第七話:香織
会いたい!ってメールで送ったら会えるのかな。
今何してる?ってメールで送ったらちゃんと返ってくるのだろうか。
そんなことを思いながら携帯の画面を眺めてる。会っているときはただ心臓が高鳴って幸せな気持ちなのに、あえない時間はただ苦しくてせつない。
「彼氏と別れそうなの」
香織からの電話に出ると、香織は開口一番そういった。私はどんな言葉をかければいいのか解らなくて、そうんだんだ。だなんて他人事のようにつぶやいていしまった。
「なんでかなぁ」
香織にわからないことが私にわかる筈もなく、私はただ恋愛って難しいね。だなんてありきたりの言葉を返した。
「あいつのこと、好きなんだ。好きなのに、あいつは俺とは合わないって、いったいどんな女になればあいつに合う女になれたのかな」
そう言って香織の嗚咽が聞こえた。香織が泣く声を聞いて私はただうろたえた。香織は私から見てもいい女だと思う。だから、香織が振ることはあっても振られるなんて考えもしていなかった。ただ、香織の彼氏が友達に茶化されているときに、付き合っていく自信がないとつぶやいたことを思い出す。
「私、頑張っているのに」
なんだか私も泣けてきた。熱い涙がこぼれる。頑張りすぎて、それが彼氏にとって重かったのかも知れないと思った。勉強だってダイエットだって頑張って成功してきた香織がその頑張りで恋愛が失敗するなんて、私には理不尽に思えて、たいして頑張っているわけでもなく真人のことを好きだとか言っている自分が情けなかった。
「香織はがんばってるよ」
そう言いながら、香織が痩せていっていたのを思い出す。それはダイエットではなくて、やつれていっていただけだったのだ。
「香織、最近うまくいっていなかったんだね」
「うん」
言ってくれればよかったのに。そういいかけて止めた。
気がつかなかったのは私だったんだ。真人のことばかりで、香織の話をちゃんと聞くこともせず。香織は私に気を使って言わなかったのだと今になって気がつく。
私は香織に何をしてやれるだろうか。何もできずにただ私は一緒になって泣いた。