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ソルジャーズ・スカイスクレーパー  作者: オウサキ・セファー
第二章 トリカブトの華
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第6話 連続強盗殺人事件 ~判明した真実~

「・・・・・・・・・・・・。」



6人目の被害者が出て、我々JGBが捜査に参加して4日が経った。今日は4月10日の月曜日。

既にJGB総本部及び東京支部をはじめとした関東の各支部では連続強盗殺人犯の情報が公開、

情報収集に特化した諜報部だけでなく、本務の部隊に属する

戦闘の心得がある捜査員にも捜査情報が伝えられ、動き出している。



この4日間の間にヴィルが火事で壊滅した渋谷に

事務所を構えていた鈴川マーケティングについての

情報を見つけたらしくそれを持ってきた。



ヴィルが率いる東京支部が追っている氷のソルジャー、白河内琢磨。

彼は新宿でロ地裏から岩龍会系の組事務所に入ったため、

ヴィル達は後を追いかけ、そこで黒い炎と氷がぶつかり合う激しい戦闘に入った。

白河内には逃げられたがその事務所を攻め落とし、

同時に鈴川マーケティングの情報を掴んだという。



その時の私とヴィルの総本部でのやり取りが私の脳裏に蘇る。

3日前の総本部の私専用の部屋でもある長官室での正午過ぎの事だ。



「鈴川マーケティング・・・・あれは化けの皮かぶった

 表向きの名前で本当の名前は"鈴川組"って言うらしい」



私は長官室の机の椅子に腰掛け、

ヴィルは私の横でこちらに背を向け、

机のこちら側ではなく向かい側に直接座って話を続ける。



「構成員は8人と少ないが、ダークメアの二次団体のようだ。

 表向きは一般企業を装いつつ岩龍会相手にヤクやら武器やら取引して相当稼いでいたようだ」



「二次団体・・・・ヴィル、どのようにしてそのような情報を?」



私はヴィルの背中の方を見て尋ねた。

 


「その取引で使われようとしていた発注書がどういう訳かちょうど

 オレ達が乗り込んだ岩龍会系の組事務所にあったからな。

 ご丁寧に鈴川マーケティングって書いてあった。

 それで組員一人拷問して吐かせたらこの通りさ」



ヴィルは私の方に顔を向けて言った。




そう・・・鈴川マーケティング・・・・いや鈴川組は

麻薬や武器をどこからか仕入れ、それを岩龍会に売りさばいていたようだ。

ヴィルが乗り込む際、今まさに鈴川組に発注が行われようとしていたんだろう。



日本の裏社会では隠れてそういう物を売る組織が後を絶たない。

特に戦いが激化するソルジャー界では、武器やドーピング薬などを売る闇商売や

闇ルートでの取引が盛んに行われている。


無論、彼らもそれが表沙汰にならないように

巧妙な隠蔽工作や対策を施している事が多い。


鈴川組の販売品の仕入れ場所は不明だが、そういう商売が

行われている社会なので、資金さえあれば、何とかなるのだろう。

その資金元も気になる所だ、ダークメアが出している事は間違いないが。

その金はどこから出てくるのだろうか。



火事で呆気なく壊滅したのも、汚い商売で稼いだ報いとも言えるだろう。

スカール達があの事務所を訪れて焦っていたのも納得がいった。

因果応報と言うべきだろう。



鈴川組が岩龍会と取引をしていた組事務所である以上、

それが失われたという事は岩龍会側もある程度損をする。


つまり、取引先を失った岩龍会と鈴川組の親元である

ダークメアの関係に何かしらの影響が出る可能性があるだろう。


ボスのレーツァンも岩龍会側に対して何もしないというわけにはいかないはず。

奴は何か行動を起こすはずだ、今後の動向が気になる。


だが、その辺は折原部長達が掴めれば伝えてくれるだろう・・・・






さて今朝、私は今、何をしているのか。というと総本部の長官室で折原部長から

完成したレポートを受け取り、黙って目に通していた。


茶色い高価な机越しの自分の席に座り、

一枚一枚一つの緑色のファイルにファイリングされたレポートをめくっては読む。

目の前でその様子を折原部長は立って神妙な面持ちで見ている。



内容は今回の事件に際して、諜報部が調べ上げた情報が膨大に載っていた。

綺麗にまとめられ、長文だけでなく一部表や項目分け、

段落分けがされていて読みやすくなっている。

更に人物名は赤色で書かれ、場所や地名は水色で書かれていて見やすい。

事件発生日、被害者名、死因、職業の他、新たに判明した事柄も表でまとめられ、

全41ページにわたるレポートであった。



諜報部は我々が捜査に乗り出す三週間前から活動を開始し、

最初の殺人が起こった岐阜、次に大阪を調べ、

最初は当時起こったばかりの時は新潟には手を出さなかった。


が、岐阜と大阪を洗った後、二回に渡って殺人が起きた新潟に

捜査が入った途端、事態が急変した。


そう、この時、警察が見つける事が出来なかった殺害された

被害者のある"本当の共通点"への糸口を見つけ出す事に成功した。


それを見つけた諜報部は再び岐阜や大阪に戻ったり、

その糸口を見つけ出す直前に起こった埼玉、

東京の事件の情報集め、糸口を見つけた新潟と各地を奔走、

新潟で得た情報を頼りに様々な場所で捜査を行った。


結果、更にそれは全ての被害者に当てはまっていた。

もはや偶然とは言えない。


本当の共通点を見つけられた以上、これ以上のものはない。

私はレポートを一通り読んだ後、折原部長の方を見てこう言った。



「お疲れ様です。3週間でよくここまで調べられましたね。感服致しました」



警察でも見つけられなかった情報を3週間で見つけてしまう事は見事だった。

最も、今までそれを見つけられなかった事には"ある理由"があるのだが。

レポートを見て分かった事だが、僥倖ぎょうこうと言うべきかもしれない。


「いやいや、そんな・・・・

 荒城君達がかなり頑張ってくれまして・・・それでも手間がかかりました。

 が、これでこの事件の意図、分かりましたよね?」



右手を横に振って謙遜な態度をとりつつ、

紫のふちのメガネを横から触れて釣り上げてそれを問う折原部長。



「ええ、急ぎ、蔭山警部に連絡します。

 警視庁の方々にもこれをお伝えしなければ」



私はレポートを机の上に置いた。



まず最初に言える事。

犯人の一番の目的は金品の強奪ではなかった。

花言葉通り、犯人の目的は「復讐」だったのだ。

そして、その復讐の対象は・・・・・・



「電話しましょう」



私は自分の机にある白電話の受話器を取り、

番号を入力し始めようとした・・・・・時だった。






ピリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!!





私が触れる前に突然、鳴り響く白電話。





私はそっと電話に出た。




「はい、JGB総本部。長官のフォルテシアです」




「フォルテシア!!一課の蔭山だ。大変だ!!!」



何かに焦る、緊迫した声が受話器の向こう側から響いてくる。

声の主は私が今、電話をかけようとした蔭山警部だった。

一体、何があったんだろうか。



とりあえず、用件は後回しにしてその模様を訊く事にした。




「蔭山警部、一体何があったのですか?」




「また起きたんだ!!例のトリカブトの連続強盗殺人犯の仕業だ!!」





「え・・・・・・・・!」




7人目の犠牲者が・・・・・・くっ・・・・・・・




「け、警部・・・・今どちらに・・・・・」




「今、神奈川の川崎市宮前区に向かってるとこだ!!早く来てくれ!!!」




「了解しました、大至急向かいます!!」




私は強い勢いで受話器を置いた。




「まさか、また殺人が・・・・」



事態を察した折原部長が冷静にそっと小声で訊ねた。




「そのまさかです。私は現場に行きますのでこれで失礼します」





「気をつけて下さい。・・・・・・私には何かありますか?」




「場合によっては、現場でレポート内容を公表する可能性があります。

 詳しくはサカと話し合って決めますが、万が一に備えて準備を」



席の横の近くの服掛けにかけられている白い長官用のコートと帽子に目を付け、

それを羽織り、JGBの帽子をかぶりながら私は折原部長に言葉を返す。



「了解」




机に置いてあった先ほどから読んでいたレポートを手に

折原部長と二人で部屋を出ると、歩きながら

私は副長官のサカにスマートフォンで通話する。



「サカ、私です。神奈川県川崎市宮前区で

 また事件が起きました。詳しい事は後で話します。

 急いで下さい!車を」




「な・・・・・!了解しました。車は部下に手配させてすぐ行きます」




「お願いします」



サカもかなり驚いた様子だった。

私は総本部の駐車場へと向かうべく、エレベーターへと全力で走った。




7人目の犠牲者が出てしまうとは・・・・不覚・・・・・






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