第42話
俺はまた虚しい朝を迎えた。横にはミア、シャム、俺の上にミケ、子供な体が憎い!可愛いだぞ、3人共!俺の顔から汗が零れる。涙じゃない!汗だ!もぞもぞ動いていたらミアが目を覚ました。
「……ジーク様、おはようございます」
寝起きのミア!色っぽい!肩までずり落ちた夜着、溢れそうなおっぱい、少し寝起きでとろんとした顔で挨拶された。ミケやシャムが居るようになってからは少し大胆なミアが見られる様になった。喜んでもいいんだろうか?俺的には美味しい状況なんだろうけど……改めて子供の自分が悲しいよ!シクシク。
「おはようミア」
ミアに挨拶をしていたら他の2人が目を覚ました。小さい手で目を擦りながら可愛くお目覚めだ。
「お兄ちゃん、おはようなの〜」
「おはよう〜お兄ちゃん」
「おはよう、ミケ、シャム。今日は皆で王都観光に行くぞ!」
嫌な事は忘れて皆でお買い物だ。この前買った物とは別のデザインを買って着せよう!
「お兄ちゃん、楽しみなの〜」
「お兄ちゃん、ありがとう!嬉しい〜」
「ジーク様、自重してくださいね」
ミアの厳しい指導が入るが、済まないミア!これに関しては譲れない!3人の可愛い姿を見る事が今の俺の唯一の楽しみだ。
「あはは、ほどほどにしておくよ」
朝食を済ませて、3人で王都観光に出かけた。昨日は馬車で移動して王城に出かけて帰って来ただけなのでどこも行ってない。無駄に緊張だけさせてしまった。王女様とは馬車の中で仲良くなったので、緊張しなかったが流石に陛下との対話に連れて行ったのは気の毒だったな。好きな物を買ってあげよう。
「お兄ちゃん!いい匂いがするの〜」
肉串だ。買ってやるか!
「おじさん!4本くれ!」
「あいよ!4本だな!ほい!」
お金を払って肉串もらったミケとシャムはご機嫌だ。笑顔が眩しい、ミアも黙って食べてくれた。仲間はずれにはしたくないからなぁ〜。楽しく暮らしたい俺は小さな事が原因で仲違いはしたくない。
肉串を堪能しながら他の店を見ながら歩いていたら、大通りの道に馬車がスピードを出して突っ込んで来た。
「危ない!!岩石!馬車!……ミケ!シャム!ミア!大丈夫か?」
俺の大事な子たちに何するんだ!こんな人が多い場所で飛ばすなよ!
「お兄ちゃんの魔法?大丈夫なの〜」
ミケが驚いて聞いてきたので頷いた。それを見たシャムもお礼を言ってる。
「お兄ちゃんのお陰で怪我してないよ〜ありがとう」
3人とも無事だったので安心した。
「ジーク様、ありがとうございます」
ミアにもお礼を言ってもらえた。少し恥ずかしそうなミアは可愛い。とっさに張った岩石魔法。魔力が少なくても出来る奴マスターしといて良かったよ。ありがとうご先祖様!
目には見えないけど出現させる透明岩(ダンプカー並の太さ)出現時間が短いのが難点なのと盾代わりに使う時はぶつかる物の名前を言わないといけないのが欠点(投げない場合)だが、魔力の少なくてもピンポイントでできるだけでもいい方だな。当たった物がバラバラになるオプション付きだが。
投げないのか?と思うだろう。1度やったらクレーターができたのでやらない。そのまま盾代わりにするともの全てがペチャンコになり、やっぱり都合が悪いので力を限定させる時は障害物の名前を言うしかないんだ。
だから、馬車がバラバラになったのは俺の所為じゃない。悪いのはそっちだからな。悪い奴には天罰が落ちるって事で!見えないから大丈夫か?
「皆に怪我がなくて良かったよ。口直しにもう一本肉串でも食べよ……う!!」
残骸は無視だ!俺は無関係を貫く!……と思っていたが、やばい事が分かった。馬車の中身だ。バラバラの馬車から転がり落ちてく卵!あれは幻の凶暴鳥の物だ!!あの紫の縞模様!ご先祖様魔法書、触るべからずのページに載ってたぞ!俺の頭に前世某番組の冒頭フレーズ(やばい〜やばい)が聞こえて来る。誰だ!!あんなやばい物を持ち込んだのは!親鳥が取り返しに来るぞ!心の葛藤とは別に放心していた俺は対応が遅れた。
「わ〜紫のたまごなの〜珍しいよね、シャムおねえちゃん」
「シマシマだよね〜何の卵かなぁ〜」
「不用意に近付いてはいけませんよ」
ミアの言われたミケが俺に卵を渡してきた。
「え?はい!お兄ちゃんにあげる」
ミケが拾って俺にくれた。笑顔でくれたのはいいが、途端に冷や汗が流れる。俺の両手にあるサッカーボール位の大きさの紫の縞々!どうしろって言うんだ!!そうこうしている間に、卵にひびがはいったと思ったら割れた!バリッと中から雛だ!凶暴鳥の雛が顔を出した。
こっちをじっと見てる。見た目はぬいぐるみのあひるに良く似てる。への字口のひよこだ。げ!頭に金色の冠模様がある。凶悪鳥の王族か?やばさ倍増だ。卵は縞々だが体は縞なく紫色だ。
「パパ!ごはん!」
顎が外れるかと思った!パパだと!嫌だ!凶暴鳥の子供なんて!見た目が可愛くてもでっかくなるんだぞ!3階建ての建物並にだ。ミア達もびっくりして雛を3人で覗き込んでいる。
「ママ⁉︎3人?ごはんママ!」
キョロキョロしながらミケ達を見ている。どうやら同時に覗き込んだ3人をママ認定してるぞ!
「ミケ、ママになったなの〜」
「私も同じ鳥ママ?」
シャムが首を傾げている。鳥と言ってもその鳥は可愛くないぞ!凶暴鳥だからな。騙されるな!シャム。
「3人ともこの雛のママですね。躾はしっかりします。ご飯は何がいいですか?用意しますね」
ミアの腕の中に大人しくしている。
「お兄ちゃん、名前付けないとダメなの〜」
「女の子かな?男の子かな?」
「女の子の様な気がします」
ミアの言葉に戦慄が走る。思い出した!やめてくれ!ご先祖様の本には雌だった場合は雄が求婚する為に貢ぎ物を親に持って来る。と書かれていた。3階建ての建物並の凶暴鳥が大勢やって来るとしたら王都はパニックになるぞ!ご先祖様は雄の親になって貢ぎ物は何にするかで息子となった凶暴鳥に苦労させられた、と書いてあったのに!
注意事項の項目に、年頃になる前に雄に見つかると、大きくなるまで雄が見守りに来て貢ぎ物で家が埋まるとも言われている。心が折れそうだ。
厄介ごとしか感じない。俺は転生に運の全てを使い切ったのかと、黄昏た。今日も空が青いなー。……誰か助けてくれ!
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凶暴鳥
雌が少ないので気に入った雄全員を夫にする。1匹で大勢の雄の卵を産む。基本卵の世話も子育ても雄の役目、勘で自分の血を引く卵が分かり産んで貰うと雌の側を去り子育てに勤しむ。
血で父親と母親が分かる為普通は間違えない。今度みたいに、盗まれて産まれた場合のみ血の流れを感じない為混乱した雛が、初めに見た雄を父親と雌を母親だと刷り込まれる。1度刷り込まれると血を感じても父親とも母親とも認めない。厄介な鳥である。
要再考
雌は父親の側から遠くには離れない。雄は通い婿になる。雌の子供の父親だけが母親(他に雄がいっぱいいるから)とは慣れて子供と死ぬまで一緒である。子供が雄の場合は1人立ちが済むとまた卵を産んで貰う為貢ぎ物を雌に捧げ出す。卵が不治の病の薬になると言われている。
今回使ったご先祖様魔法書の魔法
岩石魔法
手の先にダンプカー並の透明岩石を出せる。魔法を行使している本人には重さなど感じない。自分の盾代わりにできる優れもの。他の人の目には見えない。言葉で限定すればその他の物には影響が出ない。素通り。
但し、そのまま投げると巨大クレーターを製造。魔の森に作ったクレーターあり。今は水が溜まり溜池になっている。




