茨の王子
ガルドス国の処刑方法は、定まったものはない。
ただ、何を意図して定められたものなのかわからないが。
火刑に決まったらしい。
そう拷問されながら聞かされて、エドアルドは虚ろな目で拷問を加える男を見返した。
顔だけは傷つけないでやる。おきれいな王子様のまま逝けるように。
そう言って、男は下品な笑いを浮かべた。
処刑の日はあっさりとやってきた。
最期の日はわずかばかりの食事が出た。
喉を水で潤し、硬い岩のようなパンをかじる。
嘆きの森で食べた鳥肉が懐かしかった。
こんなことになるのなら、リュウに嫌がられてもいいから、抱いておけばよかった、とぼんやりと思う。
愛の言葉さえも告げていない…。
簡単な水浴びをさせられた後、麻色の上下の衣装に着替させられて、再び両手首を縛られて引っ立てられる。
歩みは遅く。
目の端に人々が立っているのが見えた。
目の前には、高いところに座ったフレッド。ジャイーン。そして、王妃―アイーシャ。セシルの姿はない。見ない方がいい。
兄が弟を殺すところなど、誰もみて気持ちいいものではないだろうから。
積み上げられた薪の上に、よろよろと這い蹲るように登らされて、立ちあがった。
中央に立った棒に丁寧に茨の縄で縛り付けられて。
刺の食い込んだ手足から、真紅の血が筋を作って落ちていく。
うめき声さえ最後まであげないエドアルドに、男はチッと小さく舌打ちし。去っていく。
見下ろすエドアルドの目線の先で。松明を掲げた男が手を高々と掲げた。
遠目にジャイーンの口元が三日月に歪んでいるのが、わずかに腹立たしかった。
そして、男が松明を下げて、炎がエドアルドの足元の薪に燃え移ってゆるゆると炎の舌を伸ばしていく。
チリチリと。
木ぎれが燃えて。
真っ赤にそまって。
爛れて。
他の木ぎれを同じように染めていく。
炎に包まれた木はまるで芸術品のように黄金に輝く。
自分に迫る炎の輪をエドアルドはただ黙って見ていた。
ジリジリと。
熱が足元から頭上へと駆け登っていく。
この熱気が。
違う意味であったらどれほどよかったことか。
リュウ。
炎が一瞬大きく生き物のように燃え上がり、一気にエドアルドの身体を飲み込んだ。