『ぷちエンジェル』葡萄の章
ネオンの光が乱反射する夜の街。
悪の異教徒のアジト、鮮烈なオレンジ髪の魔法少女が飛び込んできた。
ミ「とびちる情熱!ぷちミカン!」
ミカンの声が部屋中に響く。彼女の瞳は正義感で燃えるように輝き、小さな体から火花のような気迫が迸る。
遅れて、紫の髪を揺らしもう1人の仮面少女が隣に立ち、ミカンに倣って名乗りを挙げる。
ブ「…コホー!…コホー!!」
大きなドクロの奥からはかすれた呼吸音。彼女の指先はそっと仮面の縁を持ち上げ、重そうに首を振って肩を落としている。
ミカンが両手を大きく広げポーズを決める。魔法少女のお約束、キメポーズだ。ドクロの少女もぎこちなく動きを追う。
ミ「ふたりはジューシー、ぷちエンジェル!!」
ブ「…コホー!」
よく通るミカンの声だけがアジトにこだまする。骸骨仮面は無言のまま、息苦しそうに胸を押さえ、仮面の隙間に指を差し込んで通気口の確保に躍起になっている。
ミカンの瞳には敵の姿しか映っていない。彼女は後ろの仲間に力強く声をかける。
ミ「行くよ、ぷちブドウ!」
ブドウと呼ばれたドクロは頷きかけるが、すぐにミカンの肩をポンポンと叩き、仮面を指差して首を振る。
ブ「コホー!コホー!」
武器を構える異教徒達へ向かい、ミカンは勇猛果敢に突進していく。
ブドウは後を追おうと一歩踏み出すが、膝からガクリと崩れ落ちてしまった。
ブ「…コ…ホー……」
世界の平和を守る為、酸欠と戦う少女の物語が始まる。