第31話 各地の戦況
「クソッ!!フォルテシアめ・・・・!!」
フォルテシアを追いかけ、全速力で走り、交差点で立ち止まる。
そう息を吐きながらこぼしたのはカヴラ。
二つの投げナイフで右胸を刺され、右頬も蹴られ、その痛みを堪えつつも
フォルテシアを追ったが見失ってしまっていた。
ナイフは抜いたが、痛みがジワジワと感じる。
辺りをキョロキョロしてフォルテシアの姿がないか捜す。
しかし、真夜中の街は冷たい空気と暗闇、静寂しかなく人影もない。
せいぜい言うならコンビニの看板や街路灯などの微かな光だけ。
道路を挟んで右側には樫木が籠城している大きなビルがある。
フォルテシアは既にあの中に入ったに違いない。
みすみす逃がすわけにはいかない。
ボスからは足止めを命じられているが、構わない。
自分が後方から迫って、追い詰めればいいんだ。
そう考え、目の前の横断歩道を無視して車が通る気配のない
アスファルトの上を歩き出し、ビルの方向へと真っ直ぐ向かうカヴラ。
「おい」
後ろから響く因縁づけた荒い自分を呼ぶ声。
それは喧嘩を売る際の一声に等しかった。
同時に聞いた事がある声でもあった。
「あぁ~~~~ん?」
カヴラは声を伸ばしながら相手に鋭い眼差しを
向けながら、威嚇する態度で背後を向いた。
「お前か・・・・・・・」
動じる事もなく、カヴラには顔を見る直前から、
だいたい声の主は誰か分かっていた。
「フッフフフフフフ・・・・・・・!」
そこに立っていたのはヴィルヘルム・ゲーリングだった。
言わずと知れたJGB東京支部の現支部長。
丸いメガネにパーマがかかった長い黒髪、派手な紫色のコートを着た不敵に笑う男。
筋骨隆々な大男のカヴラよりも身長は低いが余裕な物腰で佇んでいた。
「東京支部のお前がなんで、ここにいやがんだ?」
「別に・・・・フォルテシアに言われてはるばる新宿から
車走らせて来ただけだ。文句あっか?」
「岩龍会の奴らだけじゃモノ足りねえと思ってた所にお前がいた。それだけだ」
追求されても特に動じず、不敵な目でカヴラを睨みつけ、
淡々と答えるヴィルヘルム。
「カヴラ。獲物を捜してるって言うんなら・・・・オレが相手になるぜ」
「シャーッ!!いいだろう・・・・・面白ェ・・・・
佐官クラスに喧嘩売られちゃ黙っておけねぇな・・・買うぜぇ!!!」
やる気満々で闘士に火をつけられ、燃え上がるカヴラは
両手の拳を前に向けて構えた。
対し、ヴィルヘルムの体から少しずつ黒色・・・・
ランプブラックのソウルが炎の如く、怪しく少しずつ燃え上がる。
「爬虫類は火に弱いというが・・・・受けきれるか?」
そっと軽く右手を前に出し、カヴラに向けて広げる。
「シュバルツ・フォイア」
挨拶がわりと言わんばかりに余裕に満ちた口調と
共に右手の平から放たれる黒く燃え上がる小さい炎の玉。
「ヴェノムブレス!!!」
対するカヴラは口を大きく開け、渦を巻いた大量の紫の毒液を吐き出した。
喰らえば、一瞬でヴィルヘルムを飲み込んでしまうほどの大きさだ。
それは黒い炎の弾も余裕で粉砕し、突き抜けてヴィルヘルムに襲いかかる。
するとヴィルヘルムは横に跳び、
迫り来る毒液の柱を避け、着地と同時に左手を地面についた。
「おうおう・・・・いきなりデカイの撃ってくるとはなぁ」
その場から立ち上がり、余裕の表情を浮かべるヴィルヘルム。
毒液の柱は彼の横を抜けていき、誰もいないアスファルトの上を紫色に染める。
「そこだぁ!!!」
続けて、カヴラは再度ヴィルヘルムを狙って
紫の毒液の弾を口から三連続で放った。
連続して放たれた三つの毒液弾はまっすぐに飛んでくる。
ちょうど人の顔一つを覆うサイズだ。
「ふんっ・・・・・そんなものか!!」
飛んでくる毒液弾を次々と燃える両手の黒い炎の拳で粉砕する。
右手で一つ、左手でまたもう一つ、更に最後の一つをもう一度右手の拳で殴って粉砕。
相手を挑発する余裕の笑みを浮かべ続けるヴィルヘルム。
「ポイズナックルッ!!!」カヴラは右腕に紫の毒液を纏う。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
紫の毒液で覆われた右手を上げて殴りかかるカヴラ。
カヴラが近づいてきたところで、
「シュバルツ・シュラ―ク」
ヴィルヘルムも右腕を黒く燃える炎で覆い、迎撃する。
ガシンッ!!!!バァンッ!!!!
それぞれの属性を帯びた拳は一度ぶつかると軽い爆発が起こり、
両者は距離を互いに離される。
煙が立ち込める中、立ち上がり、睨み合う両者。
「シャーッ・・・・・面白ェ・・・・・」
「拳を交えるとゾクゾクするぜ・・・・そう来なくっちゃなぁ!!
こうなりゃ・・・この鍛え上げた肉体でとことんやるぜぇ・・・・・!!」
最初の大技と次の技も軽く防がれるカヴラであったが、
拳を交えた接近戦になった途端、その表情は高揚としたものに変わる。
ヴィルヘルムの黒く燃える拳。それと自分の拳がぶつかり合う。
それだけでも彼にとっては興奮モノであった。強い相手と戦えるのだから。
「来いよ、スネーク野郎・・・・そのムダに鍛え上げた肉体ごと、燃やしてやる」
手招きをし、挑発するヴィルヘルム。
「んだとごらぁ!!!この日々、磨き上げた肉体をムダだとぉ!?
侮辱するたぁいい度胸だ!!質量で捻り潰してやるぅ!!」
小馬鹿にされ、激昂し再び、彼に襲いかかるカヴラ。
それぞれの属性を持った拳が互いにぶつかり合う。
両者ともに距離を頻繁にとり、そしてまた拳をぶつけ合う。
やがて、拳と足がぶつかり合う接戦となる。
「うらぁ!!!!!」
カヴラが掛け声と共に毒液を纏った拳を前に出すと
ヴィルヘルムも黒い炎の拳で応戦し、拳をぶつける中、彼が隙を突いて、
右足で蹴りを入れようとするとカヴラも太い足で応戦する。
拳技と足技・・・・互いに素早く相殺を繰り返す殴り合い。
特に拳同士の殴り合いはそれぞれが扱う属性を持った拳の殴り合い。
度々、強い力を出し合えば出し合うほど小さい爆発が起こり、互いに距離を離される。
やがて両者とも相手がなかなか倒れる様子がない事を察し、
再び爆発で距離が離れた後・・・・・
「ダブル・ポイズナックルッ!!!!!」
カヴラの両腕が毒液に覆われる。すると対するヴィルヘルムもそれに対抗するかのように、
「ヅヴァイ・シュバルツ・シュラ―ク!」
叫ぶ声がやや大きくなり、両腕を黒く燃える炎で覆う。
アスファルトの上、互いにそれぞれの属性をまとった拳が交差する。
ヴィルヘルムの黒い炎の拳をカヴラが避けると
今度はカヴラが毒の拳を前に突き出すも避けられる。
また、その属性を帯びた拳で相手の拳による攻撃を防ぐ。
そしてまた、反撃する。
黒炎の拳と紫の拳・・・・
暗い色同士が互いにぶつかり合い、衝突し合う。
すると一旦、互いに一歩距離をとり、ヴィルヘルムが口を開く。
「上手く属性攻撃を駆使してオレの炎の"特性"を凌いでるようだな」
「あぁ、オレはめっちゃ鍛えてるからなぁ。戦うために・・・!
お前の炎の"特性"も、ガッツとこの拳で十分だ!!」
「ふん・・・・結局の所は"力押し"ってわけか。"野蛮"だな」
静かに軽く鼻で笑うヴィルヘルム。
そう、ヴィルヘルムの黒い炎はただの炎ではない。
それは闇の中で黒く、強く燃え続ける炎。
暗闇の中ではしぶとく燃え続け、威力も増大する。
一度、暗闇の中で引火すれば自力で消火するのも
なかなか困難であり、非常に厄介かつ強力な能力である。
その特性はカヴラも度重なるJGBとの交戦などから理解していた。だが・・・・
「野蛮だと!?ぐっ・・・・・言ってくれるじゃねえか!!!!」
激高し、怒りに身を任せ、走る。
右手の毒の拳を上げて全力でヴィルヘルムの顔に
怒りをこめて殴りかかっていくカヴラであった。
ヴィルヘルムはその一発を首を曲げてサッと横に避けると、
その隙を突いて、右手でカヴラの腹に鉄拳を食らわせる。
その鉄拳は無論、黒い炎を纏い、カヴラを焦がす。
「グゥァァァァァァァッ!!!!」
鉄拳を食らったカヴラは腹を黒い炎に焼かれながら、
その場で勝手にうつ伏せで倒れ、もがく。
「グァッ!!!あちい!!!ちくしょ~~~、食らっちまった!!!」
「・・・・・おらよっと!!」
「グゥァァァァァァァ!!!!!」
地べたで炎にもがくカヴラにヴィルヘルムは余裕に彼の背中に蹴りを食らわせる。
「鍛えた筋肉とさっきまでの威勢はどうした?おらおらーーーっ!!」
「グァッ!!!グゥァッ!!!」
ヴィルヘルムの拷問にハマってしまったカヴラ。
そう、これがJGB東京支部の支部長、ヴィルヘルム・ゲーリングの恐ろしさである。
黒い炎で燃やして苦しむ相手を更に痛めつけて、地獄の拷問を味あわせる。
そんな彼はいつしか、ソルジャー界では
「"拷問悪魔"」の異名を頂戴するまでに至った。
彼に捕まった以上、簡単には逃げられないだろう。
「グゥァァッ!!!」
「グァァァァァァァァァァァァッ!!!」
ヴィルヘルムに何度も蹴られた挙句、トドメと言わんばかりに
思い切り蹴られて、地べたに転がるカヴラ。
腹の炎もカヴラの体重とアスファルトに押し潰されて自然と消えていた。
しかし、これで終わりではないのがカヴラ。
地面に手をついて、ゆっくりと立ち上がる、ボロボロのカヴラ。
カヴラは唇を噛み締め、ヴィルヘルムを睨みつける。
「グゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・・・!」
彼も犯罪組織ダークメアの幹部である。
武闘派と目される彼の日々鍛えたその実力はパワーだけでなく
スタミナも鍛えられている。これだけではくたばらない。
「うらァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
そして、再び余裕な表情で目の前に立っている
ヴィルヘルムに走って殴りかかっていくカヴラであった。
「フッ、こいよ・・・・・・!」
ヴィルヘルムも、左手の指を下から上へと手招きする仕草を見せた後、
そこから動かず、ひたすら突っ込んでくるカヴラを迎え撃つ。
樫木の潜伏場所近くでの道路上での両者の交戦は続いていく。
一方、その同じ頃・・・・・フォルテシアの後を受けたサカ・ハイドマンも
カヴラがフォルテシアを追った事で同様に取り残されていた
犯罪組織ダークメア幹部、タランティーノと熾烈な剣士対決を繰り広げていた。
ガシン!!!ガシン!!!
一本の刃に対し、同時に高速で縦横無尽に襲い来る四本の刃。
それらが激しくぶつかり合う。
一本の刃は四本の刃に対し、一片も隙を与えないが
それを操るサカは四本の刃を操るタランティーノの
勢いに押され、後ろへと少しずつ下がっていく。
「おらぁ!!!!おらおらおらおらおらぁ!!!!」
左右にそれぞれ二つずつ上下に並んだ4本の腕を持つタランティーノ。
それらを活かした四本の剣を高速で振るう事で繰り出される嵐のような斬撃。
一本の剣を巧みに操るサカは粗暴な掛け声と共に繰り出される
それらを巧みに防ぎながらも後ろ、また後ろへと下がりながらも長剣一本で凌いでいく。
「・・・・・・・・っと」
タランティーノは一旦攻撃をやめて背後に少し跳んで距離をとる。
「ハッ・・・ハハハハハハハハハ!!!!」
四本の腕で四本の剣を自在に操り、笑いながら
グルグルと体を三回転させながらの回転斬り攻撃でサカを攻めていく。
回転して襲い来る無数の刃。
それはまるで斜めに回る独楽のように回る。三回素早く回転しては
また再び三回転して・・・・という動作の攻撃を素早く繰り返す。
だが、サカもこのまま黙ってはいなかった。
「藍刀一閃!!」
「うあぁぁぁぁぁっ!!!・・・・・・くっ」
そんな嵐のような攻撃で攻めるタランティーノを突いたサカの一撃が襲う。
見えたと言わんばかりに藍鉄色の光を帯びた自らの剣、藍刀を振り下ろし、
回転と回転の合間の一瞬の隙を突いて、タランティーノの体を左肩から斜めに斬った。
「グッ・・・・・・・」
斬られたタランティーノの左肩から出血が発生し、
上半身から着ている黒のスーツのジャケットと青いワイシャツが赤色で染まる。
「チッ・・・・・!」
タランティーノは唇を噛み、その場から後ろに跳んで大きく距離をとると
かけている黒いサングラスのズレを剣を持っている上部の左手で押し上げて直す。
「やってくれるじゃねえか・・・・・スパイダー・ネットォ!!」
タランティーノは口を開けると白い蜘蛛の巣を吐き出す。
放たれたそれは、蜘蛛の糸で出来た獲物を捕獲するネバネバとした網。
その網はサカを捕らえるべく、大きく広がって高速で飛んでくる。
「はぁっ!!」
しかし、サカは飛んでくる網に対し、動じず剣を抜き、
静かにそれを一刀両断した。
斬られた網は真っ二つになり、
サカの左右を抜けていき、地面に落ちた。
吐き出されたネバネバ蜘蛛の網は地面に粘り付き、
捕えた獲物を逃がさない粘着性を出している。
「防げるものなら防いでみろ!!」
口から続けて放たられるスパイダー・ネット。
今度は三連続で放たれ、並んで飛んできて、
広がるその網は前方の道をほぼ覆い尽くす。
サカはそれを右に跳び、飛んでくる網が向かってくるのを見計らって
右手に剣を手にそこから一気に素早く切り込む。
剣を横に振るい、前方から向かってくる二つの網を横に両断しながら
飛んでくる網を突破すると、その奥にいるタランティーノを狙って、
「藍撃!!!」
素早く剣を下から上に振るうと剣の刃から青白い斜めの斬撃が放たれる。
それは、とてもタランティーノが迎撃しきれない速度で彼を襲う。
「くっっ・・・・・・・!」
目の前まで来た斬撃。
唇を噛み締めながらタランティーノは反射的に
四本の剣を全て交差させて、防御の体制をとる。
斬撃がタランティーノを凄まじい力で押す。
タランティーノもそれを食い止めるべく、剣に力をこめて必死に防ごうとする。
「ぐうっ・・・・・・・抑えきれないか・・・・!」
腕に力をこめるタランティーノ。とにかく耐える。すると・・・・・
バシン!!!!!
斬撃はその場で光の塵となって消滅する。
その衝撃に思わず、交差させていた剣と剣が離れる。
「・・・・・・・・・ふう」
思わず、息をつくタランティーノ。
何とか防ぎ切ったと思ったのも束の間、
上からサカが今にも剣を振りおろし、飛びかかろうとしていた。
「タランティーノ、ここまでだ!!」
その姿を確認するとタランティーノはすぐに反応して
再度剣を全て交差させ、迫り来るサカの奇襲攻撃を防ぐ。
両者の剣が互いに一歩の譲り合う事なく交差する。
「くっ・・・・・・・・・・ぐあっ!!!」
彼の凄まじい剣の強さに後ろに1メートルほど押される。
道路の上には押された自分の足を引きずった後が大きく残った。
「チィッ・・・・・・・!」
「スパイダー・シルク!!」
「・・・・・・・!」
タランティーノが起死回生にサカ目掛けて口から放った蜘蛛の糸。
放たれた蜘蛛の糸は先ほどのように網の形は形成せず、
一直線にまとまって吐き出され、煙のような
モヤモヤした形状でサカに襲いかかる。
サカは後ろに素早く跳び、距離をとる。
蜘蛛の糸はサカまでとどく事なく地面にそっと崩れ落ちた。
先ほどのスパイダー・ネットと違ってネバネバ感はないが、
当たれば体にまとわりつくベタベタとした糸だ。
タランティーノはそれを吐いて退かせる事でサカを自然と退かせた。
それにより、再び両者は距離をとって睨み合う。
「お前達も樫木を狙っているのなら、なぜ我々の邪魔をするんだ?
なぜ無駄に血を流そうとする?」
サカは冷静にタランティーノに問いかけた。
「ハッ・・・・!今更一緒に仲良くアイツと戦いましょうってか?」
「そんな甘い口がよく叩けるな。
"堅実鉄壁の剣技"で知られるJGB副長官さん」
タランティーノはサングラスを光らせ、皮肉交じりに軽く笑う。
「違う。第一、樫木はもう居場所が割れているんだぞ」
サカは首を横に振り、話を続ける。
「もう奴に逃げ場はない。例えこの船橋から逃げ出そうと
他の本部や支部の者が捕まえるだろう。お前達がわざわざ出向かなくてもな」
「なのに、なぜお前達はここに来て妨害に走る?」
「元構成員を始末しようとする"理由"があるんじゃないのか?」
「お前達の親の岩龍会まで動くほどだ。散々な目に合ったというがそれは何なんだ?」
「答えろ」
サカは鋭くタランティーノに強く一言ずつ追求していく。
その追求に対して、タランティーノは押し黙る。
しばらく黙って、その迫力に観念したのか、
タランティーノはそっと口を開いた。
「・・・・・・あぁ、あるよ」
「・・・・・・だが、それは我々の問題であってお前達には関係ない事だ」
「邪魔する奴は切り刻んでいいって言われてんだ。
こっちは命がかかってる。ボスがあのバカ(樫木)を始末しなきゃ・・・・
一巻の終わりなんだよ・・・・・」
そう静かに苛立ちを募らせながら言いつつも再び、
四刀流を構えるタランティーノ。
「だから・・・・・・・・・変な追求するなぁ!!!!!!!!」
タランティーノはそう叫ぶと高く跳び上がる。
そして、宙で円を描き、グルグルと舞いながら落下する。
グルグルと縦に回転しながら落下しながら、
四刀の剣をサカに思い切り、宙から高く振り下ろした。
サカは防御の体制をとって、宙から振り下ろしてきた
タランティーノの剣を一刀で食い止める。
ギ・・・・・・ギ・・・・・・
互いの剣と剣が凌ぎを削り合い、目と目が激しく睨み合う。
「・・・・所詮はヒットマン・・・・・"四丁四刀"のタランティーノ・・・・・
雇われ、支払われた金相応の仕事はするというわけか」
「違うなぁ・・・・!カネもそうだが・・・・
アイツの命令だけはな・・・・絶対なんだよぉ!!」
激高し、声を荒げるタランティーノの四本の剣の力が強まり、
サカはそれを抑えていた剣を離した。
同時に、サングラスの奥にある瞳からは、強い信念と気迫を感じられた。
そこをすかさず、宙にいたタランティーノは着地し、
四本の剣を手に凄まじい凶相を浮かべ、
「ここで這いつくばって死ね・・・・!"堅実鉄壁の剣技"で知られ、
副長官のあんたをここで殺れば、ボスもさぞ喜ぶだろう!!
ハッハハハハハ!!!」
「くっ・・・・・やるしかないか」
そしてそんな彼を仕方なく食い止めようと決心するサカであった。
長官が樫木を捕らえるまで・・・・・
一刀の剣を構え、堅実鉄壁で知られるサカ。
ヴィルヘルムと同様、JGBの重役を担うサカもまた、
巷では大物として知られる一人である。
サカはその名に恥じず、攻めの剣技よりも守りの剣技を得意とする。
相手の動きをどんなに素早くても瞬時に読み、的確な対応をとって戦う。
タランティーノの嵐のような攻撃を全て受け止めたのも、そのためである。
また、その力は、長官であるフォルテシアを守る鉄壁の盾でもある。
サカはタランティーノと剣と剣でぶつかり合い、やがて上部左手の一本の剣を弾き飛ばされるタランティーノ。
手すきになったその手を下部の左手の剣を移して埋めると空いた下部の左手で
懐から銃を素早く取り出し、三本の剣と一丁の銃でサカと衝突する。
ヴィルヘルムも肉弾戦で突っ込んできたカヴラを逆に追い込む。
ヴィルヘルムは炎、カヴラは毒。
黒と紫・・・・似た色の拳が互いにぶつかり合う。
JGB両幹部、ダークメア両幹部、それぞれが交戦中の一方、その同じ頃・・・・
ここは船橋のある閑静な住宅街や雑居ビルが建ち並ぶ方向へと繋がる広い道路。
左右には公園や空き地が広がっている。
JGBの要請を受けた警視庁が検問を敷いてパトカーで通行止めを行い、
続々と船橋入りを企む岩龍会構成員を迂回、あるいは撤退に追い込んでいる。
しかし、検問を敷いて通行止めされて、その全員が大人しく
引き下がるほど彼ら全てが利口ではない。
暴力団、つまりヤクザである彼らの中には血の気が多い構成員も多く、
そのうちの数名が強硬手段で検問を突破すべく、
ワゴン車や黒い乗用車を走らせブレーキを切らずに
検問のパトカーに突撃、強行突破を計った。
車で検問を突き破った後、後続の構成員達は車を降りて
鉄パイプやバットなどの武器を手に襲いかかる。
警官隊を率いて集団で通行止めを行っていた蔭山ら刑事達に戦いを仕掛ける。
そして入り乱れの乱戦となり、岩龍会構成員と
警察官達の小競り合いが繰り広げられていた。
「うわあっ!!!」
乱戦の中、一人の岩龍会構成員を地面に抑え付け、ねじ伏せているのは蔭山。
「車で突撃たぁ、やってくれるじゃねえか!!
公務執行妨害、並びに器物破損で現行犯逮捕だ!!」
蔭山はすかさず、車を突っ込ませた構成員のリーダーでもある
その男の手にコートから取り出した手錠を嵌める。
同時に川口、新田をはじめとした他の刑事達も手下の構成員を次々と
抑えつけ、また取り抑えるなどして次々確保、拘束していく。
「確保ぉ!!!」「確保ぉ!!!」
掛け声が次々と辺りから響いてくる。
検問も力押しで突破してくる過激派の彼らは
もはや暴力団というよりも武装組織に近い。
普段は裏社会でとことん暴力や犯罪を繰り返す猟犬達である。
警官隊を持ってしても、また、戦いに長けた船橋各地で現在も交戦している
JGBの捜査員達も彼らをいつまでも食い止める事にはいずれ限界が来る。
JGBの捜査員達も現在も各地で岩龍会の構成員達と交戦、
入り乱れた乱戦や銃撃戦と化している場所もある。
全員をただ薙ぎ倒せばいい・・・・そんな事では決して止められない。
押し寄せる彼らの侵攻を止めるにはこの事件を早く収束させるしかない。
JGB、あるいはダークメア・・・・・・
どちらかが一連の事件を引き起こした樫木麻彩を確保するまで
この船橋を巻き込んだ攻防戦に終わりはない。
蔭山も周りの刑事達も今回の件に岩龍会も絡んでいる事を悟りつつも、
フォルテシアを信じ、任務を全うするのであった。




