第36話
次回更新は9月22日です。
無事助け出し、宿に戻る途中だ。空飛ぶ馬車に乗せたら2人ともはしゃいでた。御車台の後ろから顔を出して外を眺めてる。
「これは、王家の物だ。王様に感謝しないといけないぞ」
噂になった時に、助けた子供達の言葉を聞けば誰だって疑わないだろう。
「王様の馬車!凄いよ!」
2人のテンション高いよ。やっぱり空を飛ぶのは男の夢だな。俺は遠慮したいが。
「僕たちが乗って怒られない?」
急にしおらしくなったと思ったら、偉い人の物だと知って怖くなったんだろうな。
「大丈夫だ。王様はいい人だからな、民の心を思いやる事のできる偉大な王様だ」
俺は、ヨイショは忘れない。厄介ごとの責任は持ちたくないからなぁ〜。王家の素晴らしさを広めて、こちらに被害がこない様にしてくれ!
「……ジーク」
副団長、恨みがましい目はしないでくれ。王家の評判は良くなるだろう?むしろ、空飛ぶ馬車を所有する王家だと、他国から羨ましがられると思うが。ラノベで、ドラコンに乗れればそれはかっこいいと思うが、現実は違う。厄災なドラゴンを乗りこなせる人間などこの世界にはいない。実際乗れたとしても高い所が苦手な俺じゃ無理だ。さっきも、副団長の初運転にちびりそうになった俺だからなぁ。
「宿に戻ったら、両親に謝るんだぞ」
副団長、その顔はやめてくれ!俺は常識を知ってるまともな人間だ。
「……ジークが真面な事を」
副団長、小声で言ったけど聞こえたぞ。俺は普通だ!ちょっと珍しい薬草持ちなだけだと思ってる。
「あ!薬草!……ぐすっ、み、見つけられなかったね」
弟の方が、泣いて落胆している。しょがない、見つけられなかったようだな。
「怖い魔獣がいっぱいだから仕方ない。ごめんな、役に立たない兄で」
兄の方も、落ち込んだ。さっきまで、はしゃいでいたのが嘘みたいだ。はあーっこれも縁だ、どんな薬草かは聞いてやるか!あれば譲れるな。
「探してる薬草は、どんな形と、色をしてる?」
俺が聞くと、小さな鞄をごそごそ探り、1枚の用紙を出してきた。
「これだよ!お父さんの鞄から取ってきたんだ」
勝手に取ってきたらダメだろう!これ、安くないぞ。お金が掛かった物だからな!俺は顔を引きつらせて見てみると、あれ?これって、あの薬草か?魔の森の中心部にいっぱい咲いてる。誰か1度取って使った事あるんだなぁ〜。俺は魔獣避け薬草持ってるから大丈夫だけれど、中心部に残ってる足跡は、色んな凶暴な魔獣のいた痕跡ばかりあるんだぜ。自力で行けと言われたら死ぬな!間違いなく。
「この薬草なら、伝がある」
2人の驚いた顔が見える。そうだろうなぁ〜、妹が訳の分からない病気になって、仲のいい家族なら助けたいと思うしな。俺は元父親と兄には助けないぞ!助けたいと思うのは死んだ母親とミアだけ、今はミケとシャムもその内に入るが。
「お願い!薬草のある場所教えてください!」
「お願い!妹をたすけて!」
簡単には、教えてあげられない。俺に被害が来るかもしれないからだ。先ずは、どう言う経緯で病気になったのか聞こう。事情も分からずには薬草を渡せない。トラブルに巻き込まれて俺が失敗したとしても、納得できる理由ならいいんだ。
「僕たちの所為なんだ。商人をしていた両親が預かった荷物に、病気の基となる禁制の植物が収められた箱だったのに、勝手に開けて中身を間違って妹の頭に落としたんだ」
禁制!おい!大丈夫か?そんな物を預からせる人間は悪人と、殆ど決まってるぞ。
「大きな商会だったのか?」
「うん!いっぱい人いたよ」
弟の言葉に、顔を悲しそうな兄。何かあったな。
「お父さん、商会売って薬のお金にしたんだ。ダイカイ商会」
商会の名前を聞いた副団長が驚いてる。知ってるのか?
「ダイカイ!隣国で1、2を争う商会だったはずだぞ!」
副団長の声を聞いて泣き出した2人に、なんとも言えない空気が漂ってる。両親は有名な商人だったのか!資金を提供したら俺の欲しい物を簡単に揃えられるか。薬草と引き換えに、色々やってもらえそうだな。しかし、そんな商会を売るとは薬草だけじゃないな、脅されて誰かに嵌められたか?要相談だな。
「副団長、後でその話を教えてくれ。もう、町が見えた、直ぐ着くぞ中に入ってろ」
2人の兄弟に言って、俺も副団長の横で着陸に備えてしっかり掴まった。ん?人が沢山見える、こちらを指差してるぞ!空飛ぶ馬車が珍しいからか?副団長が見えれば安心するだろう。今度は始めより上手に降りたのでほっとしたよ。こちらに向かって大勢の人が押しかけて来る。
俺の所為じゃあないよ?大人な副団長に、後は任せるよ。本当に一緒に来てもらって良かったよ。俺、子供だもんなぁ〜。難しい事はワカラナイ……ソウ、ワカラナイヨ?