・・・お前らをただで通すわけにはいかねぇ」


「オレ達に大人しく倒されろ!!ガキ助けてえならくぐり抜けてみな!!

 カシラへの良い手土産にしてやるよ!!」


赤いアロハシャツの偉そうなヤクザは鉄パイプの先端を向け、構えた。


「やれぇ!!!!コイツらブチ殺せ!!!」


そのヤクザの号令の下、目の前の大勢のヤクザは一斉に掛け声をあげ、

ユヒナとハインに武器を手に殴りかかってきた。


あっという間に背後も塞がれ、ほぼ包囲されるとヤクザは

次々と鉄パイプやハンマーをユヒナとハインに振り下ろしてくる。


ハインは振り下ろされるそれを軽く避ける。

まるで相手の動きが分かっているように次のハンマーの一撃もさっと避けて一歩下がる。


ユヒナもそれを避けて後ろに高く跳ぶ。まるで背中に翼があるかのようにユヒナは

少し宙に浮いた後、2メートルほど離れた場所に着地した。


「戦う気なら・・・・しょうがないわね!!えいいっ!!!」


ユヒナは左手に持っている光る刃の剣を右から左斜め上に素早く振り上げる。

すると振った形通りに大きな斬撃のエネルギー波が剣先から放たれる。


ヤクザの一人がその斬撃に対して、鉄パイプで攻撃を試みるが

その大きな斬撃は振り下ろす前の鉄パイプを簡単に真っ二つに引き裂く。

そしてそのヤクザと周りのヤクザも巻き込んで爆発を引き起こす。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


爆発とともにヤクザの断末魔が響く。


一方、ハインに振り下ろされる鉄パイプやハンマー。しかし・・・・


「なんだコイツ!?目の前に見えない何かがあって殴れねえぞ!?」


困惑するヤクザ達。

しかし、両手を腰につけ、ドヤ顔で彼らを見て笑うハイン。


「フフフ・・・・・」


ガァン!!!ガァン!!!ガァン!!!


殴られればとてもじゃないが立ってられなくなる強度を誇るハンマーや鉄パイプで

ハインの頭を攻撃しようとするヤクザ達だが、彼女には傷一つ与えられない。

彼女を守るように見えない硬い何かが彼女を攻撃から守っている。


「フフ・・・・私は何もしていないわよ?

 あなた達が攻撃しようと思っても出来ないだけでしょ?」


速度を速め、試行回数を増やして殴っても見えない何かが邪魔して

攻撃出来ないヤクザ達。殴ってもまるで硬いブロックを叩いたような硬い音が響くのみ。


「ど、どうなってるんだよ?」「おかしいだろコレ」


そんな彼らが苦しむ様を見て、ずる賢い小悪魔のような

笑みを浮かべるハイン。そんな彼女の黒い瞳は怪しく紫色の眼光で光っていた。


「フフフ・・・・ハイ、もう時間切れ」


するとハインは彼らの足元に向かって、そっと右手を広げた。




「こんのっ!!!・・・・う、わああああああああああああ!!!!」


「ぎゃああああああああああああああああ!!!!」


次々と、アロハシャツ姿のヤクザ達が一人一人、

足から引きずり込まれるように闇へと飲み込まれていく。


「な、なんだよコレっ!!う、うわああああああああああああああああ!!!」


まるでもがくように悲鳴をあげて引きずり込まれていくヤクザ達。

そう、ヤクザ達の足元には夜の闇とはまた違う黒い水浸しのようなものが出現していた。


それは、まるで底なし沼のように一人、また一人と

ヤクザを足から引きずり込み、飲み込んでいく。


「フッ・・・ハハハハハハハハッ!楽しいわね♪」


そんな彼らを面白そうに嘲笑うハイン。


「てめえ、ふざけるんじゃねえぞ!!!!!」


黒い水浸しより奥にいたヤクザの一人が金属バットでハインを殴ろうとする。

ハインもその方向を見ると彼女の瞳が怪しく紫色に光る。


ガッシンンンンンンンンンン!!!!


やはりと言うべきか、見えない物体に邪魔されてハインにダメージが与えられない。


そして・・・・・・


「うわああああああああああああああああああああっ!!!!」


為すすべもなく、闇の奥底へと飲み込まれていった。


「こ、この女・・・・・化け物かよ!!!!」


もはやヤクザ達は足元の恐怖の底なし沼に恐怖するだけで

誰もハインに手を出せなかった。



一方、ユヒナは次々と鉄パイプやハンマーで向かってくるヤクザを

左手の光の刃を持った剣でバッタバッタと倒していく。


ユヒナは無傷だった。一人、また一人と武器を振り下ろしてくる相手に

殴られる前に防ぎ、斬りつけ、一人ずつ倒していた。


「死ねこのガキがっ!!!」


遠くからサングラス姿の緑のアロハシャツのヤクザがついに接近戦をやめて

一丁の銃を懐から出し、ユヒナに向けて一発の銃弾が放たれる。

バン!!!!大きな銃声が聞こえた。


「・・・・・あっ!!」


その飛んでくる銃弾にユヒナは気づく。ちょうど目の前に鉄パイプを

手に立ちはだかってるヤクザ二人のうち、一人を思い切り縦に斬りつける。


「うわああああああああああっ!!!」


一人を倒したのち、続けて、

もう一人ヤクザの顔面を空いている右手で素早く鷲掴みにする。

掴まれたヤクザのサングラスがポロリと地面に落ちる。


「ぐあっ、放せえ!!!」


その弱々しい華奢な身体に見合わない恐るべき怪力を持つユヒナ。

男一人を片手で簡単に持ち上げてしまう。


そして、そのヤクザを飛んでくる銃弾に素早くそのまま向ける。


「ぐああああああああああああああああああっ!!!!」


銃弾はヤクザの背中の中央に命中し、背中から血を流すヤクザ。

とても動けないだろうそのヤクザをその場に雑に放り捨てるユヒナ。


「ひいっ・・・・・・!」銃弾を放ったヤクザはその場で腰を抜かす。


ユヒナは左手に持っている剣の光の刃を引っ込め、

その剣の先端を銃弾を放ったそのヤクザの方に向ける。


光の刃を引っ込めたその剣の先端は10cmほどの長い銃口の形をしていた。

その銃口から光の弾が一発、放たれる。バン!!!と銃声をあげて。


「うっ、うわあ~~~~~~~~~~~!!!!」


その一発はヤクザの体ではなく目の前の足元のコンクリートに着弾し、

普通の銃じゃない剣から高速で放たれた光の弾にヤクザは怯え、逃げ去った。





「ハイン、そっちは終わった?」


ユヒナが振り向くと余裕な笑みを浮かべながら彼女の下へ歩いてくる

ハインの背後にはダウンしたヤクザの山が築かれていた。

そう、先ほどハインが呼び出した底なし沼の餌食となったヤクザ達である。


底なし沼から吐き出され、全員気を失っている。


「ええ、終わったわ」


余裕な面持ちのハイン。彼女の前では普通のヤクザなど敵ではない。


その時だった。


バタン!!!目の前の真木田組事務所の扉が開かれる。

その音に反応したユヒナとハインがその方向を見ると

またもや大勢の鉄パイプやハンマーを持ったヤクザ達が後続部隊として次々と走って現れた。


「キリがないわね・・・・・ユヒナ、アンタはここから

 本気出して一気に4階へ行きなさい。ここは私が引き受けるわ」


「うん。気をつけてハイン」


ユヒナは3歩ほど前に駆け走る。そして・・・・・・


その場で両手を広げて目を閉じるとユヒナの全身が白い光に包まれる。


着ていたピンク色の花柄のワンピースも一緒にその光に包まれ、消滅、

ユヒナの姿が一瞬生まれたままの綺麗な姿となる。


両足が膝まで青い鎧に包まれ、続けて小股、胸元が同じような鎧に包まれていく。

両腕の上腕二頭筋には二つの青いリングが装着された後、

ユヒナの背中から鋼色で機械仕掛けの大きな翼が出現し、大きく広がる。


変身を終えるとユヒナは光から解き放たれた。


「な、なんだアイツは!」


「ソルジャーだ!!でもどんな能力持ったヤツなんだぁ!?」


美しい桜色の長い髪、鋼の翼を持った美しき女戦士を

前に後続部隊のヤクザ達もどよめき始めた。


そんな目の前のヤクザを尻目にユヒナはその鋼の翼をはためかせ、大空へと飛び立った。


一気にジェット機のように高く飛び上がったユヒナはそのまま高い所まで行く。

そんな光景を唖然とした様子で見ているしか出来ないヤクザ達を尻目に

ユヒナは建物の4階の高さまで飛行した。


この高さならば、4階の建物内部の光景を見る事が出来る。

長方形の窓が並ぶ部屋の中に誰かを取り抑える大男の後ろ姿を確認出来た。

恐らく、取り抑えられているのは境輔だろう。


ユヒナはそれを発見すると一気に頭からその方向目掛けてミサイルの如く突撃した。



ガシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!



阻む窓ガラスを大きく打ち破る。窓ガラスが破られると同時に外の風が一気に吹き込み、

ユヒナはその風とともに建物内部に入り込んだ。


「うおぁぁっ!!!・・・・・な、なんだぁ!?後ろからぁ!????」


突如、後ろから謎の少女に思わぬ奇襲を仕掛けられた真木田は声を裏返す。

真木田は現れたユヒナから慌てて距離をとるあまり、

この手で人質としてしっかり拘束していた境輔から手を離す。


「境輔ーーーーーーーーーー!!!」


広い部屋の宙に立ち、背中の鋼の翼を大きく広げ、

吹き荒ぶ風とともにユヒナはその名前を大きく叫ぶ。


「ユ、ユヒナぁ!?」


下からユヒナを見上げながら目を丸くし、仰天する境輔。


「なんなんだよユヒナ!!その格好は!?」


普段とは全然違うユヒナのその姿を見た境輔はとにかく驚くしかなかった。


下着同然の守備範囲が狭い鎧だけでなく、彼女の背中にある鋼の翼。

左手に握られている銃と剣が合体したような形状の光の刃を持った剣。


しかも部屋の中で宙に浮いている・・・・

突っ込むべき所が多すぎて全部まとめて言い切れない。


「驚かせてごめんね境輔!!でも、今境輔を助けるにはこれしかないの!!

 事情は後で説明するから待ってて!!」


下にいる驚いている境輔に向かって、空中からユヒナは釈明した。


「ま、まさか・・・・お前、女のくせにそこそこウチの組員とやり合ってるなと思ってたら・・・・

 マジで・・・・・ソルジャーだったのか・・・・!?」


真木田にも外の状況はおよそ把握は出来ていた。

この目で見ていたわけではないが、外の部下達の騒ぎ声から只者ではない事は分かっていた。


だが、その普通の人間とはとても言い難い姿をしたユヒナを前に

それまで彼女達を女だからと軽く見ていた真木田は震えが止まらない。


真木田はソルジャーが何なのかは知っている。

が、こんなのは初めてだった。とにかく驚くしかない。


「ぐっ・・・あの特別公認事業所とか言う場所は女ばかりだから・・・・

 シーガルスさえ何とかすれば手早く目的を達成出来ると思ってはいたが・・・・!」


唇を噛み締め、因縁をつける鋭い眼でユヒナを睨みつける真木田。


「あなた達の目的はなんなの?どうして境輔を誘拐したの?答えて!」


空中から真木田を見下ろして強く追求するユヒナ。


「お前達をここへ誘い出すためだ。お前達がここに来た時点でこの小僧は用済みだ。

 俺達の目的は最初ハナからお前達のボス、理事長サマにあるのよぉ!!」


「お前は知っているんだろう?

 この島を統治する理事会のトップ、白針刻がどこにいるのかをよぉ!!」


相手を威嚇するように真木田の声が荒々しく、大きくなる。


「それを知って、どうするつもりなの?」


「無論、この島を俺達のパラダイスにするためだ!!

 理事長を脅し、この島を支配する証である土地の権利書を頂く!!」


「え・・・・・・!」「な、なんだと・・・・・・!」


平和の裏で、密かに進んでいたヤクザ達による恐るべきいずみ島乗っ取り計画。

境輔とユヒナは目を丸くした。


「土地の権利書さえ奪っちまえば、学校やアパートだらけのこの島も

 好き放題出来るってわけさ・・・・ッハッハッハッハッハァ!!」


「この島を、あなた達の物になんか絶対にさせないわ!!」


ユヒナは勇敢な眼差しで真木田を見てそう切り込んだ。


「そうか。なら・・・・無理矢理吐かせてやらぁ!!やれぇ、牙楽!!」


ユヒナから見て、部屋のずっと左側に黒マントで身を覆った長身の男が立っていた。


「フッ・・・・・・・・!」


その男、牙楽と呼ばれた男は真木田に指示されると高揚する笑みを浮かべ、

その場からいきなり斜め上へと飛行し、ユヒナにいきなり一直線に突撃した。

紫色の燃えるオーラを身体に纏いながら。


「ブラッディ・ソード!!!」


技名とともに牙楽がマントから出した右手。

そこから赤黒い色をした光の剣が現れる。まるで血まみれの剣のようだ。

剣の出現と同時に振り払うように紫色のオーラは光の塵となって消える。


真っ先に牙楽はそれを振るい、ユヒナに襲いかかった。


ジィィン!!!


身を守るために出されたユヒナの持つ光の刃の剣が牙楽の剣とぶつかる。


「えいっ!!!」


牙楽に対するユヒナの両翼に二つずつある丸い円の模様がガーッと開き、

計4つの砲口から無数の光弾が応戦すべく放たれる。


バババババババババババババババッ!!



「グォッ・・・・・・!」


その攻撃の一弾を食らい、空中でバランスを崩した牙楽は

落下しかけると同時に両者の距離が離れる。

が、すぐに牙楽は空中で体制を立て直し、


「ブラッディ・スコール!!!」


牙楽は自分を覆うマントを大きく開く。するとマントが途端に紫色のオーラに覆われ、

コウモリの翼のようにそれを広げると、

無数の赤い血の雨のような光線がユヒナ目掛けてほとばしる。


宙にいるユヒナから見て、下から斜め上に襲い来る小さい無数の赤い光線は

放った無数の光弾も貫き、光弾の横を通り過ぎる。


「危ない!」


とっさにユヒナは自分の鋼の翼を前に広げる。

広がった鋼の翼はまるで盾のように無数の光線攻撃からユヒナを完全に守った。

牙楽の嵐のような攻撃が止むとすかさず、


「たぁぁぁぁぁぁっ!!」


今度はユヒナの方から降下し、牙楽に突っ込んでいく。


ガシィン!!!


振り下ろした剣が再度牙楽の赤黒い血まみれの剣に阻まれると、

ユヒナの右翼がグネグネと形状が硬い鋼の翼の形から膨張し、変化していく。


「なんなんだあれは・・・・・!」


先ほどから高い天井であるこの部屋の空中で繰り広げられるユヒナと牙楽の戦いを地上から見ていた境輔。

とにかく現実的じゃない。まるで漫画の世界に迷い込んだかのようなその光景に言葉を失っていた境輔だったが、

ついこの前一緒に遊んだばかりの女の子のその姿にはただ驚くしかなかった。


ユヒナの鋼の右翼は背中から自由に伸縮する巨大な右腕の形となった。

翼から腕に変化したそれは鉄腕とも言える巨大な鋼の右腕。

左翼は依然、翼の形を保っており、ユヒナ自身も飛行能力は失っていないようである。


「これで・・・・どう!?」


その鉄腕は右から大きく伸び、大きく手を広げながら牙楽に痛烈な平手打ちを放つ。


「・・・・・・っ!あああああああああああっ!!!!」


人間一人はひと握りに出来るサイズの手。

横からそんな大きな手で平手打ちを全身に受けた牙楽は窓際の方へと吹っ飛ばされていく。

その平手打ちは豪快なバットのように牙楽をかっ飛ばした。


ガシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!


まるで打球の如く吹っ飛ばされた牙楽によって、

また更に部屋の大きな窓ガラスにもう一つの豪快な穴が開く。


牙楽はそのまま窓の先へと消えていった。

かなり吹っ飛ばされたのか、すぐ戻ってくる様子がない。


その光景に境輔、そして真木田も唖然としていた。


「な!?あの牙楽がこんなにも早く・・・・!」


ユヒナはそのままその場からさっと床に着地した。


「さあ、これであなたを守る人はいなくなったわ!!」


ユヒナは光の刃の剣の先端を真木田がいる方へと向ける。


「ぐうっ・・・・・・!ソルジャーの小娘が・・・・!」


唇を噛み締め、追い込まれた真木田。

主力の牙楽を退けられ、もはや戦えるのは自分しかいない。


「ソルジャー・・・・?一体さっきからどういう事なんだ・・・・?

 ユヒナはソルジャーというものなのか・・・・・?」


さっきから飛び出すソルジャーという単語にハテナマークしか浮かばない境輔。

ただ単純な英単語ではなく、別の意味がある事は確かであった。


一方のユヒナ。あとは真木田を捕らえればそれで終わりである。

他の構成員も外にいるハインが食い止め、残らず始末されているだろう。


真木田はもう後がない。乗り込まれる前までとは違い、今は圧倒的に不利だ。

牙楽を退けられ、自分が理事長の情報を得るために企んだ計画も・・・・

バカな所もあるが喧嘩もシノギも上手い優秀な部下達も・・・

こんな簡単に潰されてしまうとは思ってもいなかったのであった・・・



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