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第9話:断罪の鐘と、栄光の光

「……そんな、バカな……。私の工作を、あの女が……『利用』しただと……?」


 ライオス建築ギルドの豪華なオフィス。

 通信魔導具から流れる、隣区画の「天空庭園・定礎式」の盛況ぶりに、ライオスはガタガタと震えていた。

 追い打ちをかけるように、彼の執務室の扉が激しく蹴り破られる。


「ライオス! 貴公を、建材横領および崩落未遂の容疑で拘束する!」


 踏み込んできたのは、地下都市連合の憲兵隊だった。

 ライオスがアリアの現場に送り込んだ「模造石」の流通経路が、カシムの徹底的な調査によって暴かれたのだ。


「放せ! 私は大陸一……いや、この都市最高の芸術家だぞ! 私がいなくて誰がこの街を……!」

「黙れ。貴公の『芸術』のせいで、どれほどの予算が消え、どれほどの住民が危険にさらされたか。……それらすべて、アリア殿が修正してくださったのだ」


 憲兵隊長は冷酷に言い放ち、ライオスの腕に魔力を封じる手錠をかけた。

 プライドをズタズタにされたライオスが連行される中、街の広場では高らかに「断罪の鐘」が鳴り響いた。

 一方、隣の区画。

 完成した『天空庭園』の中央。そこには、かつて路地裏で泣いていた私からは想像もつかないような、きらびやかなドレスを纏った私の姿があった。


「本日をもって、アリア殿を我が区画……いいえ、地下都市連合の『第一級国家建築士』に任命する!」


 カシム様の力強い宣言とともに、万雷の拍手が降り注ぐ。

 私の背後では、巨大な鏡面パネルが魔光石の光を複雑に反射させ、地下三千メートルとは思えないほど、暖かく黄金色の「陽だまり」を作っていた。


 通路に溢れていた人々は、今や私が設計した『積層型居住ポッド』で家族との団欒を楽しみ、この広場へと集まってきている。

「アリア様!」「救世主様!」という声が、空に届かんばかりに響く。


 カシム様が私の隣に立ち、耳元でそっと囁いた。


「素晴らしい眺めだ、アリア。君が望んだ『一人でも多くの人を救う場所』が、今、ここに完成した」

「……はい。でも、これはまだ始まりです。カシム様」


 私は、授与された国家建築士の証書を胸に抱き、カシム様を見上げた。


「次は、全区画の通路を繋ぎ直して、この地下都市全体に光を届けたいんです。……いいですか?」

「ああ、もちろんだ。君の設計図の行く先なら、どこへでも共に行こう」


 カシム様の手が、私の腰を優しく引き寄せる。

 それは有力者と建築士という関係を超えた、深い信頼と愛がこもった温度だった。

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