第11話:中央からの挑戦状
ライオスの没落とアリアの「天空庭園」の成功は、地下都市の最深部に位置する最高統治機関『中央セクター』をも動かした。
ある日、カシムとアリアのもとに、中央からの特使が訪れる。
現れたのは、磨き上げられた純白の礼装に身を包んだ、自信満々の若者だった。
「初めまして、カシム閣下。そして……君が噂の『リストラ建築士』かな?」
男は、アリアを品定めするように眺め、鼻で笑った。
「私は中央政府直属の首席建築士、ゼノ。君がやった『隙間埋め』の仕事、見させてもらったよ。……まあ、下層民を黙らせるための『姑息な手品』としては合格点だね」
カシムの眉がピクリと動く。
「手品だと? アリア殿は、物理的に不可能と言われた人口問題を解決したんだ。無礼は慎んでもらおう」
「閣下、落ち着いて。私がここに来たのは、中央が進める『地下都市大統合計画』の総責任者としてだ」
ゼノが広げたのは、魔法投影された巨大な立体図面。
それは、全区画の岩盤を無理やり削り取り、中央に巨大な塔を建てるという、あまりにも強引で非人道的な計画だった。
「この計画が実行されれば、周辺の区画……特に君たちが今いるこのエリアは、荷重の歪みで真っ先に押し潰されることになる。……まあ、中央の栄光のための『尊い犠牲』だ」
「なっ……! そんな勝手なことが許されるはずがない!」
カシムが机を叩く。だが、ゼノは涼しい顔で続けた。
「なら、対案を出してみるかい? 二週間後の『御前会議』で、私と君の設計、どちらが地下世界の未来に相応しいか……勝負しようじゃないか。負けたら、この区画の指揮権はすべて中央が没収する」
ゼノが去った後、執務室には重苦しい沈黙が流れた。
中央の持つ膨大な予算と最新技術。それに対し、アリアにあるのは「現場の声」と「緻密な計算」だけ。
「アリア殿、無理にとは言わない。この勝負はあまりにも分が悪い」
カシムが心配そうに声をかけるが、アリアの瞳には、かつてないほど強い光が宿っていた。
「……いいえ、カシム様。あの人の設計には、『そこに住む人の体温』がありません。私は負けません。誰一人犠牲にしない、本当の統合計画を……私が引き直します」
アリアが再びペンを握る。
それは、地下世界の勢力図を塗り替える、新たな戦いの始まりだった。




