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ソルジャーズ・スカイスクレーパー  作者: オウサキ・セファー
第三章 プレゼンス・サード -航路の行方-
100/120

前回までのあらすじ

4ヵ月も休載して申し訳ございませんでした。

久しぶりの再開なので、今回は第三章主人公の境輔視点でのあらすじから始めたいと思います。

 ――2034年7月。夏。

 学校教育の闇の部分が明らかとなった、岐阜、大阪、新潟、埼玉、東京を巻き込んだ凄惨すぎる連続殺人事件――通称″樫木事件″から三カ月。

 ここ、お台場の東京湾に浮かぶ巨大学園都市”いずみ島”に存在する学校の一つである″いずみ大学第一校″に通う僕は出版業界を目指して就職活動をしていたが、悪戦苦闘の毎日。

 内定を得るため――職を得るため――僕は30社もの企業にエントリーし、書類選考は毎回ほぼ通過。

 ここまで数多くの企業に行き、面接を受けたのだが――結果はどれも全て「不採用」。

 その中には頑張った敗者に理不尽な追い打ちでしかないサイレントお祈りもあった。

 1社だけ苦難の末に最終面接まで進んだものもあったのだが、それも言わずもがな「不採用」。

 その会社のために費やした多くの時間と努力、そして面接で良い線行ったと思った事による希望と期待がまとめて「無」となって消え去り、かつてない絶望に僕は押し潰された。

 しかもだ。同じルームメイトにしてこの島で暮らし始めた中学の時から腐れ縁のタカシとコージは僕が最終面接を受ける手前に内定を勝ち取っていた。

 僕はチャンスから一転して振り出しに戻された挙げ句、周りから取り残される立場となってしまった……

 絶望し、築いてきた物が一気に崩れ落ちた反動ですっかり無気力状態に陥っていた僕の前に一人の女性が現れた。

 修道服を身にまとった、最初はパッと見で同じ大学生と勘違いした人。

 いずみ学園理事会特別公認事業所所長のアレクシオネリア・アヴリーヌ。通称、アレクさん。

 最初はベンチに座って落ち込む僕に対してアレクさんが声をかけてくるという何気ない会話から始まった。

 この人には嘘はつけないような気がした僕は素直に自分の置かれている状況を説明した。

 すると穏やかで優しいアレクさんは人生について――またその中でどんな荒波にも負けずに航海を続ける大切さを僕に教えてくれた。

 その後、僕は再び立ち上がった。しかし、それでもまた3社受けていずれも不採用を食らい、先に対する不安に苛まれてしまう。

 おまけに就活だけでなく卒論についてもそろそろ考えないとまずい夏がやってきた。

 勝負の夏である。成績は問題なく、単位は卒業するにあたって心配はない。あとは卒論と就職先だけ。

 しかし、その越えないといけない壁は凄まじく大きい。

 折れずに再起を図るために、就職指導の横村先生の講座を受講したりするも先が不安な気持ちは拭えなかった。

 就活に苦悩する僕。だが先が見えてこないある日、僕にまた新たな出会いが待っていた。今思えばその出会いがこの世界の裏を知る全ての始まりだったのかもしれない――。

 一人目はユヒナ。タカシとコージとともに久々に遊びに行ったゲーセンにて、一人になった僕は成り行きで「ステップライブ」というダンスゲームで、その女子と対戦する事になった。

 桜のように綺麗な長いピンク髪で特別整った体型、大きな胸、明るく純粋で人懐っこく子供っぽい女。

 ゲームは僕が足を痛めたせいで大敗したが、その後帰りのエスカレーターで偶然再会し、知り合った。

 後に僕も昔好きだった「疾風しっぷう彩音あやね」という漫画を愛読している事が判明し、僕は昔読んでた頃と今のストーリーに戸惑いながらも彼女とその漫画について語り合った。

 二人目はハイン。ゲーセンで出会ったもう一人のその女子は、ユヒナとは雰囲気も性格も正反対だった。

 全体的に整ったなかなかのスタイルで美人なのだが、黒いおかっぱ頭、黒いシャツ、黒い靴下に靴、ミニスカートととにかく全身可愛げある黒い服で固めており、落ち着いていて不敵な笑みを浮かべる大人びた小悪魔な女。

 ハインはユヒナの姉的存在でその様子は性格や雰囲気の正反対さとやりとりからも見てとれる。二人揃って年齢的に高校生と思われる。

 が、明らかにハインの方が大人びていて″年上のように感じる。T-3(ティースリー)地区に住んでいる事以外に詳しい事は不明だ。

 アレクさん、そしてユヒナとハイン。ここまで様々な出会いを経験した僕だったが、相変わらず就活も卒論も結果だけ見れば進展がなく、日にちだけが進んでいった――。

 だが、僕の就活もここに来て転換期を迎える事となる。

 僕は自らが抱いていた出版業界に就職したいという”理想”が固まっているように見えて、実はそうじゃない事に気づく事になる。

ここまで理想にとりつかれ、頑張ってきた。出版業界に就職したい。そう思ってきた。

 僕は本や雑誌を読むのが好きだ。だから、本や雑誌の刊行をして、みんなに読んでもらえるような面白い物を作りたいなと考えていた。

 そう、僕はこの理想――すなわち業界に対する憧れに無意識に酔いしれ、自信過剰になってしまっていた。

 理想を求めて頑張ってきたが、実際僕が抱く理想はあまりに薄っぺらく厚みもボリュームもなかった。

 何がやりたいのか、何をしたいのかが定まっておらず、中身もなかった事に僕は初めて気がついた。その証拠、僕は出版業界ならば「どこでもいい」とのたまっていたのだ。

 出版業界に特別詳しくないアレクさんの前で僕はこの理想を語った。

 そしてアレクさんから一蹴されるが如くフィードバックを受けた僕は自分の理想に逆に惑わされていた事に気づき、自分の本当にやりたい事を探し求め始めた。

 それを見つける事は簡単じゃない。だが、見つけないといけない。

 特に実感した事は自分の理想が厚く見えて実は薄っぺらかったゆえに僕の中で薄いままで一人歩きしてしまっていた事だ。

 ここまで信じて疑わず、惑わされていたという事。だから探して見つけなければ何も始まらない。

 ――だが、そう決めて歩き出した矢先、待ってましたと言わんばかりに僕はある事件に巻き込まれた――。

 突如、僕が住むマンションの部屋に押しかけてきた牙楽がらくというドラキュラ風の男。

 僕はなすすべなく拉致され、いずみ島内のA-1(エーワン)地区にある真木田まぎたぐみという暴力団が構える事務所へと連行されてしまった。

 そこには組長である真木田が待っていた。

 拉致された僕は真木田の口から自分自身が、″ある物″との取引の材料として連れてこられた事を知った。そのある物とはこの島の「土地の権利書」。

 それはいずみ島を統治している――いずみ学園理事会のトップである理事長が持っているとされている物で言わずもがなこの島の所有権の証である。

 しかしそれを奪うためには″白針しらはりきざむ″という名前しか公に明らかになっていない理事長の居場所を知る必要がある。

 なので、真木田は僕を人質に取引をし、アレクさん達に理事長について聞き出す取引を計画していた。

 真木田と牙楽に拘束されて動けない中、ユヒナとハインが僕を助けに来てくれた。

 ――だが、僕はそこで目を疑いたくなるような思いもよらない光景をいくつも目の当たりにする事となる――。

 ユヒナは背中に大きな鋼の翼を生やし、光る剣を振るう。

 ハインは体を浮かせる超能力や黒く燃えるエネルギーを操る。

 牙楽はコウモリを操り、不気味に光る剣や赤い雨を降らせる。

 そう、彼らは普通の人間には到底使えない特殊能力の持ち主だったのだ――。

 そんな特殊能力の使い手――異能者を「ソルジャー」と呼ぶ事もその中で知ったのだが、まるで漫画の世界に迷い込んだような光景にただただ衝撃を受けるしかなかった。 

 今までフィクションの世界で当たり前と思っていたものが現実にあったのだから。

 ユヒナは牙楽を退け、真木田も持っている圧倒的な力で押してゆく。

 追い詰められた真木田は部下を呼び、精神高揚剤という薬を持ってこさせて自分に打ちこませ、ドーピングを企む。

 が、放たれたその薬が誤ってユヒナに打たれてしまう。

 薬の効果はすぐに表れた。

 正気を失ったユヒナは正義の味方から人型のモンスターに変貌し、野獣のような顔を浮かべ、真木田を腹から食い殺してしまった。

 目の前で繰り広げられるホラー映画さながらの光景に震えた僕は逃げようとするが、凶暴な野獣は簡単に逃がしてくれず、危うく食われかけたほどだ。

 牙楽も暴走したユヒナに戦いを挑むが予想を上回る強さに圧倒されてしまう。

 だがそこにハインが救援に現れる。

 暴走するユヒナを後ろから取り抑え、麻酔を打ち込んで眠らせた。

 何とかユヒナを止める事に成功した。

 結果、ユヒナが暴走した事で組長の真木田は死亡。牙楽は撤収し、この島に事務所を構えていた真木田組は壊滅した。

 だが、これで当然めでたしという訳ではない。

 この事件を通して――僕は自分の目を通して異能者が現実にいる事を知っただけでなく、この世界が表と裏の二つに綺麗に分かれている事とか――これまで知らなかったこの世界の裏の側面を戦いの後にハインから教えられた。

 自分がこれまで日常生活の中で当たり前のように目にし、最近はその報道するニュースの殆どがどうでもいいとか馬鹿馬鹿しいとか思いながらも情報源だったマスコミ。

 だがマスコミは実は異能者が絡む事件は報道しない、もしくはそれを都合の良いものに捏造して報道している事を知った。

 それは真実を知ったと同時に裏切られたような気分だった。

 マスコミが表社会側だと分かると同時に表と裏の境界線が見えたような気がした。

 翌日――。

 目の前で繰り広げられた光景とこの世界の裏に関して自分の中でも整理出来ず納得がいかなかった。

 そんな中、僕は魔神まじんめんというアレクさんの友人であるジョニーが経営するラーメン屋にハインから呼び出しを受けて向かった。

 そこにはアレクさんとハインがいた。

 僕はこの二人及び店長のジョニーから今まで知る事のなかったこの世界の更なる現実及びいずみ島の――ある意味最大の秘密を知る事となった。

 まずソルジャーについては勿論のこと、人間でもソルジャーでもない都市伝説、稀少な第三の存在である「エクスサード」について聞かされた。

 ソルジャーはソルジャーソウルという特殊な精神エネルギーを宿した人間だが、稀少で裏社会では都市伝説にもなっているほどのエクスサードはそれがない。

 しかも生まれ方は異なり、人間ではない。

 裏社会にはソルジャーソウルの探知機などの機械があるらしいが、そもそもそのエネルギーを持たないエクスサードには無力だという。

 異能者(ソルジャー)の特徴である一般的なエネルギーの概念に含まれない、まさにイレギュラーな存在の正真正銘の化け物。

 ユヒナとハインがそれにあたり、ユヒナは錬金術を応用し、人の遺伝子を使って作られたホムンクルスであるという。

 一方、ハインに関してはどういう素性なのかは不明だ。

 だがユヒナと違って、特殊能力なのか牙楽からはソルジャーとして見られていた。本人は正直じゃないからと言っていたが、何か秘密はありそうだ。

 その他、マスコミなど表社会側のメディアは裏社会の話に触れようとしない事、真木田組は真木田ガードナーズと名乗って警備会社として島に潜入していた事、その背後には岩龍会という関東最大の極道組織の存在する事、そして――。

 裏社会で伝説のように囁かれる――世界の運命を左右する難問――”世界の(ワールド)永遠の(エターナル)宿題プロブレム)″の存在を僕は聞かされた。

 遥か昔、その難問は『異能者の扱いによって、世界のカタチは変わる。』という"異能者中枢論"をもとに作られた。

 統一論と現状維持論からなる"二大理論"のうち、どちらがこの世界にとって最良かを証明せよ――これが証明された時、世界の運命は大きく左右するのだという。

 統一論は表社会と裏社会を隔たりなく最終的に一つに統一する理論。

 現状維持論は現在の表社会と裏社会の関係を変えず、そのまま維持する理論。

 証明の仕方も様々であり、結果はどうあれ希望または絶望、調和もしくは混沌を招くとされている。とてもスケールの大きい話だ。

 異能者中枢論とこの難問をそれぞれ提唱、作った人物は不明。

 アレクさんは裏社会に精通した昔の偉い学者が作ったと推測していたが、有力な情報は今の所無いに等しい。

 ――更に僕は衝撃の事実を知った。いずみ島最大の秘密を――。

 アレクさんには特別公認事業所の所長以外にもう一つの裏の顔がある。

 それは、不在の理事長本人から任命されたという”理事長代理”の顔だ。

 そう、アレクさんこそが実質、理事会のトップ。

 白針刻も名前しか知られていないため実質、表向きは一般人として行動出来る影の権力者である事には変わりないのだが。

 僕が白針刻の顔を見た事がないのと同じで、理事長代理がいるという事実も初耳だった。

 それは僕以外にこの島で普通に暮らしている学生も同様に知らない最大の秘密だ。

 この秘密をどこまでが共有しているのかはまだ分からない。

 しかし、公に知られていないと本人は言っているのでごく一部の人間しか知らないのは明確だ。

 だが、アレクさんが秘密がバレる事を承知の上で自ら正体を僕に明かしたのには理由があった。

 とある"組織"にアレクさんが理事長代理である事実がバレてしまったからだという。

 非常事態であり、一刻を争うというこの状況。その組織とはなんなのか。なぜバレたのか?

 なぜ秘密を僕だけに打ち明けたのか――それらの真実が今、まさにアレクさんの口から直接明かされようとしていた――。

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