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第15話:設計図の裏側

 地下最下層の監獄から脱走したライオス。そして、中央の地位を剥奪され、復讐に燃えるゼノ。

 かつては反目し合っていた二人の建築士が、今は暗い廃墟の隅で、アリアの最新図面を凝視していた。


「……クク、傑作だな。アリアの設計はあまりにも精密すぎる。各区画の荷重を絶妙なバランスで繋ぎ合わせ、都市全体を一つの生命体のように機能させている」


 ゼノが、狂気を孕んだ笑みを浮かべて図面の一点を指差した。


「だが、バランスが完璧だということは、一点の崩壊が全体へ波及するということだ。ライオス、君の出番だ。君がかつて『芸術』と称して使っていた、あの高純度の魔導爆薬……」

「分かっている。アリアの計算式は私の右腕として培ったもの。どこを突けば、この美しいハニカム構造がドミノ倒しのように崩れるか……私だけが知っている」


 ライオスの目は、かつての建築士としての矜持を失い、どす黒い嫉妬に染まっていた。

 彼らの狙いは、アリアが心血を注いで完成させた「全区画連結・空間融通ネットワーク」の要となる、中央集積支柱ハブ・ピラーの破壊だった。

 一方、そんな陰謀も知らず、アリアは現場の最終調整に追われていた。


「東部区画の二千世帯、入居完了しました! 二酸化炭素濃度、正常。地圧分散、計算通りです!」


 部下たちの明るい報告に、アリアも自然と笑みがこぼれる。

 だが、手元の計測魔導具が、微かな、本当に微かな「震え」を感知した。


「……? 地圧の波形が、ほんの少しだけ乱れている?」


 それは、普通なら誤差として片付けられるレベルの振動だった。

 けれど、ミリ単位の空間を操るアリアの感覚が、警鐘を鳴らす。


「カシム様、中央支柱の監視映像を出してください。何かがおかしいんです」

「アリア殿? 支柱は、中央政府の憲兵が厳重に警備しているはずだが……」

「いいえ、見てください。この荷重バランスの変化……まるで、意図的に特定の一点に負荷を集中させているような……」


 アリアが図面を操作し、シミュレーションを実行する。

 もし、中央支柱の基部が破壊されたら。

 ネットワークで繋がったすべての区画が、アリアの設計した「効率的な荷重移動」のせいで、次々と隣の区画を道連れにして崩落していく。


「人を救うための私の設計が……都市を皆殺しにする罠になる……!?」


 アリアの顔から血の気が引いた。

 その瞬間、遠くから地鳴りのような爆音が響き渡る。


「カシム様! 爆発は中央支柱の第3基部です! ライオス……ライオスがそこにいます!」


 通信機から流れる悲鳴。

 アリアは震える足で、現場へと駆け出した。

 自分の手で築き上げた「希望の街」を、自分の設計思想によって破壊させないために。

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