第十一話:翌日
ねえ、しっている?
わたしがあなたを好きな事。
ねえ、気がついて
わたしがあなたを好きな事。
だけどやっぱり気がつかないで…
朝起きると、頭はストーブに当たりすぎたときのようにぼうっとした。
このまま学校を休もうかとも思ったが、やはり昨日の歌のことが気になって、放課後本人に訊くことにした。本当に訊けるのか甚だ疑問は残ったけど、今日訊かなければこの風邪が治らないような気がしたし、むしろこの風邪は真人が原因で引き起こされたと思うと、今日訊かないわけには行かなないのだ。
授業はいつも以上に退屈だった。授業だけでなく、休み時間の香織や他の友達と過ごす時間さえも億劫に感じるのはやはり自分は風邪を引いているせいなのだと思うと、悪いこと全てが風邪のせい出来る気がして、誰にもばれないように一人で笑ってしまった。
どうやって訊き出せば良いのだろうか。
「私が放課後うまくよんであげるよ」
私を悩ませる疑問に香織はいとも簡単にそう言って笑顔を作った。
「どうやって?」
うつ伏せてなかなか働かない頭を伸ばした腕に転がしながら香織のほうを見る。見ながらやっぱり香織はモテる顔をしているなあ、なんて考えてしまうのも、やっぱり風邪のせいなのだろう。
「まあ、まかしといてよ」
何だか楽しそうに言う香りにこのまま任せていいのか不安が残ったけれど、これ以上考えてもいい案の浮かばない私は観念したように香織にまかせせることにした。
放課後になっても気だるい気分は抜けず、なんだか風邪が悪化したようだった。寒気が時折身体の芯から頭のてっぺんに突き抜けては小さく身震いをした。教室から見える校庭では、サッカー部が練習を始め、掛け声が聞こえる。香織は放課後教室でみんなが帰るまで待っているように言ったまま先に教室を出て行ってしまった。
教室から一人ひとり出て行くと、その度に挨拶をするのが面倒で寝たふりをした。
私はここで何をしているのだろうか。
ぼんやりしていると、そんな気持ちが浮かんだ。
遠くから様々な部活動の音が聞こえると、少し取り残された気がするのに、そんな教室が好きなのだと確信した。その心地よい教室に包まれるように私はうつ伏せたまま目を瞑った。真人のことが少しずつ頭の中で小さくなり、とても穏やかな気持ちになった。
真人が誰のことが好きでもやっぱり私は真人が好きで、それに協力してくれる香織がいて、友達がいて、なんなことが何だか幸せで…
私は少しずつ暗闇に吸い込まれていくように眠りに落ちた。