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ソルジャーズ・スカイスクレーパー  作者: オウサキ・セファー
第三章 プレゼンス・サード -航路の行方-
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第6話 ゲーセンにて

制服姿の学生、私服やスーツ姿の大人で賑わうゲームセンターの中を適当にブラブラと歩く。

エスカレーターで上の階へ上がり、タカシとコージを捜してウロウロと・・・


しかし二人らしき姿を見かけない。二人とも一体、どこに行ったんだか・・・・

はぐれてまだそんなに時間も経ってないはずだ。


右手の時計にふと目を通すと時間は気がついたら18時55分。

この時間帯でも多くの人で賑わっているゲームセンター。

薄暗い部屋を照明やゲームの筐体から出る光が鮮やかに照らしている。


この時間帯で遊んでる学生は勿論、みんな高校生以上だ。

中学生でこの時間になってもこっそり忍び込もうものなら、

さっき入口で連行されていった男子学生みたいに最悪、シーガルスの御用となる。


では、普段着姿で大学生などに混じったらどうなるのか。

住んでる部屋に一旦帰宅し、着替えて普段着の格好で忍び込めば

バレないと一度は誰でも考えるだろう。


が、シーガルスの団員も店員もそれで騙されるほど甘くない。

怪しいと思ったらすぐさま声をかけ、年齢確認のために学生証の提示を要求する。

断れば、問答無用で学年関係なく店から追い出す。


なので普段着姿でこの時間に遊ぶ高校生や見た目で

年齢を間違えられる学生は学生証の携帯は欠かせない。

また、このシステムによって中学生と間違えられる高校生は

精神衛生上、ゲーセンに行きづらいだろう。


現在僕がいるフロアはクレーンゲームがたくさん並んでるフロア、2階だ。

可愛らしいぬいぐるみや最近話題のアニメのフィギュア、

アクセサリーなどが入った四角い大きなガラスケースの筐体がズラリと並ぶ。


ある者はやっとの思いで景品を確保して飛び上がるほど喜び・・・


ある者は景品が取れず大金を損して泣く泣くその場を諦め・・・


そしてある者は・・・筐体の中でグラグラしてるフィギュア一つのために

札を何枚も両替して筐体の前から一歩も動かない。


よくある光景だ。僕もクレーンゲームはやった事はある。

最も、どこぞの達人みたいなポロポロとフィギュアやぬいぐるみも

取れる能力なんてものはない。

せいぜい、一個取れればそれで満足と言った所だ・・・・


歩き回ってみるが、ここにも二人ともいないようだ。

どこに行ったんだ・・・・?ったく・・・・


ここじゃないな。上の階へ行こう。エスカレーターで3階に上がっていく。

3階は音ゲーフロアだ。音楽に合わせてダンスしたり、ボタンにタッチしたり、

鍵盤状の筐体を演奏したりするゲームがたくさんあるフロアだ。

自分の愛用のイヤホンやヘッドホンを持ち込み、筐体に繋げてプレイしてる客も多くいる場所だ。


エスカレーターで3階に上がるとそこも多くの客で賑わっていた。

青く光ったり、ピンク色に光ったりと一際カラフルな色を放つ筐体が並ぶこのフロアは、

徘徊する客と軽快なリズムでゲームを楽しむ客で溢れていた。


僕はダンスゲームはゲーセンに来たら一回はやっている。

「ステップライブ」という名前の音ゲーがある。

それは筐体のステージの上にて足でステップを踏み、

時に筐体左右、天井とリズムに合わせてパネルをタッチしていく

全身を使ったスポーツのようなダンスゲームだ。通称、「ステプラ」。

足だけでなく手も動かすから、これが結構良い運動になるんだよなあ・・・・


もしかしたらタカシとコージもここにいるかもしれない。

二人してステプラやってるんじゃないだろうか。

そういえば忙しくなる前は三人でステプラで盛り上がった事もある。


僕は人々が行き来するフロア内を歩き始めた。

青い制服を着た男子学生がヘッドホンをして画面上に描かれた円をタッチする音ゲーを楽しんでいたり、

黄色い制服の二人組の女子が太鼓を演奏するゲームに熱中していたりと、

様々な学生が時に一人で、時に友達を連れ添ってゲームを楽しんでいる。

色んな色の制服着た連中がゲーセンに集う様・・・これもこの島ならではの光景である。


しばらくフロアを歩き回っているとステプラをやっている二人の女子が目に映った。

それだけなら普通の光景だが、その女子達は周囲の制服姿の学生達や僕らのような大学生とはどこか違った。

それが気になった僕はふとその場に足を止めた。


僕から見て奥の女子は白い白衣を着ている。

薄い緑色のおかっぱ頭にふちが緑色の四角いメガネをかけている。

白衣の中にはワイシャツを着ており、紺色のズボンを履いている。

身長も小柄だが、この時間に中学生はいない。高校生だろう。


手前の女子は桜の花のように綺麗なピンク色の長い髪に白く健康的な細い手、

黒いタンクトップに青いホットパンツを履いており、スレンダーな体格がよく分かる。

靴下はグレーと黒のシマシマ模様だ。身長も僕よりは低いが他の女子より少し高めでスタイルも良い。

活発すぎる雰囲気だ。彼女も高校生だろう。


ステプラは互いに手すりに囲まれた四角い筐体のステージの上に乗り、音楽に合わせて、

9つのうち光ったパネルの上で足でステップを踏んだり、左右天井のパネルを手でタッチするゲーム。

無論、曲や難易度選択によってバリエーションも幅広い。

全身をとにかく動かすため、高難易度だとハイスコアを取るのに体力も要求される。


筐体正面には四角い画面があるが、演奏中は赤、青、ピンクと

カラフルな音符がくねくねと右から左へ次々と流れていく。

その音符一つ一つはダンスの動作をこなす度に弾む。

時々流れてくるボーナスの黄色い音符を弾ませれば高得点。

100円を入れてモード選択なども正面の画面から行う。


二人とも互いに音楽のリズムから外れる事なく、

筐体のステージで手を伸ばし、上、左、右。

続けて両足を広げ、軽快にリズムをとっている。


横に二つそれぞれ並ぶステージで互いにダンスバトルを繰り広げている。

更に筐体の真上にあるギャラリー用の画面の右上には

僕もクリアした事がない難易度「very hard」と書かれたピンク色の文字があった。


選曲も無茶苦茶難しいやつだ・・・・これ動画サイトで少し前に流行った歌じゃないか。

アール作曲の「パラダイス・サマー」。

真夏の暑さを投影したような激しい演奏と取るのが難しい高速リズムが

共存している低難易度でも難しい曲だ・・・


"アール"。動画サイトで度々ボーカル付きのオリジナル曲を動画を通して発表している作曲家。

名前の由来はフランス語で「芸術」を意味するArtアールから来ていて、

僕もこの人の作る曲はプレイヤーに入れて聴いて日々励みにしている。

この人の作る独特なセンス溢れる曲は数多の歌い手が歌い、

中でも傑作な物は音楽動画のアクセスランキングでトップに立つ事はよくある上、

カラオケでも配信が決定するなど、凄まじい勢いだ。


「すげえ・・・・両者とも全然ステップ踏み外してねえぞ!」


「この二人一体なんなの?」


二人の対戦を驚嘆しながら見ているギャラリーも筐体の周りに多くいた。

両者とも動きもリズミカルで、両手を広げ、次に前、後ろと足を素早く動かしてステップを踏む。


互いの筐体の真上にあるギャラリー用に作られた画面。

「very hard」の文字が右上にある画面にはそれぞれの筐体の視点から見た映像が映り、

それを背景に音符が右から左へと川のようにクネクネと流れてくる。

白衣女子とピンク髪女子ともにダンスのステップに大きなミスはない。

たまに弾まない音符こそあるが、流れてくるほぼ全ての音符が弾み、

互角のダンスバトルを繰り広げている。


白衣女子は着ている白衣の裾が激しい動きで舞い上がろうがどうでもいいようだ。

華奢で肩幅も小さい体を包むそれを脱ぐ様子も見せない。

一方、ピンク髪女子は後ろの腰まで届く長い髪がゆらゆらと背中で揺れていてどこか可愛らしい。


このベリーハードモードは通常のハードモードを上回る最高難易度だ。

素早い足と手の動きを要求され、ちょっとでも外すと後から盛り返すのが難しい。

が、あの女子二人はそんな事お構いなしにどんどんこなしている。


ハードは上級者、ベリーハードは超上級者の聖域と呼ばれているが、その差は歴然。

一番簡単な曲でハードとベリーハード両方やってもその違いは歴然だ。

リズムとステップの数が格段に違うのだから。

特に「パラダイス・サマー」でベリーハードは最凶に近い難易度だ。


なお、僕が選ぶ難易度はノーマル、時々ハードモードと言った所だ。

ゲーセンに来るのは久しぶりだが、以前はそれぐらいでやっていた。


この二人・・・・どちらもミスが殆どない。

ピンク髪女子はタンクトップにホットパンツと、

いかにも活発な動きやすい格好で体力もありそうだが、

インドア派を思わせる格好の白衣女子の方も見た目に反して体力はあるようだ。

動く度に白衣が舞い上がってるが。


本当に真剣勝負だ・・・・どちらも光った場所に同時に体が動く。


一体、どっちが勝つんだ・・・・・?


両者の足と手の動きをよく見てみるが素早く動くそれらは

目で追っても追いきれず、それだけではミスをしているのかも分からない。

画面の音符で初めてミスが分かる。


二人の女子のダンスバトルをしばらく見物していると曲が終わり、

スコアの結果発表が始まった。当然、高い方が勝ちだ。

あと、このゲームは評価ランクもある。Eが最低でSSSが最高だ。

だが、トリプルエスは滅多に取れない。


互いの筐体の正面と真上の画面がルーレットのように、

数字とランクが目まぐるしく変化する。


二人の女子も動きを止めて結果を見守る。


画面内の数字とランクが目まぐるしく変化し、止まった。


デーン!!!という効果音とともに結果が画面が表示された。


結果は・・・・・



白衣女子。ランクS。スコア142333。



ピンク髪女子。ランクS。スコア154555。



「おお!!」見ていたギャラリー達から驚きの声があがった。

さすがにSSやSSSまでは行かないか・・・

しかし、この曲と難易度でSまで行くあたりさすがだ。



結果は一目瞭然。わずかな僅差でピンク髪女子の勝利だ。


「おお、ユヒナちゃんが勝ちやがった!!」


「アークライトもすげえがユヒナもすげえな」


ギャラリー達が二人を賞賛する。

どうやら、白衣女子はアークライトという名前らしい。

ピンク髪の女子の方の名前はユヒナ。


「いや~、まさか僅差で負けてしまうとは・・・・

 ちょっとここに来る前に体力を消費しすぎてしまったようですね。てへへ」


アークライトは自分のいた筐体から降りると隣の筐体にいるユヒナの下へと歩み寄り、

自分の頭の後ろをかきながら苦笑する。


「でも勝負してくれてありがとう。アークライト。

 私は良い勝負だったと思うよ」


ユヒナという女子は満足そうに微笑んだ。


「また練習して、出直しますよ」


どうやらギャラリーから名前を知られているあたり、

ちょっとした有名人のようだが・・・・


ここでゲーセン内の空気に慣れた所でちょうど思い出した。

そうだ、僕が最後にここのゲーセン来たのは今年の2月の半ば以来だ。

久々にここに来た訳だが僕もあの二人は知らない。

あの二人はここによく来る常連なのか?

が、名前を知られているあたり、無名ではなさそうだ。


と、そろそろ行くか。この階捜して上の階に行こう。


「ねえ、次に私と勝負したいのは・・・・あなただよね?」


「へ?」


足を動かそうとしたら不意に声をかけられたので足を止めた。


声の主はユヒナだった。後ろの長いピンク髪をなびかせ、僕の前に近づいてくる。

黄緑色の綺麗な瞳でこちらを見ている。


「なんでそうなるんだ?」


「だってあなたが立ってる場所。ほら、並び場所の最前列♪」


ユヒナはにっこりした顔のまま左手で下を指差す。そう言われて足元を見る。

僕の足の先にはちょうど青いテープが境界線として貼られていた。

白い床に貼られたそれは混雑した時に形成される列の最前列を表す境界線だった。


どうやら今回は列は出来ていないが、たまたま気づかずに

その境界線の前に僕は立ってしまっていた。


背後を見るとギャラリー達も前に出る奴は一人もいない。

視線だけで、僕に早くしろというメッセージを送ってるようだった。

また、中には次の勝負を楽しみにしている奴も。

いつの間にかアークライトの姿も消えていた。


これはもう・・・・逃げられないな。


「なるほどな。分かった。受けてたとう」僕は気を強くして言い切った。


「ありがとう。じゃあ、勝負しましょ。負けないからね!」


そう元気に意気込みながらユヒナは右側の筐体に駆けていった。

明るく可愛げがある女子だ・・・凛々しくて笑顔が眩しい。


「おう!こっちだって負けねぇからな!」


僕もそれに右手で拳を握って強気で答え、対する左の筐体に歩いて向かった。


2月の半ば・・・・約4ヶ月半のブランクはあるが、

その前はよくここで遊んだ。今はやるしかない。


筐体のステージに立つ。右肩にかけていたカバンをステージの端のカゴに放り込む。

正面画面手前のボタンやレバーがある右脇に100円を入れる穴がある。

そこに100円を入れ、レバーを動かし対戦モード「バトル」を選択。


100円一枚につき、3クレジット。3曲まで遊べる。

対戦の場合はまず、1Pか2Pどちらが先に曲を選ぶかを指定かランダムにするかを選べる。

2曲目以降は1曲目選んでない方が曲を選ぶ。つまり、選択権は交互交互となる。

難易度はその都度、曲を選ぶ側が決める事になる。


「曲はあなたが先に選んでいいよ。私はさっき選んじゃったから」


隣の筐体にいるユヒナもステージに立ち、筐体に100円を入れて同様の動作をすると

こちらを向いて余裕な感じで選択権を譲ってくる。


画面を見ると既に2Pのユヒナのカーソルが「自由に選択」を選択している。

僕もそれに続くと選択権を1Pと2Pどちらにするかの画面になる。

1Pが僕で、2Pがユヒナ。


ユヒナはすかさず、1Pを選択。僕もそれに続く。


すると僕の目の前の画面は曲の選択画面に移行した。

アニメ・ゲーム、ドラマ、テレビ番組、日本音楽、海外音楽、

ネットなど様々なジャンルから選択可能だ。


が、この画面が出た時点で僕はもう、何の曲にするかをこの瞬間決めた。


これだ。


アール作曲の「アクセル!!ゴートレイン!!!」。


どこまでも突っ走っていきたくなる元気溢れる名曲だ。

カラオケでも歌うし、このゲームをやる上でもよく選ぶ。

難易度はここは久しぶりだし、ノーマル。


この曲には辛い時、よく励まされてきた。

でも「水無月の悲劇」の時はこの曲も聴く気がないほど落ち込んだものだ。



選択直後、すぐさまダンスは始まる。

僕は曲が始まり、パネルが光りだすと最初のステップを踏んだ・・・・


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