第34話
旅行を決めたらテンションが少し上がってきました。行くまでの準備でわくわくしますよね。次回更新は9月8日です。
可愛くなった王女様に、べったりされてる騎士(真っ赤になって固まったままカチンコチン)はそのままにして、やはり未婚王女様を騎士と一緒はまずいと、副団長が頭を抱えて唸ってる。
あはは、おかんは大変だな!
「副団長、俺は別に寝るから、ミアとミケとシャムを王女様と寝せたらいい」
独り寝が寂しいなら、友達と一緒だと嫌とは言わないだろう。鼻血が止まらない(妄想は止めておけ)騎士も可哀想だしな。
「本当か!ジーク!助かるありがとう」
喜ばれたよ。手を握ってブンブン振られて身体が揺れる! やめろ!体格差がある事忘れてるだろう!
「「えー⁉︎お兄ちゃんと一緒じゃダメなの?」」
ミケ達の抗議の声だ。そんなに俺と寝たかったのか?
「王都の家では一緒だから、旅の間は王女様といてくれ」
添い寝ぐらいはしてやれるぞ。ふっ、まだ虚しいがな。
「「わかった〜お兄ちゃん♫〜」」
残念そうなミケ達がいる。ほっとした顔の副団長を横目に、旅の途中からずっと話を聞いてくれた騎士(逃げたら困る抱き枕)にべったりの王女様に、よっぽど城では、ぼっちだったんだなぁ〜、と思った。
生暖かい視線を送りながら、恩を売っておくのも悪くない。王族に絡まれたら厄介だし。
「副団長には、世話になるからサービスだ」
見た目子供の俺に、潔く頭を下げている副団長は偉いと思うぞ。話が終わり、部屋に行こうと席を立った俺は、勢い良く入って来た人達に驚いた。
「誰か助けてください!子供が魔の森に入ったんです!」
傷だらけの大人2人が、理由をはなした。助けてと土下座をしているのだ。病気の妹を助ける為に、魔の森に入って兄2人が行方不明になった。急いで追いかけたが、魔獣が居て怪我をしたため強い冒険者に頼もうとここに来た。と話が聞こえた。
「……魔の森、B級冒険者以外は入れないぞ!」
「力になってやりたいが……残念だか、ここにはB級冒険者は泊まってない」
近くで話を聞いた冒険者達が、気の毒そうに言っている。誰でも一緒だが、力がなければ命を落とす。生き残る為の判断は間違えられない。助けに行きたくても行けないのだ。
「龍の尻尾亭には行ったのか?あそこなら、いるかも知れないぞ」
もう一人の冒険者が言ったが、絶望的な顔を見る限り、先に行って断られたか居なかったかだな。
「もう行ったが、……報酬が高過ぎて用意できなかった」
危険な森に行くのだ。生半可な装備では無理なのだろう。森は広い、ましてや魔の森だ。生きてるかも分からない子供を見つけるのは、至難の技だ。B級冒険者が断るのも無理はない。どうする?助ける手立てはあるが、また厄介事が押し寄せてくるぞ。
「うっ、うっ…あなた、私達だけでも行きましょう」
「……そうだな、できる事は何でもしよう」
お人好しだな俺も、見て見ぬ振りはできなかった。助ける為には、副団長の協力が必要だな。真面目な副団長だ、断らないだろう。
「副団長、手伝ってもらえるか?」
話を聞いていた時は苦しい顔をしていた副団長だが、俺の話具合から助ける事が出来ると感じたのか、俺の顔をじっと見てくる。
「私に出来る事なら言ってくれ、出来る限りのことはしよう」
王家の姫様の護衛だ。簡単に側を離れることはできない。ここは、王都ではない場所だ普通と違う、もし魔の森に行くなら全員でも怪しい。助けに行けない事を心苦しく思ってたな。
「他の人に聞かれると不味い。向こうで話そう」
「そうだな。その前に、彼らに助けに行くことだけは知らせておこう」
副団長と俺は、彼らに側に行った。傷だらけの彼らにはついでに、ポーションをやろう。
「子供達は私達が捜しに行こう。ここで、待ってるといい」
副団長が言うと、助かる可能性ができた事に喜んでいる。
「本当ですか?ありがとうございます!」
「あ、ありがとうございます!」
頭を床に付けて、礼を言う2人の気持ちは分かるが、俺的には引くな。前世に土下座文化はあったが、自分達に向けてされるのを、見るのは気持ちいい物じゃない。
「ほい、おじさん達ポーションでも飲んで傷を治すといい」
ポーションを投げた。副団長と共に外に出る。ミケ達が俺の後を追いかけて来た。
「「お兄ちゃん!行くの?」」
ミケとシャムが同時に聞いた。心配そうにしている。ミアは、俺が色々できる事は知っているので静かにしているが、一言言われそうだな。
「行くよ。すぐ帰って来るから心配しなくていいよ」
「ジーク様、お気を付けください。無事なお帰りにをお待ちしてます」
ミア、大丈夫だ。俺には奥の手があるからな。ニヤッとしたらミアの苦笑いが見えた。さあ、急がないと!無事だといいが。
「師匠!ジブリール、捜しに行くの」
遅れて王女様も俺たちを追いかけて来た。鼻血騎士も一緒だ。
「行って来る。ミケ達と一緒に寝てていいぞ」
嬉しそうにうなずいてる。おい!鼻血騎士!残念そうな顔するな!
「シルキー様、行って来ます。後は頼む」
王女様に断りを入れた後、鼻血騎士に王女様の事を頼んでいた。しかし、こいつ大丈夫か?少し不安は残るが居ないよりマシだろう。
「はい!副団長お任せください」
皆と離れ馬車の方に歩いてく。誰も見てないな?周りを確かめていた。
「それで、ジークどうする?」
「王都から乗って来た馬車の1台に、絨毯魔法を掛ける」
驚いた副団長がいる。まあ、そうだろうなぁ〜。絨毯魔法を使えるのは、普通熟練者で魔法も得意な隠匿された、一代世襲制の専用魔法師しか作れないものだから。それも才能がある世代と、ない世代の差が大きいのだ。王家の物にする事で、後から何とでも言い訳できるしな。
「は⁉︎ジーク!冗談だろう?」
この非常時に、冗談なんか言う訳ないだろ!信じられないのは分かるが信用してくれ。
「森の中を、闇雲に捜しても見つけるのは無理だ。暗い中移動しているなら、魔獣達が騒いでるはずだ。騒がしい場所を上から見つけた方が速い」
空飛ぶ絨毯じゃない、自称空飛ぶ馬車だ!色々言われても、王家所有と言えば誰も文句は言えないだろう。
「本当にできるのか?ジーク」
胡散臭そうにこっちを見るなよ!もう助けに行くと言ってしまったからな。絨毯魔法を使える事は秘密にしてもらうぞ。