第35話
次回更新は9月15日朝です。
俺は、絨毯魔法をかける為に馬車の側に行った。護衛と荷物の乗った方だ。中の物は予備のバッグに押し込んだ。スケボーの時より複雑だが、元々初めに覚えた物なのでさっとできた。それでも10分はかかった。
「ジーク、できたのか?」
できたが、この馬車を飛んで制御するには今の俺じゃ魔力が足りない。もしもの時の為に温存して副団長に任せよう。魔力が多いから大丈夫だろう。
「他の人間が悪用できない様に、副団長専用にしといた」
驚いてるな副団長!絨毯の値段が高いからな〜。空飛ぶ馬車ならどれ位だろう?気の毒だが、今は急ぐから流されてくれよ。
「はあああーっ⁉︎おい!絨毯は王族しか今持ってないんだ!色々不味い!」
絨毯じゃあない!馬車だ!困った顔の副団長には悪いが諦めろ。
「大丈夫だ。絨毯じゃない、空飛ぶ馬車だ」
俺が、人の悪い顔で言うと速攻でツッコミが入った!
「余計悪いだろ!」
あはは、悪いが俺は子供だ、わかりません〜て誤魔化した。
「そんな事より、子供達を助けに行くぞ!副団長!御車台の椅子にある魔法陣に、片手分くらいの魔力を流してくれ」
真面目に言うと、こんな事してる場合じゃないと思ったらしい。
「あ、ああ、分かった。」
副団長が魔力を流している。コントロールが上手いな。流石近衛騎士副団長だ。
「うん、成功だ。目の前に簡単魔法を操作のできる方陣が浮かんでるだろ?前、後ろ、右、左、斜め、上昇、降下と書いてある場所を触れば動く。副団長動かしてくれ!」
操作部分は俺のオリジナルだ。この世界にはないから前世のパクリだな。マップ付きにしてゲームみたいにしてある。絨毯魔法だと、直接書いてある。あ!スピードの上げ方言うの忘れてた。
「マップを見ながら方向を決め、スピードを上げる時は真ん中に魔力を指1本分流せばいい。」
副団長、顔が玩具をもらった子供の様になってるぞ。まあ、止めないが。
「ジーク、飛ばせるぞ!行け!」
浮いて進む馬車に、副団長が興奮してる。
「おお!凄い!わわぁー!揺れるー!運転は丁寧にお願いしまーす!」
くそっ!初めて乗るんだぞ!手加減しろよ!前世俺の男友達が、普段は大人しい癖に車に乗ると性格が変わって暴走車になった。無駄に金持ちの息子だった為、あの有名なスポーツカーで、深夜高速道路を最高速度で走った時には死ぬかと思った。普段、のほほんとしてる俺でもちびった。封印して置きたい黒歴史の一つだぜ。
「ジーク、馬より速いな。もう魔の森だ!」
キョロキョロ辺りを見渡すと、キラーバードが集まって騒いでいる!
「副団長!あそこに近づいてくれ!」
「だが、キラーバードの群れだぞ!別の方法で行こう!」
俺も奥の手薬草が無ければそう言うだろうな。長いナイフの様な嘴で小突かれたら、簡単に死ぬな。
「大丈夫だ!この馬車には襲って来ない!」
魔獣避け乾燥薬草を、ぶら下げたからな、この乾燥物なら半径1キロ圏内には来ない。馬車が近づけば勝手に逃げて行く。
「本当だろうな?信用してるから行かせてもらう」
男前だな、副団長!子供たち怪我が酷く無ければいいが。馬車が近づけば、キラーバードが嫌がる様に逃げていった。良し!木の間に着地だ。
「あそこから下に降りよう」
「任せろ!ジーク」
操るの上手くなった。流石だな副団長、静かに降りられた。
「ここら辺にいそうだが?副団長、見えるか?」
「私の視界には見当たらないが」
「ん?そこか!!」
人の魔力だ!それ程多くないが感じる。どこだ?
「おい!ジーク!離れるな危ない!」
走って見に行くと、穴がある。太さはそんなにないがかなり深そうだ。
「ジーク、どうした?危ないと言うのに1人でいるのは危険だろう。ん?何かあるのか?」
副団長が俺の側まで来た。
「多分、この穴の中にいる。おーい!助けに来たぞー!いるのかー!」
小さい声が返ってきた。よく聞くと泣き声もしてる。
「……ぐすっ……たす…けて…」
2人と聞いていたが1人の声しかしないぞ。俺は急いで馬車にあるロープを取って戻った。
「副団長!持っててくれ、俺が下に降りる。この位の深さなら何となりそうだ」
「分かった、頼むぞ」
ロープを伝って降りて行くと1人は意識がない様だ。
「大丈夫か?今助けてやる」
「うっ、お兄ちゃんが……ぐすっ……僕をかばって目が覚めないよー」
近くで見たが、気を失っているようだが、それ程傷は酷くない。口を開けて、ポーションを喉に詰まらせない様に流してみるか。無事な子を横に避けて飲ませた。治癒術も多少は使えるが場所が悪い、それに俺は魔力が少ないのでやると、空っぽになりそうだ。
「うっ、……ごほっ!こほっ!……コイル?」
気が付いた。これなら大丈夫だな。俺のポーションが効いたな。市販品より効力のある方を飲ませたからだ。弟の方も、やっと安心したみたいだ。
「お兄ちゃん!ぐすっ…良かった」
兄の方だけ魔力があるな。弟の方はない。もしかして貴族の血を引いているのか?そうなら碌でもない理由が原因か?詮索はしない方がいいだろう。魔力があった事は黙っておこう。
「おーいジーク大丈夫かー!」
副団長が心配して声をかけてきた。俺より体が大きいな、副団長が力があっても3人は大変そうだ。あ!そうだ!この方法を試してみよう。
「大丈夫だー!2人も無事だー!」
「お兄ちゃんを助けてくれてありがとう!」
弟の方が泣き止んでお礼を言ってくれた。兄の方も助けられてと知って頭を下げてくる。
「俺はジーク、上に上がる為に魔法陣を使うから後ろを向いてくれ。見るなよ!」
俺はロープに、絨毯魔法の浮遊する魔法陣と速度を歩く速さにする魔法陣のふたつを書いていた。細いので書きにくいが何とかなりそうだ。良し!成功。後は副団長に任せるか。責任の丸投げとも言うが。
「2人ともロープにしっかり掴まってくれ」
「「はい!」」
返事がいい。だいぶ気持ちが落ち着いたな。ロープを握ったので副団長に声をかけた。
「副団長ー!ロープに指半分の魔力を流してくれー!」
「ジーク!流したぞー!」
「うわあああーっ!凄いよ!お兄ちゃん!」
「そ、そ、そうだな」
ロープが浮いて、上にゆっくり登っていく。喜んではしゃいでる弟に、顔を引きつる兄、何だあれ!と上から声がする。大丈夫だよ、副団長!これも専用に所有印を刻むから。
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魔獣キラーバード
鋭いナイフの様な嘴を持っている。割と集団行動が好き。1匹が逸れると全員で探し回る、臭いを感知厄介な魔獣。20羽くらいが常に行動。