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ソルジャーズ・スカイスクレーパー  作者: オウサキ・セファー
第二章 トリカブトの華
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第22話 再び動き出す事件

神奈川にある樫木家の実況見分及び、

周辺の捜査をした日から三日後。今日は4月18日の火曜日。


俺は川口、新田と共にまた一台の車を走らせてある場所に向かっていた。

白い空に日差しが照りつける空の下、繁華街の中を

他の関係ない車と混じって快調に進んでいく。


予報では午後は珍しくどしゃ降りらしい。

早い所済ませて警視庁に戻らねえと道路が混みそうだ。



しっかし、この雨でもう残りのサクラも全て散りきってしまうんだろうな・・・・

そしてもうすぐゴールデンウィークか・・・・時間が経つのも早い早い。



今向かってる場所は殺人事件の現場でも、イジメ自殺事件の加害者の所でもない。



もう、始まっているんだ・・・・連続殺人事件の犯人との追撃戦が。

このイジメ復讐連続殺人事件の犯人ホシを追い詰めるまであと少しだ・・・・・






昨日の事だ。


昨日の一件で俺達が今捜査している事件の両方の捜査が一気に加速した。



この前の7人目の諸木坂剛が殺された時に開かれた

緊急対策会議の時のようにJGBによる警視庁での話し合いが開かれた。


上層部にはその前日の日曜のうちに事前連絡は行っていたので

緊急ではなかったようだが、俺達のような現場の人間にはあまりに唐突な事だった。



そう・・・・JGBと俺達が共同捜査していたイジメ復讐連続殺人事件。



そして三日前俺達が捜査した神奈川で起こった樫木麻紗紀殺人事件。



この二つの事件は・・・・実は繋がっていた。



3月から起こった一連の連続殺人事件の犯人は、

神奈川の事件に際して今警視庁が全国手配して

情報提供を呼びかけている樫木麻彩だった。



それが判明した瞬間、初耳の俺達を中心にどよめきが走った。

まさか別件で捜査していた事件がこれに関わってくるとは・・・・



フォルテシアは詳しい情報元は公表せず、

JGB東京支部の支部長、ヴィルヘルムが調べていた事で判明した事実と説明した。

現にそのヴィルヘルムも5人目の襲山喜一郎が殺された時から裏で手を回し、

諜報部同様に情報を集めさせていたのだそうだ。



あのチンピラも・・・・やる時はやるもんなんだな。

聞いた時は少し見直した。



東京支部のある新宿にはちょうど裏社会と深く関わる歌舞伎町もある。

あのチンピラ・・・また歌舞伎町から情報引っ張ってきたんだろうか。

だが、ビンゴである事に変わりはない。



そのヴィルヘルムの説明によれば、新直尚隆の家に日曜の未明に

犯人らしき男が襲撃、負傷者二名が出て犯人には逃げられたものの

新直は無事で犯人の正体を確認する事には成功したのだという。



それは体を透明にする能力を持つソルジャーだった。

東京支部が独自に集めていた微かな情報を照合した結果、

それは樫木麻彩である事が分かったらしい。



更に樫木麻彩は今のJGBが先代長官の仇討ちで追いかけている

犯罪組織ダークメアの元構成員だった。


樫木は今年から去年の年末に千葉で起こったイジメ自殺事件を皮切りに

反イジメ活動家の活動に傾倒し、

ボスと組織の方針を巡って対立、組織を今年の1月に追放された。


そしてその2ヶ月後に連続殺人事件は起こり始めた。

なお、樫木がどうやって今回、殺した被害者ガイシャ

居場所を得たかはまだ不明なのだという。



一時間半ぐらいの会だったが、引き続き俺達警視庁も

JGBのバックアップという形で捜査から手を引くことはない。



犯人ホシがソルジャーである場合、俺達はディフェンス、JGBはオフェンスだ。



そう、相手がソルジャーと判明した以上、この事件も捜査権は

JGBと警察半々だったのが、ソルジャー専門のJGBに捜査権は中心的に移行する。




新直の身柄についてはJGB東京支部の方で当分は場所を移して保護するようである。

アイツが勤めている会社にも、JGBの方から事情を最低限説明して、特別休暇をとらせるのだとか。



そりゃそうだろう、犯人に居場所を割られた以上、

また殺しに来るかもしれない。あの家にいれば危険だ。



さすがに社員の命がかかってるのに首を縦に振らない、なんて事はないだろう。

ウソだって向こうが言うのなら、新直に証人になってもらうとか、

その場で警備にあたっていた捜査員が証言するとか、方法はいくらでもある。



最悪、長官や副長官とかが出向くとかの方法だってあるしな。










警視庁が行っている樫木の全国手配の呼びかけに対して、

今回の連続殺人事件、つまりイジメ復讐連続殺人事件の犯人である事もつけ加え、

早急の解決を目指す事も決定された。



だから既に世間は『連続殺人事件の犯人=神奈川の殺人の重要参考人=樫木麻彩』と認識している。



もう、奴に逃げ場はない。



因みに俺達警察も樫木が所属していたというダークメア、

関東最大組織と言われてる岩龍会の存在は知っている。



なぜならコイツら絡みの暴力団が麻薬などを取引しているからだ。

特に岩龍会は表向きは関東最大の極道組織でもある。

歌舞伎町を中心としたその一帯は奴らの巣窟でもあり、絶好の稼ぎ場だ。



俺がいる一課の仕事ではないが、それらについてはマル棒(組織犯罪対策課)の同僚が詳しい。

関係のヤクザを次々と取り締まっている。



だが、ダークメアも岩龍会も、どちらともソルジャー達が集まった組織。


当然、マル棒でも手に負えないから彼らの事件に関する捜査権はJGBが丸ごと持っていて、

マル棒はソルジャーじゃないチンピラやヤクザの違法取引の取り締まり等を中心に動いているのが実情だ。



というか、マル棒は岩龍会系の暴力団組織一つを検挙するだけでも、一つの壁が立ちはだかる。

ソルジャーが一人でもその組織にいればその瞬間、

捜査権はJGBにほとんど持って行かれてしまうからだ。

ゆえにマル棒は手柄をJGBに横取りされるストレスが半端ないと聞く。

『気にするだけ負け』だとも言うようだ。



因みに俺達警察は仕事上ではソルジャーという単純な単語は使わない。

俺達の間では古くからソルジャーは警察用語で"異能力所持者"という言葉を由来にして

生まれた略語で通称、"イシャ"と呼んでいる。


医者ではない。イシャ。あっちのアクセントとは違う。

イで高く上げ、シャで落ちるアクセントと言えばいいだろうか。



最も、この警察用語はソルジャーを指すのではなく、厳密には

とにかく普通の人間にはない特殊な力を持った存在全てを指す意味になっている。


そもそもソルジャーなんて呼び方自体、警察や自衛隊などが作ったものじゃない。

JGBが作ったものとも思えない。裏社会の奴も当たり前に使ってる。

だから俺も起源は知らない。



だが、イシャは警察用語。警察側が勝手につけた名称なのは言うまでもない。

昔の警察は、とにかく俗に言う超能力者と思われるものは全部イシャ認定した。

それがソルジャーだとか、仮にソルジャーじゃない何かだとしても、

そんなものは警察には関係ない。



警察官である俺も仕事上はイシャは使うが、JGBにいるソルジャーの前では

俺はこの用語は使わないようにしている。

前にJGBに所属しているソルジャーに因縁をつけられるような目で見られた事がある。



後でじっくり考えてみればそれはそうだろうと思った。

欲しくて得たわけでもない異端的な力を持っている当人にとっては

不快感を感じる変な呼び名で呼ばれてるようなもんだよなと。


そんで、いつの間にかイシャという用語を使うのに

違和感を時々感じることもあった。慣れってのは恐ろしいもんだ。





・・・・・おっとと話を戻そう。今、俺達は向かっているのはそのお尋ね者の樫木麻彩が

インターネットの掲示板に書き込むのに使ったというパソコンがあるネットカフェだ。


サイバー犯罪対策課とJGB諜報部の解析によって、そのパソコンが特定され、

場所は渋谷の街中にあるゲームセンターと一緒になってるネットカフェだった。



事前情報によれば奴が書き込みの際に使ったというハンドルネームはMaya。

樫木麻彩の麻彩は読み方を変えるとマヤになる。

これが由来だろう。実際、俺も奴の本名を見た時、間違えそうになった。



このハンドルネームの被りは偶然とはとても思えない。

意図的につけているんだろう。



今から行って確かめてやる。それで監視カメラのビデオを見せてもらう。

ちゃんとした店なら、一ヶ月以内ならばデータ保存されて映像が残っているはずだ。



店がセンター街の中にあって車で店の前までは直接行けないので

近くのパーキングエリアに車を止めて俺達三人は店がある渋谷のセンター街に繰り出した。



センター街・・・・コンクリートの歩道とは打って変わって白色のレンガ状の模様が入った道に

レストランや居酒屋、コンビニ、カラオケ、ゲームセンター、本屋、洋服店など

賑やかで派手な建物が至る所に並んでいる。



平日の午前の渋谷はスーツを着たサラリーマンやOL、

カジュアルな格好をした若者で賑わっている。


若者の方は大学生かフリーター、

働きもせずにチャラチャラしてるフードを被った俗にニートといった連中もいる。



この事件ヤマを一刻も早く解決して、俺もああいう奴らのように

気楽にゆっくり羽を伸ばしたいものだ・・・・




人々が行き交う賑やかな街中にある一つの店。


明るく眩しい装飾が目立つゲームセンターや

連結してるパチスロ店の上にそのネットカフェはあった。


俺達は建物の中へ入るとそれらの入口を尻目に

奥にあるエレベーターで二階に向かった。



ネットカフェの中は至って静かだった。そればかりか、

まるでホテルのような高級感があるエントランス。

黒い壁に紺色の床、オレンジ色の光が店内を照らしている。



「失礼、警視庁の者ですが・・・・」




「警視庁の蔭山です」「川口です」「新田です」



俺はカウンターにいたバーテンダーのような

格好をした若い男の店員に声をかけ、三人で警察手帳を見せて

名前を名乗り、店長を呼ぶように頼んだ・・・・




その後、すぐに店長が俺達の下へ来て、要件を伝えると俺達は店の奥に案内され、

掲示板への書き込みが行われた部屋が視界に入った監視カメラの映像を見せてもらった。



店長の話によるとこの店の客室は仕切りによって区分けされただけの狭い個室で構成されている。

中は机とスタンドとパソコン、正座すれば椅子にも、横になればベッドにもなるクッションとなっている。

つまり、仕切りの扉を開ければ一段盛り上がったクッションと

その横には机とパソコンがお出迎え、靴を脱いで足を上げてクッションに乗る事で入室する。



掲示板への書き込みを行ったパソコンもそれらたくさんの個室の中にある。




掲示板に書き込みがされたのは先週土曜日の午前2時15分。

俺達は店長に頼んで、ビデオを巻き戻してもらい、その10分前の映像を見せてもらった。



深夜ゆえに静まり、宿泊者を配慮してか個室がたくさんある部屋には明かりはない。

唯一の明かりは各部屋のスタンドだ。

強いて言えば、トイレや自動販売機、シャワースペースがある廊下、

あとは漫画とか小説とか古い雑誌とかがビッシリ並ぶ本棚のエリアしか強い明かりはない。

どうやらネットカフェであると同時に、ここは漫画喫茶でもあるようだ。



静まった個室が構成された部屋。

そこに・・・・一人の男の姿がビデオの映像の画面上から現れた。

個室と個室の間の狭い通路を早歩きで歩いてくる。



・・・・・だが、男は黒いサングラスに黒いニット帽、

おまけにマスクをしていて顔が特定出来ない。


夜中で寒いのか、冬物の黒コートにジーンズ姿だ。

結構、怪しく厳つい印象だ。体格も大きい。



身長は俺と同じくらいか少し高いか。因みに俺は176だ。



男は個室に入り、スタンドで明かりをつけるとそのままの格好で

すぐにパソコンを起動した。

すると男はポケットから細長い青色の何かを取り出して

パソコンの横の四角い装置に差し込んだ。あれは・・・・・・USBか?



この前の新直のプログラマーの話にはついていけなくとも、

さすがの俺もUSBぐらいは知ってる。

何かのデータをあの中に入れてるんだろうか。


USBを装置に差し込み、しばらく見ていると男はマウスを動かしている。

何かのサイトを見ているようだ。なお、監視カメラにはパソコンの画面は映っていない。


そして、しばらくするとキーボードのキーを二回叩き、

一回クリックすると男はパソコンをシャットダウンして

USBを抜き、ポケットにしまうと個室を出てしまった。



向かった先は・・・・シャワールーム。

素顔が見れるチャンスなのにその前の脱衣所とシャワールームに

監視カメラはない。分かってるとはいえ、くそっ・・・・・



唇を噛み、15分後まで映像を早送りしてもらった。

すると男は脱衣所から扉を開けて出てきた。

無論、先ほどと同じくしっかり素顔を隠した黒づくめの姿で。



するとすぐにレジに向かい、会計を済ませて店を出て行った・・・・・

ここまでのべ約30分。



ふむ・・・・ニット帽を被って髪型も隠してるので樫木とは断定出来ない。

奴に仲間がいる線もある。微妙な所だ・・・・・・



透明人間になる能力があるならば、どこかに忍び込んで

誰かのパソコンでこっそり書き込んだり、スマホをパクって書き込む事も

不可能じゃないはずだが・・・・・危ない橋を渡る事を恐れたのかもしれない。




USBに入っていたのは文章テキストに違いないだろう。

それをあらかじめどこかで書き込んでおき、

ネットカフェに持ち込み、そこのパソコンを使ってサイトを開いてコピペで書き込む。



自作のまとめサイトも予め、テキストと一緒にどこかで作っていた可能性が高い。

手持ちのパソコンなどで書き込むと居場所がバレるのは織り込み済みのようだ。

だからあえてこの場所を利用したんだろう。




さて・・・・この足取りをどう追うか・・・・それが問題だな・・・・・


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