第28話
次回更新は7月14日です。
王女様が大人しくなって、静かな馬車に乗ってお尻も快適な俺です。あの後直ぐ出発しました。しゅんとなって無言な王女様に助かっている。お尻も絨毯魔法で微妙に浮いる。平行感を重視して、どんなに揺れても座っている俺には伝わらないようになっている。
「ジーク、今度は大丈夫なようだな」
心遣いありがとう。副団長くらいだよ気遣ってくれるのは。
「副団長、ありがとう気分は悪くない」
横で王女様が膨れてる。前世の魚で言えばフグだな。言葉の棘もあるからそっくりだな。
「……ジーク私とは喋ってくれない」
王族と仲良くしたいとは基本思ってない。楽しく普通に暮らせればいい。早く耳付き姉妹に会いたい。
「王女様、言っておくが俺は平民だ。偉い貴族と、ましてや王女様が喜ぶ話など知らない。無礼をしたと殺されるのも勘弁して欲しい」
「私は、そんな事は思ってない!ただ普通に話したいだけよ!」
興奮気味の王女様、話をしたいと言われても何も話題はないぞ。
「子供の俺にか?もっと釣り合う相手と話をした方がいいと思うが違うか?」
平民の俺じゃなくて貴族の釣り合った人がいるだろう。
「だって!普通に喋れたのジークだけ、お母様が亡くなって誰も側に居てくれない!寿命が長い私を他の人は受け入れてくれないの、遠巻きに見てるのよ!知識が有っても長生きな私は子供だもん!」
側妃のエルフの子供か、王も周りも育て方間違えたな。教育係がダメなのか?
「ああ、エルフのハーフだったな。子供か、だが!子守は断る!」
子守は勘弁してくれ。俺が欲しいのは癒しだ。
「うっ、わあーんっ!酷い!ちょっとは仲良くしてくれても良いと思う〜」
お!泣き出した。素直になればどうにかなりそうだな。
「仲良くして欲しいなら誠意を示せ、可愛い子になれ!」
性格が良くなれば、俺じゃなくても構ってくれる人間が出て来るだろう。
「可愛い子?どんなの?」
涙で目をうるうるさせながら聞いてくる。素直になったな、まだ間に合う!矯正だ。可愛いは正義だ。やればできる。
「そうだな、子供だと言うなら偉そうな態度は取るな。王女様が偉いんじゃない。先祖に、今の陛下が頑張ってこの国を良くしてる。それを邪魔するのは悪い子だけだぞ」
「今までの私悪い子?良い子になる」
頷いて俺の話を聞いている。子供には根気良く言い聞かせるしかない。子供の俺が言うのも変だが、この際しょうがない。
「うっ!だけど、家庭教師がこういう風に振る舞えと言った。王女様は偉いのだと教わったぞ」
クズだ!クズの家庭教師だ。道理で王女様の評判が悪いはずだ。一体誰の思惑だろう?
「身分は偉いだろう。家庭教師は自分の価値観を言ったんだ。王女様はこの国の人に生かされている。だから、恩返しを自分のできる範囲でする事だ。この国を良くする為の努力を忘れないのが良い子だぞ」
可愛い性格と良い子になって、俺以外に構ってもらえよ。
「良い子になれば!私は好きになってもらえる?遊んでくれる人が見つかる?」
キラキラした目で聞かれた。普通に歳が取れない王女様は孤立したのか?誰かの意図か?狸がいそうだな。
「見つかるぞ。1番簡単な方法は笑顔だ。心の中にいっぱい、好きって言う気持ちを込めて微笑めばいい。素材は悪くないから、大抵は騙されてくれるぞ」
子供っぽい満面の笑みは邪気がなかった。庇護される側になれば何人か釣れるだろう。
「ジーク!変な事は教えないでください」
副団長、俺の意図に気付いたか?今のままでは王女様はずっと孤独になるぞ。
「副団長、違う。今まで誰も教えないから我儘王女様として君臨して来た。ちゃんと教育していたらこうはなってないと思うぞ」
子供の俺に言わせるなよ。家庭教師を変えろ!王女様の為にはならないぞ。
「しかし、シルキー様に騙すのは」
少しは感じているか。副団長より年上の王女様だとは思うが、言動と態度は子供だ。子守をさせる為に王が名前呼びさせたんじゃないか?王女様に聞こえるのはまずいので小声で話した。
「無防備な子は危ないぞ。死んだり後悔しない為の知恵は授けた方がいい!それに、王女様を名前呼びする様に陛下が副団長に言ったんだろう」
その顔を見ると図星か。年は関係なくお子様の妹王女の面倒を押し付けたんだな。
「どうして分かった?陛下に頼まれたのは本当だ」
多分、暴走騎士団長を抑える事のできる貴重な存在に目を付けられ、王女に合わせてみたら案外大丈夫だった。ついでにもしかしたら、婿候補かもな。
「ひと言俺の推察言っていいか?王女様の婿に、副団長選ばれてると思うぞ」
俺が言うと一瞬副団長が固まった。
「は?はあああーっ!じ、冗談はやめてくれ!」
情けない顔の副団長がいる。気付いてなかったか?だが、思い当たる事がありそうだな。
「声が大きいと王女様に聞こえるぞ」
王女様は、笑顔の練習中だ。馬車の入口にいる騎士相手にニコニコしてる。戸惑っている騎士達は見てて面白い。頭を抱えて唸っている副団長がいる。「まさか!そんな馬鹿な…」呟いてるよ。今まで気が付かなかったのが不思議なくらいだよ。不憫だなぁ副団長。




