表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/31

番外編 だれも知らない2


 レイの目は赤くなることがある。

 それを知っているのはリナだけ。


 今、レイはリナの四肢を自分の手で押さえつけながら、リナを見下ろしていた。


「離して」


 リナは嫌そうに顔を背ける。

 同い年の女の子たちがどれほど騒ごうと、レイはレイだった。

 今も昔も変わらない。


 レイは時々本当に怒ると目が赤くなる。

 それも片目だけ。

 

 かつてはリナが男の子たちに襲われているときに一度。

 

 赤く光って。

 その後、男の子たちはリナに手出しをしなくなった。

 むしろ、不気味なほど従順になって、リナは不思議に感じたものだった。

 彼らはレイの赤い目を見ていないと言う。

 だが、リナはレイの目が赤かったことを知っていた。


 そして、今も。


 赤くなっている。


「エリンのところに行くつもりなんでしょう」


 エリンというのは、最近仲良くなった旅芸人の子供だ。

 リナの三つ上の男の子。


 リナは先日、そのエリンに手を握られて、額にくちづけられた。すきだよ、という言葉と共に。


 13になるリナだが、その言葉の意味がわかっていた。

 その先も。


 時々、動物たちがしているアレだ。


 エリンはリナを見るとそうなるのだという。

 リナにはわからなかったが、男の人の生理というのはそういうものだと、リュウに聞いていたから不思議には思わなかった。

 今、不思議なのは、この状況。


「レイ。離してくれないと、エリンのところに行けない」


「行かせない」


 四肢を掴んだ手はびくともしなかった。

 リナは本気を出していた。

 どんな男の人でもリナを留めることはできないと思っていた。


 確かに大人の男の人だけど、体躯はエドよりは遥かに細い。

 そんなレイの手を振り払うことができないのが不思議だった。


「そんなに行きたいんだ」


 レイの人形のようにきれいな顔が、かすかに歪んで。

 

「いけない子だね。リナは」


 リナのすぐ近くまで、ゆっくりと下りてきた。

 首筋に下りて、かすかに覗いた耳朶を噛む。


「っ。痛い」


 チリと痛みが耳から走って、本当に噛まれたのだと知った。

 耳元から唇を放したレイの唇は、赤く染まっていた。

 まるで、大人の女の人のように妖艶な顔をしたレイ。


「やめて。レイ」


 その唇がリナのものに重なり。血の味がした。

 自分のものだとわかっているのに、くらくらとめまいがするほど…濃厚な血の匂いに酔う。



「やめない。君は、ぼくのものだ」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ