表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すき  作者: ホタル
11/12

第十一話:翌日

 ねえ、しっている?

 わたしがあなたを好きな事。

 ねえ、気がついて

 わたしがあなたを好きな事。

 だけどやっぱり気がつかないで…


 朝起きると、頭はストーブに当たりすぎたときのようにぼうっとした。

 このまま学校を休もうかとも思ったが、やはり昨日の歌のことが気になって、放課後本人に訊くことにした。本当に訊けるのか甚だ疑問は残ったけど、今日訊かなければこの風邪が治らないような気がしたし、むしろこの風邪は真人が原因で引き起こされたと思うと、今日訊かないわけには行かなないのだ。

 授業はいつも以上に退屈だった。授業だけでなく、休み時間の香織や他の友達と過ごす時間さえも億劫に感じるのはやはり自分は風邪を引いているせいなのだと思うと、悪いこと全てが風邪のせい出来る気がして、誰にもばれないように一人で笑ってしまった。

 どうやって訊き出せば良いのだろうか。

「私が放課後うまくよんであげるよ」

 私を悩ませる疑問に香織はいとも簡単にそう言って笑顔を作った。

「どうやって?」

 うつ伏せてなかなか働かない頭を伸ばした腕に転がしながら香織のほうを見る。見ながらやっぱり香織はモテる顔をしているなあ、なんて考えてしまうのも、やっぱり風邪のせいなのだろう。

「まあ、まかしといてよ」

 何だか楽しそうに言う香りにこのまま任せていいのか不安が残ったけれど、これ以上考えてもいい案の浮かばない私は観念したように香織にまかせせることにした。


 放課後になっても気だるい気分は抜けず、なんだか風邪が悪化したようだった。寒気が時折身体の芯から頭のてっぺんに突き抜けては小さく身震いをした。教室から見える校庭では、サッカー部が練習を始め、掛け声が聞こえる。香織は放課後教室でみんなが帰るまで待っているように言ったまま先に教室を出て行ってしまった。

 教室から一人ひとり出て行くと、その度に挨拶をするのが面倒で寝たふりをした。

 私はここで何をしているのだろうか。

 ぼんやりしていると、そんな気持ちが浮かんだ。

 遠くから様々な部活動の音が聞こえると、少し取り残された気がするのに、そんな教室が好きなのだと確信した。その心地よい教室に包まれるように私はうつ伏せたまま目を瞑った。真人のことが少しずつ頭の中で小さくなり、とても穏やかな気持ちになった。

 真人が誰のことが好きでもやっぱり私は真人が好きで、それに協力してくれる香織がいて、友達がいて、なんなことが何だか幸せで…

 私は少しずつ暗闇に吸い込まれていくように眠りに落ちた。

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ