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得意の酒場料理を作るとサジャは嬉しそうで悲しそうな複雑な顔をした。
「お母さんがよく作ってくれたんです」
お母さんとは私の姉の方だろう。
姉妹とも幼い頃から酒場を手伝っていたから、教わった料理も同じである。
「お母さん好きだった?」
思わず口をついて出た。
「はい。お父さんより、ずっと優しかったから」
悲しげな笑みで言われて、私まで悲しい気持ちになりそうになって慌てた。
「食べよう。きっと姉さんのと同じ味だと思うから」
言って二人でご飯を食べた。
サジャがおいしいです、と言ってくれて、客から言われ慣れているはずなのになぜかずっと嬉しく感じた。
一人じゃないご飯は久しぶりだな、となんとなく思った。