最終面接
大学四年。夏の就職活動中。日が経つにつれ、焦るばかりで心が休まる日を知らず。
「――これが、私の強みです。この私の長所と経験で御社に貢献していきたいと思っています」
いつの間にか、自己PR文も暗記してしまい、つまることなく言える。しかし、それが良いことでないのは身に染みて理解している。
現在三十連敗中。もはや、企業について四の五の言ってることはできない。手当たり次第に猛アタック。
そして、ついに最終面接なのだ。何をやっている企業なのかいまいち理解してないが、これを落とすわけにはいかない。
しかし、ちょっとおかしなことがある。この面接の前、右の二の腕に血圧計のような大きさの、腕時計の大きくした感じの装置を取り付けられたのだ。今もとりつけられたまま。ただ、時計の部分に当たるところが面接中何度も赤く点滅するのみ。今も点滅している。気が散って仕方がない。
「はい。ありがとうございます。大学生の内からこれほどのことをしているとは、とても素晴らしいですね。内容も実に興味深い。どうして、未だに就職活動を行っているのか不思議なほどですよ」
「いえ。いくつか受けておりますが、全て落ちています。これは、御社を縁があったということだと思っています。どの企業にも、どこの企業が第一希望かと問われ御社を第一希望としてあげていたせいかもしれませんが」
「そうですか。それはありがたいことですね」
何度か最終面接にはたどり着く。しかし、どこかしらで失敗して、終わったあとの受かるだろうという手ごたえを感じたことはない。もちろん結果もその通り。今回はなかなか順調だ。これならうまくいけるのではないか。
だがここを失敗するともう絶体絶命。そんな心境に応えるように赤く点滅する。
「さて、先ほどから気になっているでしょうが、その腕に取り付けてもらっている装置はわが社が開発した装置です。まだ試作品ですが、わが社のことを熟知しており、この分野の知識がちゃんと携わっていれば、この装置が何なのかわかると思うのですが」
この企業が開発した装置だったのか。なんともよくわからない。だが、これはちゃんと答えなくてはならない。
「はい。もちろん知っています。とても画期的な装置ですよね。ええと……その……」
依然として赤く点滅するのみ。一体何の装置だというのだ。だが、答えは出てこない。面接官の顔は次第に不機嫌になっていく。
「もう結構です。以上で面接は終了です。ありがとうございました。何か質問はありますか?」
「あ、ありがとうございました」
この感触はよく理解している。三十回も味わったものだ。そして、とうとう三十一連敗となっていしまった。悔やむ気持ちもあるが、それよりこの装置のことが気になって仕方がない。
「すみません。私が落とされたことは当然のことですからもう悔いてはいません。ただ、一つだけ聞かせていただけますでしょうか。これは一体どのような装置なのですか」
今もまた点滅し始める。一体なんだというのだ。
「これですか。ただとりつけるとただ光るだけの装置ですよ。気づいてくれるとよかったのですが、結局嘘を貫き通したようで」
「そ、そんな。私を騙したというわけですか。私が言うのもおかしいですが、なんてひどい」
そう、落胆していると面接官から勝ち誇ったようにまた一言。
「先ほどから、ただ赤にしか点滅しないので、そう思ってしまうのも無理はないでしょう。実はこのとりつけた装置は、ウソ発見器でしてね。嘘をつくと赤に光るのです」
「ああ、なるほど。それは素晴らしい…………そして本当のことを言うと青く光るのですね……」
初めて装置が青く光るのを見た。