17‐2
空は昨日の嵐が嘘のように晴れ渡っていた。
だから馬車も出たんだけどね。
町と村を繋ぐのはこの馬車だけなのですれ違う心配はない、と思いたい。
まあ今日は引き続き学校の日なのでサジャはそのまま登校するだろう。
夕方までサジャが無事かびくびくするのが耐えられなかった私は今、馬車に揺られている。
中は嵐で足止めされていたらしい人でいっぱいだった。
隣の観光客っぽい男がやたら話しかけてくるので鬱陶しい。
着いたらまず学校へ行ってみよう。
そこでサジャを待って、でも来なかったら顔見知りの町の酒場へ行こう。
あそこは一日中やってるし、人が集まるので情報も溢れているのだ。
馬車が止まって町についたとわかる。
急いで学校へ行こうとしたが、同乗していた男に引き止められた。
馬車を降りるときに貸してくれた手を取ったのがまずかったようだ。
町を一緒にまわりませんか、としつこいのでやんわり断ると手の甲にキスされた。
ぎょっとする。この国は恋人同士ですら人前でこんな馴れ馴れしい行為はしない。
偶然目撃した人達も唖然としている。
どうやら異国から来たらしい男はそれを知らないのだろうか。
いや知っててやってるのか?
それなりに整った顔の男は、呆れて物も言えない私を照れてると判断したのか、もう一度手に口を近づけてきた。
よし殴ろう。
自由な手を振りかぶったとき、後ろから腰に誰かが抱きついてきた。
「お母さん!」