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ソルジャーズ・スカイスクレーパー  作者: オウサキ・セファー
第二章 トリカブトの華
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第32話 不死身の敵

正面から樫木が潜んでいるビルに突入する事が

出来なかった私は一旦、ビルの裏口へとすかさず走った。



ビルの表口から右の方へ行き、右に回る。

細い住宅街の道を通り、ビルの裏側に回った。



裏側へと回ってみるとそこは広い駐車場が広がっていた。

ビルの敷地内の駐車場だ。

たくさん車を駐める広大なスペースがある。


だが、ビルそのものがもう使われていないため、この場所に車は一台もなく、

ただコンクリートに白い境界線が引かれて

駐車場としての形を残したままのビルの裏の広大な空き地と化してしまっている。



この裏側からビルの方へ目を通し、裏口がないか探していると

避難用の鉄の非常階段がビルの外側で8階の屋上まで伸びていた。



階段の傍まで行ってみると階段の入口の前に

ここを塞ぐための白い鉄柵の扉がコンクリートの上に放置されていた。


放置された扉に損傷はなく、ただ、扉を元あった場所から

無理矢理剥がして捨てたような状態だった。


恐らく営業時間外に空き巣に非常階段を使わせない防犯目的で作られた扉・・・・

これを破壊したのはここを利用している樫木の仕業だろうか・・・・


扉の回りも横からよじ登って階段に潜入出来ないように鉄柵の壁に覆われていて、

必要な時は誰かが鍵を開けていたのかもしれない。


私はその非常階段を駆け上がった。足音だけがカンカンと耳につくように響く。

向かう場所は樫木のいる7階。そして、7階に着くと非常口のドアノブを引っ張る。



ガチャガチャ・・・・・



ガンッ!!!



ガンッ!!!



ドアノブを引っ張るが開かない。

ダメだ、鍵がかかっている。だが、すぐ上は屋上だ。

屋上から中に入れないか・・・・私は階段を上がり、屋上へ登った。



屋上は何もない更地。乗り上げられるぐらいの鉄柵で回りは覆われている。

奥の左手に中へ入るためのドアがある。

ドアの右手には更にその高台を上がる鉄で出来たハシゴもある。



私はその屋上のドアの前に向かい、ドアノブを引っ張った。



ガチャガチャ・・・・・



ガンッ!ガンッ!



ドアノブを引っ張るも開かない。

ダメだ・・・・ここも鍵がかかっている。

私は別の入口がないか探すために一旦非常階段の方向へと戻る。



こうなれば・・・・・・

手荒だが、こじ開けて、無理矢理でも入る手段も考えるべきか・・・・



樫木に気づかれてしまう危険性もあるが・・・・




「おおっと、お探しの物はこれかな?」




「!?」



私が非常階段へと戻ろうとすると、

その方向から凛とした芝居がかった口調の男の声が聞こえた。



その男は痩せ型で長身、左肩に水色のキザギザ模様が入った灰色コート、

少し青色がかった長髪、青い大きなゴーグルをかけている。


男は右手に持った鍵の先端を見せびらかすように持って

ちょうど歩いて私が登ってきた階段から現れた。



その男もまた、私には見覚えがあった。




「く、スカール・・・・・・!」




「やっぱり来たな、フォルテシア・・・・・!」




そこにいたのはスカールだった。犯罪組織ダークメア№2。

奴の・・・・レーツァンの腹心だ・・・・・・



出てきた理由も察しがつく。

ニヤリと笑うスカール。まさかこんなとこで出くわすとは・・・・・



スカールは本来の荒れた口調で喋り出す。



「生真面目公務員のお前の事だ・・・よほどの事がない限り、

 民間の建物であるこのビルを最初から正面の扉

 ぶち壊して入るような豪快なマネはしないだろう・・・・」



「だからこうして裏口全てに鍵をかけさせてもらった」



スカールは持っている鍵をポケットにしまいながら言った。




「全てあの男の命令のようですね、スカール」



「あぁ・・・・今頃、俺達のレーツァンは

 中で裏切り者にして最大の問題児である、樫木を捜し回ってる頃だろうよ」



他のダークメア幹部の中でもスカールは特にレーツァンに心酔している。

レーツァンに私達が来れないようにするよう命令されてここにいるのだろう。



そういえば、一足先に来たという

モロヅミは・・・・・無事だろうか・・・・・




「モロヅミは・・・・モロヅミは無事なんですか!?」




「モロヅミ??さぁな。俺達は俺達でこのビルに着いた時、

 ちょうど乗り込もうとしてたJGBの捜査員が二人いたが・・・・」




「二人・・・・・!それで・・・・二人はどこに・・・・!」



間違いない、それはモロヅミとクラスコだ。



「フッ」





歯を出し、ニッと笑いを浮かべるスカール。



「一人はカヴラとタランティーノにやらせた。

 もう一人の奴は俺達の横を抜けてすげえ早さでビルの中入っていったな。

 だが、もうとっくに同じくその後ビルに入ったレーツァンが殺ってるかもなぁ・・・・!」



彼が言う一人はクラスコしかないだろう。

モロヅミ・・・・まさか、もうレーツァンと・・・・・



「・・・・・スカール、鍵を渡さないというのなら、力づくでも渡してもらいます」



とにかく、早くビル内部に入らなければ・・・

しかし、この男に時間をかけていては全て手遅れになる・・・・

時間がない・・・・・そのためには・・・・



「そうこなくちゃなぁ・・・・待ってるのも飽き飽きしていたとこだ。

 お前とレーツァンが戦えばどさくさに紛れて樫木に逃げられちまうかもしれないだろ?

 だから・・・・・」



スカールのソルジャーソウルが体からオーラとなって少しずつ燃え上がる。

白色にわずかな水色が混ざった色をしたそのソウルはスカールの闘士を高めていく。




「お前はこっから先には進ませねえぜぇ!!!」




スカールは叫ぶとこちらに向かって走ってくる。

私も素早く両手で懐から投げナイフを手に取り、応戦に入る。



「おらぁっ!!!」



スカールの右足を大きく上げた蹴りを横に避ける。

私はその攻撃の隙を突き右手の指と指に挟む

三本のナイフをスカールにまとめて投げつけた。



「ハッ!!!」



横から飛んでくるナイフに反応したスカールは軽く笑う。

すかさず高い身体能力で素早く右、左と瞬時に移動してそれらを回避した。

その際のスカールは体が白にわずかな水色が混じった光に包まれていた。

まるで、影のようだった。



光に包まれたスカールはすぐに少し私から離れた場所に背を低くし、

右手を地面についた状態で現れて立ち上がる。

同時に体を包む光も消える。



そして懐から黒いグルカナイフを取り出し鞘から抜いて斬りかかってきた。

右手でグルカナイフを振り下ろして襲いかかるスカール。

私も投げナイフを両手の指に三本ずつ挟みながら直接迎え撃つ。



ガシャン!!カシン!!ガシャーーーン!!



私のナイフとスカールのグルカナイフが激しくぶつかり合う。

スカールは常に戦いを楽しむような笑みを浮かべている。



私のナイフよりもスカールのグルカナイフの方が大きく

リーチが長いが受け止めるのには十分。


だが、こうしていつまでも打ち合っているわけにはいかない。

どうにか奴から鍵を奪い取れればいいのだが・・・・



「はははは、俺の能力はお前にも分かってるよな!!

 簡単に殺れると思ったら大間違いだ!!おらぁっ!!!」



喋りながら右手のグルカナイフでを振り下ろしてくるスカール。

私もそれをナイフで防ぎながら対抗策を考える。



そもそも彼の能力・・・・彼はダークメアではレーツァンと

並んで得体の知れない力を持っている厄介なソルジャーだ。



その全容は私も知らない。

一つ分かる事は彼はどんなに重傷を負っても"平気"だという事だ。



完全に打ち破る方法が見えない・・・・・



いつまでも彼と戦っていては時間の浪費だ。

レーツァンがいる以上、また命が危ないモロヅミもいる以上、

また樫木逮捕のためにも彼に時間をかけてはいけない。




私は少し早いが、ここはアレを放つ事を決めた。




私は打ち合いから後ろに少しずつ距離をとり、スカールから離れ、

屋上奥の左にあるビル内部への入口があるドアまで行き、

その右手にある鉄のハシゴの前で高く跳んで、ハシゴを使う事なく高台に登った。



そして、下にいてこちらを見ているスカールを見下ろしながら

ナイフをしまい、両腕の平に力を集中、目を閉じ、精神を集中させた。



この技は出来れば樫木との戦いまでにとっておきたいのだが・・・・・仕方がない。



「なんのつもりだ・・・・?」



何が起こるか分からないスカールはその場から私の様子を奇妙に思う以外動かない。

よし、これならばいけるかもしれない。

時間との勝負、"あの技"を使われる前に鍵を奪えばいい。



私の・・・・千の刃で眼前の敵を残らず引き裂く・・・・奥義・・・・・・



集中を終えると私はそこから高く跳ぶ。

空中からそのままこちらを見上げるスカールに狙いを定め・・・・・






「千の光の刃の下に・・・・散りなさい」





「・・・・・・・行けっ!!!」





「タウゼント・メッサーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」






私の力で作り出した、無数のナイフ状の金色の光の刃。

それらは私が両手を前にやると一斉にその方向へ・・・

雨のようにスカールに降り注ぐ。



両手に精神を集中させ、無数の千の光の刃を作り出し、

私の全身から光輝く無数の刃を一斉掃射する「タウゼント・メッサー」。私の奥義だ。




降り注ぐ光の刃の雨は辺りを眩い金色の光に照らしながらスカールを襲う。





「な!?こんな大技をいきなり出して・・・・後でどうなるか・・・・・・」




「ぐァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ

 ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ

 ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」



降り注ぐ無数の光の刃は地上にいるスカールを直撃、

彼の壮絶な断末魔は光の刃の雨が降り止むまで止まる事はなかった。



この技は一度受ければ、止むまで並大抵の敵は連続したダメージで動けない。

だが、この技は私のエネルギーを多く消費する。連発は出来ない。

樫木戦でも使えるかどうか怪しい・・・だから私は奥義と呼んでいる。



「ぐ・・・・・ァ・・・・・・」



光の刃の雨が止み、辺りがまた夜の闇に包まれると

スカールはその場に膝をつき、ボロボロな姿でうつ伏せで倒れた。

大きく口を開けて、白目を向いている。


本来ならば、大量出血は免れないほどの攻撃。普通の人間ならば間違いなく死ぬ。

しかし、彼は一切、これだけの攻撃を受けたのに全く出血もしていない。

服や髪がボロボロになるだけのダメージを受けている。



これも謎だ・・・・過去にもロケットランチャーの攻撃を

生身で受け止めて、血一つ流していなかったのだから。



奥義を出し終えた私も空中からスカールの近くに着地、スカールは動かない。



彼が動かないうちに右手ポケットにある鍵を奪い取った。



そして、その場を後にしようと非常階段で7階へと向かう。





が、階段を降り始めたその時だった。





修復レスト・・・・・・」






私の背後で呟いた声がする。不気味で異様に響く声と共に倒れている

スカールの体は眩い白く、わずかな水色が混ざった光に包まれる。




まずい・・・・復活してしまう・・・・・・

私は危機感から急いでこの場を駆け足で後にした。やはりだった。やはり復活した。




このように、彼はどんなにダメージを受けてもすぐ復活する。無論、無傷で。

私の相手の能力を封じる力も彼に対して効いているのかというと微妙な所だ。

投げナイフ動揺にタウゼント・メッサーにもそれは働いている。

受ければ能力はしばらく使えないし、ソウルをたぎらせることも出来ない。



しかし、スカールは刃物で斬られようが爆破に巻き込まれようが血を流さない。

痛々しくダメージを効果抜群で受けている様子を感じさせない。

しかし、髪や服はダメージを受ける。



まさに攻撃するだけでは・・・・

いや、普通に攻撃するだけでは倒せないであろう不死身の敵。



レーツァンの傍らに彼がいるのも、

レーツァンに危機が迫った時のボディーガードをするため。

彼がレーツァンの隣にいれば、合わせて苦戦を強いられる。



復活するボディーガード・・・・本当に、厄介極まりない。




スカールが完全復活を遂げる前に奪った鍵で7階のドアの鍵を開けて中に入る。

中へ入ると内側からすかさず鍵をかける。



中は明かりがない真っ暗な廊下が続き、左右の壁の所々に様々な部屋に続くドアがある。



真っ暗でこのまま歩くのは不便だ・・・・私はポケットから

小さな丸い小型懐中電灯を取り出し、首にかけて明かりを灯した。


同時に、ソウル探知機を右手に持ち、

小型懐中電灯で辺りを照らし、探知機を向けながら少しずつ進む。



小型懐中電灯の光は、予想以上に辺りを視界を保てる程度に明るく照らした。



進めば進むほど、ソウル探知機の反応がどんどん強くなっている。

辺りは懐中電灯の光以外は静寂と暗闇に包まれており、

キュインキュインとソウル探知機のアンテナの電波音だけが静かに響く。



その反応を辿り、殆ど何もないいくつかの部屋のドアを通り抜ける。

部屋の中は何も置かれていない古ぼけた長いオフィス用のテーブルが

至る所に放置されているが、棚の中や本立てには何もない。


また、床も壁も全てが灰色。先ほど生放送で映った部屋に似ていた。

元々は普通のオフィスビルだったのだろう。

一方で、古ぼけてはいるがテーブルや棚はそのまま放置されているあたり、

まるでビルごと捨てられたかのような雰囲気だ。



また、6階と屋上へ続く階段の横を通り過ぎ、

ただひたすら暗闇に包まれた雑居ビルの

7階を歩いていると、ある一室のドアの前にたどり着いた。



探知機の反応が激しくなっている。ここで間違いない。ここに樫木がいる。

私は探知機をしまい、懐中電灯を消し、準備を整えると

そっと右手でドアを開けた・・・・・



ガチャ・・・・・・


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