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風邪を引いた。
酒場の入り口に本日休業の板をかける。
サジャが学校に行ったあと、いつも通り寝てたら治るさ、とベッドに入った。
額に気持ちの良い冷たさを感じて意識が浮上する。
目を開くと泣きそうな顔でこちらをのぞきこむサジャと目が合った。
「チャニさん!」
私の名前を呼ぶサジャの顔に強い安堵が浮かぶのを見て、そういえば姉は病気で死んでいたことを思い出した。
ずっと握られていたらしい手に、少年のすがる気持ちを感じる。
声を出そうとしたがかすれて音にならなかった。
逆の手を伸ばして、怖がらせてごめん、と安心させるように、サジャを撫でた。
翌朝、ずっと看病してくれたサジャに風邪が伝染ってしまい、私はこれまた久々に人の看病をした。